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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] APEC構造改革行動計画

[場所] バンコク
[年月日] 2003年10月18日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

平成15年10月18日

構造改革の重要性

 APEC地域における構造改革の促進と強化は、アジア太平洋地域のみならず域外の持続可能な経済成長と発展を達成するための不可欠な前提条件である。1997年のアジア金融危機は、APECメンバーが経済的影響や市場の不安定な市場に起因して発生する課題に対して成功裏に対処することを可能にする、現在行われている制度面、規制面及び構造面の改革の重要性を実証した。

 「国境における」開かれた市場がもたらす機会を最大限にするためには、「国境内での」相互支援的な構造改革が必要である。構造改革の目的は、高水準の雇用を伴う持久力のあるインフレなき成長の達成を助長することにある。市場機能の改善を通じて、改革は資源の十分かつ効率的な利用を阻害する要因を除去し、政府が生産性や生活水準の向上などの広範な経済的、社会的目標を達成するための助けとなる。

 構造改革は貿易・投資の自由化を支援し、APECメンバーが貿易・投資の自由化及び円滑化の利益を現実のものとすることを助け、ボゴール目標の達成に資する。透明で公平な規制枠組みを構築する改革は、世界的に経済的不確実性が広がる環境の中で、企業及び投資家の信頼を向上させる効果もある。

 金融危機の教訓に学び、APECメンバーは、急激な経済的変化の結果生じている新たな課題に対応する適切な改革を実施することで、世界経済の持続的成長の原動力となることができる。適切な構造調整を時宜を得て実施することにより、APECメンバーは繁栄への新たな機会をつかむことができる。従って、APECは構造改革により得られる恩恵の促進を再活性化すると共に、経験と最善の慣行モデルを共有するキャパシティ・ビルディング活動に補完された、ハイレベルの政策対話を活用すべきである。

構造改革に関するAPECのこれまでの作業

 APECメンバーは、「国境内での」改革へのコミットメント、支持及び問題意識向上活動、キャパシティ・ビルディングのプロジェクト及び協力強化を通じて構造改革の問題に取り組むことによって、持続的な経済成長の見通しを向上させ、開かれた市場による利益を最大にするための責任を共有している。

 APECメンバーが構造改革を実施することの重要性を謳った最近のAPECの各種宣言・声明や、国際ビジネス界にとっての構造改革の重要性を強調したAPECビジネス諮問委員会(ABAC)及びPECCによる唱道が、構造改革の恩恵に関する問題意識を高める上で重要な役割を果たし、この分野におけるAPECの作業拡大に弾みを与えた。APECで実施された構造改革に関する最近の具体的イニシアティブの例には以下が含まれる。

・2003年5月にタイのコンケンで開催された「構造改革セミナー」では、マネージメント・モデルの最善の慣行が概説され、「改革は利益をもたらす」(Reform Pays Off)と題するパンフレットで紹介されているように、構造改革を実施することで得られる重要な恩恵が強調された。

・企業統治の強化と破産制度改善のための財務大臣プロセスにおけるイニシアティブ。

・経済委員会における企業再編プロジェクトの開始。

・「規制改革に関するAPEC−OECD協力イニシアティブ」の実施、「競争政策に関するAPEC研修プログラム」の実施、電力・運輸セクターに焦点を当てた「APECエコノミーにおける経済競争促進のための研修プログラム」の実施を含む、競争政策・規制緩和グループ(CPDG)における様々なイニシアティブ。

・2000年7月及び2002年7月に実施された経済法制度整備調整グループ(SELI)シンポジウム、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイ、中国で実施された商法セミナーの完了、問題意識向上のための報告書「APECにおける経済法制度の整備―貿易、投資、経済発展の支援」を含む、「経済法制度整備調整グループ(SELI)」が実施した会社法、競争政策・制度及びキャパシティ・ビルディングに関するイニシアティブ。

