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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] テロリズムとの闘い及び成長の促進に関するAPEC首脳声明

[場所] ロス・カボス、メキシコ
[年月日] 2002年10月26日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 2001年9月11日に発生したテロ攻撃の影の下にあった昨年の上海での会議において、我々は最も強い言葉で国際テロを非難し、テロとの闘いにおける我々の協力を強化することを決意した。以来、多くが達成された。しかし未だなすべき多くのことがあり、今日、我々は、上海でのテロリズム対策に関する声明で発表した幅広い原則を完全に実施するために必要な具体的な追加措置を可及的速やかに実施することへの強いコミットメントを宣言した。

 2002年10月12日に発生したインドネシア、バリにおける最近のテロリストによる爆弾事件は、テロリズムの残忍性といかなる場所においてもこの脅威と対抗し闘うグローバルな緊急性を我々に再認識させた。我々は、インドネシア及びオーストラリアの市民が犠牲者のほとんどである、罪のない人々に対するこの大量虐殺を非難し、犠牲者及びその家族に深甚な同情と哀悼の意を表明する。

 テロリズムは自由で開かれ繁栄した経済というAPECの目標への直接的挑戦であり、APECのメンバーが共有する根本的価値への侮辱である。我々は、テロリズムが我々の共有する目標にもたらす脅威を終焉させる決意において団結し、我々は、昨年上海で表明したテロ対策の目標とプログラムに向けての進展を加速することにコミットした。

上海以来の進展

 一年前、我々は、テロリズムとの闘いにおいて包括的な方法で全てのレベルにおいて協力を強化すること、及び国連の下での我々の義務を誠実に実行することを約束した。上海以来、国連の義務を果たし、テロリストの隠れ家を解体し、テロリストへの資金を断つために、個別、二国間、地域、及び地球規模で取り組むことにおいて我々は重要な前進を果たした。

 我々は関連する国連安全保障理事会決議で求められた措置を実行し、決議1373を実施するための法的及び規制メカニズムを実施している。

 各APEC関係メンバーは、それぞれ、テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約を署名及び批准し、または早急に批准すべく手続き過程にある。

 我々は、法執行当局と諜報当局の情報の共有を相当に強化し、サブリージョナル及びリージョナルのより改善されたテロ対策メカニズムを設立した。

 我々は、地域内の主要な港湾及び空港の保安を強化した。

 我々は共同して、APECにおいて、地域内の空港においてより効果的な荷物検査を導入し、入国管理当局間の調整を改善し、新たなサイバー安全基準を実施し、エネルギー市場における中断を防止するエネルギー安全保障イニシアティブを前進させ、海賊対策協力を強化するための作業を行っている。

上海テロリズム声明の完全実施のための共同コミットメント

 これらの措置はグローバルなテロに対する戦いにおいて重要な貢献を行ってきた。しかし、更なる措置が必要とされている。我々がテロリズムとの闘いにおける前進を加速させるとともに、APECエコノミーは、また、グローバルな経済成長を奨励しグローバル市場の恩恵を全ての人々にもたらす課題に取り組むために前進しなければならない。

 したがって、我々は国境を防衛し、テロの攻撃から主要な経済インフラの安全を確保するための新たな方途を見出し、我々の経済を一層成長させなければならない。

 そのために、我々APECの首脳は、上海で昨年我々が行った幅広いコミットメントを完全に実施するための以下の追加的共同行動に合意する。我々は、貿易、金融、及び情報システムの分野での環太平洋の主要なインフラが保護されることを確保することに努める。

APEC地域における安全な貿易の拡大(“STAR”)

 APECは世界のGDPの60%及び世界の貿易の半分を占める。世界最大級の巨大港湾及び最も混雑する空港の大部分がAPECエコノミー内にある。我々は、以下を目的とした措置を通じて、モノ及び人の流れを確保するために共に取り組む。

●以下により、貨物を保護する。 

−正当な貿易の促進を考慮に入れつつ、コンテナの輸送中の保全を確保し、危険性の高いコンテナの特定及び検査を行うコンテナ安全体制の迅速な実施、サプライ・チェーンの出来るだけ早い段階で、税関、港湾及び海運当局者に対する、コンテナの内容についての事前の電子情報の提供を要求するための国際機関における作業 

−可能な場合には2005年までの、世界税関機構により開発される、危険性の高い貨物を特定し貿易を促進する電子的な税関申告のための共通標準の実施 

−民間セクター及び法執行職員によって作成された供給流通安全性に関する高度な基準を民間セクターが採択することの促進

●以下により、国際航海を行う船舶を保護する。 

−船舶及び港湾の安全計画の2004年7月までの促進及び特定の船舶を自動判別するシステムの2004年12月までの導入 

−APEC関連フォーラ及び国際海事局海賊報告センター、国際海事機関等の国際機関間での海賊との戦いに関する協力の強化

●以下により、国際航空を保護する。 

−可能な限り早期で遅くとも2005年までの、高度な効果を持つ手荷物検査の手続及び機器の導入を通じた航空機の旅客及び乗務員の安全の改善。可能な限り2003年4月までの飛行機のデッキドアの強化に関する標準の実施の加速。国際民間航空機関(ICAO)の義務的な航空安全についての監査への支援 

−ICAO及び国際航空輸送協会により作成されたガイドラインの採択の促進を通じた航空貨物の安全の強化

●以下により、輸送乗客を保護する。 

−事前の旅客情報の収集及び伝達のための国連「行政・商業および運輸に関する電子データ交換国連規則」(UN EDIFACT)に基づいた世界共通標準の可及的速やかな実施 

