データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第12回APEC首脳会議,サンティアゴ宣言「一つの共同体、我々の未来」

[場所] サンティアゴ、チリ
[年月日] 2004年11月20−21日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 我々は、2004年のアジア太平洋経済協力(APEC)のテーマである「一つの共同体、我々の未来」の下、サンティアゴにおける第12回APEC首脳会議に参集した。我々は、貿易・投資の自由化及び円滑化に関するボゴール目標を達成し、人間の安全保障を強化し、良い統治と知識基盤型社会を促進することによって、人々の幸福のために、持続可能で衡平な成長を達成し、経済格差を縮小するとのコミットメントを再確認した。

貿易・投資の自由化を通じた開発の促進{前18文字下線有り}

 我々は、世界的な規模での貿易自由化の追求を可能とする、規律に基づく多角的貿易体制の優越性を再確認した。我々は、世界貿易機関(WTO)一般理事会が採択した「7月パッケージ合意」の結果、ドーハ開発アジェンダ(DDA)交渉にもたらされた新たなモメンタムを歓迎した。我々は、このモメンタムを継続するための指導力を発揮することを誓約した。DDAの開発の目的を達成するため、我々は、以下に合意した。

・柔軟性を尊重し、特別のかつ異なる待遇の原則を考慮しつつ、これらの交渉のために設定された高いレベルの野心を満たす全体としてバランスの取れた結果を達成すべく、切迫感を新たにして作業する。特に、農業、非農産品、サービス、ルールからなる主要分野においては、その結果により十分に拡大された市場アクセスとより少ない歪曲性がもたらされるべきである。

・第6回WTO閣僚会議において実質的成果を達成することを目指し、閣僚及び実務者に対し、この目標に向け誠実に作業を進めることを指示する。閣僚は、次の会合でDDA交渉の進捗をレビューする。

・APEC内での多くの経験を他のWTOメンバーと共有し、この分野における我々の作業を強化することにより、貿易円滑化に関する交渉に貢献する。

・より戦略的な形で技術支援やキャパシティ・ビルディングを提供する努力を倍加し、それにより、全ての加盟国の完全かつ効果的な参加を通じたWTOの発展を下支えする。

・ロシアとベトナムのWTO加盟を早期に決着させるための努力を支持する。

 我々は、全てのWTO加盟国に対し、我々のこのような努力に参加することを要請する。

 地域貿易協定/自由貿易協定(RTAs/FTAs)に関し、我々は、これらの協定は域内での自由化を加速させることにおいて建設的な役割を果たすものであり、それによりボゴール目標の達成に貢献し、WTOプロセスを推進することに合意した。我々は、この貢献を強化し、高い水準の協定を確保するために、APECメンバーがRTAs/FTAsを交渉する際に有意義な参考となる「APEC地域貿易協定/自由貿易協定のベストプラクティス」を歓迎した。我々はまた、これら協定の範囲や効果について一般の理解を促進するため、RTAs/FTAs の透明性を更に高めることに対しコミットした。

 我々は、知的財産権のより良い保護や実施が、投資、技術革新及び経済成長の促進に寄与することを認識した。我々は、「APEC知的財産権に関する包括戦略」に関するAPECの作業を歓迎し、2005年におけるさらなる進展を奨励した。

APEC内の貿易拡大のためのサンティアゴ・イニシアティブ{前28文字下線有り}

 我々は、APEC地域の自由で開かれた貿易の成果を補完するための「APEC内の貿易拡大のためのサンティアゴ・イニシアティブ」を開始することに合意した。同イニシアティブにおいて全般に亘る一つの要素は、全てのメンバーが貿易自由化と円滑化に関する自らの作業を実施し、そこから利益を得ることを可能にするためのキャパシティ・ビルディングである。

 同イニシアティブは2つの要素からなる。

・貿易・投資の自由化:閣僚は来年、我々に対し、WTOのDDA交渉における進展、ボゴール目標の中間実績調査、RTAs/FTAsに関するAPECの作業、及び他の一方的または集団的な市場開放の行動を考慮して、APEC地域においてどのように貿易・投資をさらに自由化するかについて勧告する。

・貿易円滑化:我々は、官僚的形式主義を削減し、自動化を促進し、基準を調和させ、不必要な貿易障壁を除去することにより商取引費用を削減するとの作業を継続する。我々はまた、WTOにおける貿易円滑化交渉を進展させ、安全な貿易を促進し、貿易円滑化分野における「APEC地域貿易協定/自由貿易協定のベストプラクティス」を強化するために協働する。

 ABACは、我々に対し、「環太平洋ビジネス・アジェンダ」のための合同の範囲設定研究、「アジア太平洋自由貿易圏」の実現可能性及び想定される範囲と特徴に関する研究、という2つの関連する提案を提出した。

 我々は、貿易拡大に関するABACの決意を含む産業界からのインプットを歓迎し、貿易円滑化が死活的重要性を有するとのABACの立場を共有する。我々は、我々が「サンティアゴ・イニシアティブ」を実施するに際してABACより引き続き参加を得ることに期待する。特に我々は、ABACに対し、新たな貿易円滑化問題のみならず、増加する地域内のRTAs/FTAsによって生じる産業界にとっての利益と課題、及びそれらにどう対処できるかという方法に関する考え方を提供するよう促した。