・社会的安全網(ソーシャル・セーフティー・ネット)強化のためのキャパシティ・ビルディング・プロジェクトの促進。

・基準・適合性小委員会及びサービス・グループにおける優れた規制慣行に関するセミナー。

APEC域内での将来の構造改革活動の提案

 構造改革は広範かつ継続的なプロセスである。改革プロセスの調整段階における移行コストを考えれば、慎重かつ専門的なマネージメントが重要であることは明らかである。APECは、支持及び問題意識向上活動、キャパシティ・ビルディング・プロジェクト、調整と協力とを通じて、域内の持続的経済改革の促進に引き続き主導的役割を果たしていく。重要な目標は、各メンバーが改革への支持層を育成し、自らの政策を通じて開放を進めていく努力を支援することである。

・支持及び問題意識向上活動:APECメンバーとABACは、APEC域内の経済成長と持続可能な経済発展にとっての構造改革の重要性について、メンバー内での問題意識の向上と主要な利害関係者間の支持構築のために協力することが奨励される。APECのフォーラムは、構造改革の成果を広報とアウトリーチ活動を通じて促進するために、APEC事務局と共に構造改革活動の支持を向上していくことが奨励される。

・キャパシティ・ビルディング・プロジェクト:APECのフォーラムと各メンバーは、キャパシティ・ビルディング・プロジェクトを策定・実施し、技術支援を提供するとともに、全てのプロジェクトの成果を広範に普及させ、それに基づいて行動することが奨励される。

・協力と調整:APECのフォーラムは、情報の共有、各プロジェクトの成果の公表、各イニシアティブの進展について相互に通知し合うことによって、APECの構造改革の課題を推進するために協力することが奨励される。ハイレベルの経済政策担当者および規制担当者は、ハイレベルの政策対話に貢献することが奨励される。より緊密な相互関係を円滑に築くための定期的対話を通して、構造改革の課題に関するAPECと地域・国際機関との間の協力と調整が改善されるべきである。

具体的イニシアティブ

 APECの関連フォーラムは、今後実施する構造改革イニシアティブを詳細に打ち出した。提案された構造改革関連のAPEC活動の具体例は以下の通りである。

・財務大臣プロセスは、より自由で安定した資本フロー(財務情報の公開と預金保険)を支援する自主的行動計画を策定し、また、金融セクターにおける質の高い透明性に関する取り決めの重要性に関する理解促進を目的とする政策対話を2回開催する。

・貿易投資委員会は、貿易及び投資に対する構造的障害の見直しを行う。

・経済委員会は、APECエコノミック・アウトルック2004年版で、各メンバーの構造改革に関する進捗と将来の計画について報告する。

・競争政策・規制緩和グループは、「規制改革に関するAPEC−OECD協力イニシアティブ(第2段階)」及び「競争政策に関するAPEC研修プログラム」を継続し、電力・運輸・通信分野における「APEC地域における経済競争促進のための研修プログラム」を完結する。

・経済法制度整備調整グループは、会社法、競争法・競争政策、キャパシティ・ビルディング及び制度構築に特に焦点を当て、経済法制度整備のためのメカニズムを特定する作業を継続し、APECにおける債権回収訴訟・調停に関するセミナー等を実施する。

・ソーシャル・セーフティー・ネット・キャパシティ・ビルディング・ネットワークは、危機発生以前のソーシャル・セーフティー・ネット計画と予防措置、ソーシャル・セーフティー・ネットの運用における透明性と説明責任の強化、労働力の再訓練に関する問題に引き続き焦点を当てる。

 APECメンバーはまた、APEC域内における構造改革促進のために、個別のイニシアティブを検討している。提案されている活動の具体例は次の通りである。

・日本が2004年に計画している構造改革に関するハイレベル・シンポジウムは、専門家と政策担当者を集め、構造改革に関する主要な問題を詳細に議論し、APECで構造改革関連の諸活動を促進、管理する方法を模索する。

・オーストラリアが計画している、一部の途上エコノミーからの参加者を対象とした、貿易自由化と構造調整の実施に焦点を絞った1〜2週間の集中的研修プログラムの実施及び構造調整マネージメントのためのマニュアル作成。