−ICAO及び国際標準化機構によって開発された、入国・(可能な場合)出国手続及び渡航に必要な書類に対してバイオメトリックを適用するための標準の採択 

−国境関連業務に従事する全政府職員の可能な限りの清廉性の確保

テロ資金の断絶

 我々は、9月に財務大臣が採択した包括的アプローチに沿って、テロリストによる世界の金融システムへのアクセスを阻止し、資金経路を利用してテロリストを捜査・逮捕するために共同して取り組む。取られる措置は以下の通り。

●以下により、国連その他の国際的枠組みを十分に活用する。 

−国連テロ資金供与防止条約を2003年10月までに締結するための努力 

−国連安全保障理事会決議1373及び1390が要請する通り、テロリスト及びその支持組織の国際金融システムへのアクセスを阻止するために必要な全ての措置を迅速にかつ断固たる実施。これらの措置は以下を含む。 

・テロリストの資産の効果的な凍結

・テロリズムへの資金提供の非合法化

・マネー・ローンダリング及びテロリストへの資金供与の実行者を捜査・訴追する取組     みの強化

・国際基準に沿った金融セクターの規制と監督による、金融システムの適正性を防御するための予防的措置

・地域の利益に対する標的の目標の共同認定及び選定

−金融活動作業部会(FATF)の、テロリストへの資金供与に関する第8回特別勧告への支持及び同勧告を可及的速やかに実施することの誓約。IMF及び世界銀行に対し、FATFと協力してこれらの勧告を実施する国の取組を統一的・包括的に評価すること及び技術的援助が必要な権限ある司法機関の特定を開始することの要請。

● 以下により、代替的送金システム及び非営利団体の監視改善をはかる。 

−代替的送金システムの使用を奨励する要因の分析を含む、同システムに関するAPEC財務当局及び地域的機関の作業への支援 

−非営利団体及び善意の寄付者の資金がテロリストへの資金供与者に濫用されることの防止、テロリストによる慈善団体濫用の防止のためにFATFが最近発表したベスト・プラクティスへの支持

● 以下により、法執行と取締機能を強化する。 

−2003年10月までの各メンバー・エコノミーにおける金融情報機関(FIU)の設立または指定及び他のFIUとの情報共有を強化するための措置の実施 

−テロ資金供与防止に関するウォルフスバーグ宣言等の民間セクターのイニシアティブへの支援、金融機関と政府との協力への支持

サイバーセキュリティの促進

 APECエコノミーの市民は今や世界のインターネット・ユーザーの半数以上を占める。地球規模のコミュニケーション・ネットワークの安全度は最も脆弱なリンクのレベルでしかなく、我々は共同で以下の事項にコミットする。

● 国連総会決議55/63(2000年)及びサイバー犯罪に関する条約(2001年)を含む国際的法的枠組みの条項に合致したサイバーセキュリティ及びサイバー犯罪関連の包括的な諸法律を、2003年10月までに制定するよう努力する。

● 2003年10月までにサイバー犯罪を担当する国のユニット及び国際ハイテク支援を担当するコンタクト・ポイントを指定し、また、そうしたものがまだ存在していな場合には、そのような権限を創設する。

● 脅威と脆弱性に関する評価を交換するための機関(例えば、コンピューター緊急対応チーム)を2003年10月までに設立する。

 我々はまた、情報セキュリティの分野における、及びコンピューター犯罪と闘うにあたっての法執行当局とビジネス界とのより緊密な協力を要請する。

実施及びキャパシティ・ビルディング

 より安全かつ効率的なAPEC地域―及びグローバルな経済体制―を構築することは記念碑的な取組みであり、我々の地球の平和と繁栄にとって極めて重要な取組みでもある。このビジョンを成功裡に達成するためには、協力強化、新たな手続き及び先進技術の更なる活用が必要である。

 我々は、APECの事務当局に対し、上記の共同行動の実施にあたり引き続き協力し、実施の進捗を監視することを要請する。全てのAPECエコノミーがこの取組みに完全かつ十分に参加できるような能力を高めることもまた重要である。したがって首脳は、全てのエコノミーが安全と繁栄の恩恵を享受できるよう域内で遍く能力を構築するために共同で取り組むことをコミットする。

 APEC域内において既に実施に移されている相当数のテロリズム対策関連訓練及びその他の援助を増強するために、我々は、

● これらのキャパシティ・ビルディングの取組みにさらに貢献するためのAPECメンバーによる新たなコミットメントを歓迎し、

● APECエコノミーにおいてテロリズム対策の能力を構築するための国際金融機関の現在の取組みを賞賛し、これらの国際金融機関がAPECメンバーの能力を更に改善するためにAPECメンバーとともに作業するよう要請し、

● 民間セクターに対し、安全な貿易措置を実施するためにAPECエコノミーと協力して作業することを奨励し、

● APECにおけるテロリズム対策のキャパシティ・ビルディングは需要に則したものである必要があることを強調する。

*ロシアは、2004年7月までに船舶及び港湾の安全計画を促進すること、及び2004年12月までに特定の船に対する自動船舶識別装置を装備することを支持する。但し、ロシアは、ロシアの技術的問題によりタイム・フレームを2006年12月を越えない時期まで延長する必要が生じる可能性があることを述べる。