人間の安全保障の強化――経済成長の下支え{前20文字下線有り}

 我々は、過去1年の間にベスランとジャカルタにおいて悲惨にも示されたテロリズムの凶悪な行為と恐るべき結果を想起した。我々は、メンバーの繁栄と持続可能な成長を進展させる決意、及び人々の安全を確保するための補完的な使命を再確認した。

 我々は、テロの脅威及び人々だけでなく地域経済にも及ぶその壊滅的な効果に対し団結して立ち向かうというAPECの明白な決意を示すべく、関係するAPECメンバーに対し、全ての基本的で普遍的なテロリスト防止条約の批准、実施、又は批准へのコミットメントに向けた重要な措置を講じるよう奨励した。この点に関し、我々は、テロリストへの資金援助や資金洗浄と闘うための基準及び合意を実施することを含め、テロリストが国際金融制度を利用する機会を断つための措置を講じることに合意した。

 我々は、人々の安全の向上に資するAPECによる本年の追加的な作業を賞賛した。我々はまた、これらの問題に関しコンセンサスを醸成する際のAPECのプロセス及び非公式の協議が成功したことを賞賛した。我々は、閣僚がさらなるコンセンサスに至ったことを歓迎し、個別の状況に応じて、このコンセンサスをフォローアップするための個別または共同の適切な行動を取ることに合意した。我々は、APECメンバーによって今年採択された次の行動を歓迎する。

・共同して努力することを通じて国際海事機関の定めた「船舶及び港湾の安全のための新たな基準」の遵守を推進するための措置。

・アジア開発銀行の「地域貿易・金融安全確保イニシアティブ」に対する財政拠出。

・「事前旅客情報システム(API)」、「地域出入国警戒リストシステム(RMAL)」の開発、2008年までに機械読取式渡航文書を発行するための協力を含む、ビジネスの流動性のためのイニシアティブの実施の促進。

・隠れた危険又は有毒な物質の混入を防止するための輸出入食品の監視に関する協力。

・地域的な健康に対する脅威に対応するために公衆衛生制度を強化するための取組み。

 我々は、国境を超えたテロリスト集団を壊滅し、大量破壊兵器及びその運搬システムや関連する物品の拡散による危険を除去し、将来における地域の安全保障への他の直接の脅威に立ち向かう、との我々のコミットメントに関する進捗をレビューすることとする。

 我々は、「APECのHIV/AIDSと闘うためのイニシアティブ」を承認し、AIDSの更なる蔓延と闘うために、地域的及び世界的レベルで、協働するとの政治的コミットメントを誓約した。我々は、AIDSを抱えつつ生きている全ての人々の、保健医療や安全で入手可能な価格の医薬品へのアクセスを向上させるための努力を支持する。

 我々は、アジア太平洋地域における重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ、流行性インフルエンザ、結核、マラリア、及びポリオ等の感染症による特定の脅威に対処し、関連するワクチンの研究及び生産を強化するため、2005年の間にAPECが新たな努力を行うことを奨励した。我々はまた、人々の健康と幸福を向上させるため、APEC地域における生命科学の革新を促進するための戦略的計画を歓迎し支持した。

 石油価格の高騰への世界的な懸念への対応として、また、APEC域内でのエネルギー安全保障、持続可能な開発及び共通の繁栄を促進するとの我々のコミットメントを維持するため、我々は、エネルギー担当大臣に対し、「APECエネルギー安全保障イニシアティブ」を引き続き実施し促進するよう指示した。

良い統治と知識基盤型社会の促進{前15文字下線有り}

 腐敗は良い統治にとっての深刻な脅威であり、投資を阻害する。したがって、腐敗との闘いは、人々に恩恵をもたらすためのAPEC地域の発展にとって不可欠である。我々は、これに関するABACの時宜を得たコミットメントと提言を歓迎する。

 したがって、腐敗との闘いに関するバンコクでの我々の合意をさらに発展させる形で、我々は、「腐敗との闘い及び透明性確保のためのサンティアゴ・コミットメント」を承認した。我々はまた、APECの腐敗防止イニシアティブである「サンティアゴからソウルへ」を通じて行われるものを含め、同コミットメントを発展させ実施する「腐敗との闘い及び透明性確保に関するAPEC行動方針」を承認した。

 我々は、構造改革を推進するための政治的コミットメントを再確認し、市場機能の改善等による持続可能な経済成長を達成する上での構造改革の重要性を認識し、「構造改革実施のための首脳の課題(LAISR)」を採択した。

 我々は、官民のパートナーシップ及び国際金融機関との一層の相互作用を通じて、域内でキャパシティ・ビルディングのイニシアティブを深化させる必要性を強調した。

 我々は、教育分野でのAPECの努力、とりわけ、中小企業にとっての道具としての英語及びその他言語の使用及び学習プロセスを支援するため情報技術手段の活用促進のための作業を歓迎した。

 我々は、実務者に対し、現在APECにより進められている作業を強化し、地域の成長と発展を将来の世代が享受できることを確保するための「APEC持続可能な開発のための枠組み」に向け前進するよう要請した。我々は、実務者に対し、2005年のAPEC首脳会議までに進捗状況を報告するよう指示した。

 我々は、APECを強化するために今年達成された進展に関する閣僚の報告を歓迎した。

我々は、APECが、より効率的で、全ての利害関係者の要望によりよく応えるものとなるようにし続けることの必要性を再確認した。

 我々は、第16回APEC閣僚会議において閣僚間で合意された共同声明を全面的に承認した。