データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中國に於ケル通商上の權利保全に關する米國の提議(中国に於ける通商上の権利保全に関する米国の提議)

[場所] 
[年月日] 1899年12月20日
[出典] 日本外交年表竝主要文書上巻,外務省,191‐192頁.
[備考] 
[全文]

 明治三十二年十二月二十日付

以書翰致啓上候陳者過日御面談ノ節本國政府ヨリ電報到來淸國ニ於ケル合衆國商業上ノ利益ニ開シ露國獨國及英國ニ差出シタル合衆國ノ意見貴國政府へ通牒ノ爲メ先月十三日便ヲ以テ本使宛郵送シタル旨申越候趣御話致候處右御承被成度旨御申聞相成候然ルニ右書翰到達候ニ付訓令ニ基キ左ニ寫シ取リ御通牒ニ及ヒ候

 當(合衆國)政府ハ合衆國其他各國ノ商工業ニ對シ淸國ノ版圖內特ニ淸國ニ於テ歐洲數ケ國ノ要求ニ係ル所謂勢力又ハ利益範圍ノ內ニ於テハ通商航海上全然均一ノ待遇ヲ得ンコトヲ熱望シ獨逸國英國及露國ニ之ニ關スル意見ヲ提出スルハ此時ヲ以テ恰當ノ時機ト思料セリ合衆國政府カ抱持スル所ノ目的ヲ達セムカ爲メ且ツ各國間ニ起リ得ヘキ軋轢ノ諸因ヲ除去セムカ爲メ及商業上ニ缺クヘカラサル信用ヲ再興セムカ爲ニハ淸國ニ於テ利益若ハ勢力ノ範圍ヲ要求スル所ノ諸國ニ於テ公然左記ノ保證ヲ爲スコト本國政府ノ切望シテ止マサル所ナリ

第一 右諸國ハ其淸國ニ於テ保有スルコトアルヘキ所謂利益ノ範圍又ハ借用地域內ニ於テ條約港又ハ旣得ノ利益ニハ何等干涉スルコトナカルヘキコト

第二 何レノ時ヲ問ハス淸國ノ條約稅目ハ右利益範圍內ノ各港(自由港ニ非サレハ)陸揚又ハ輸送サレタル各商品ニ其ノ何レノ國ニ屬スルヲ問ハス之ヲ適用セラルヘシ且ツ之ニ依テ賦課スヘキ關稅ハ淸國政府ニ於テ徵集スヘキモノトス

第三 右諸國ハ右範圍內何レノ港ニ航行スル他國ノ船舶ニ對シテモ各自國ノ船舶ニ對シ徵收スルヨリ多額ノ港稅ヲ徵收セサルヘク又該範圍內ニ於テ布設シ管理シ又ハ運轉ヲ司トル鐵道線路上他國ノ人民若ハ臣民ニ屬スル商品ヲ輸送スルモ自國民ニ屬スル同種ノ商品ヲ同距離間輸送スルヨリ多額ノ運賃ヲ徵集セサルヘシ

獨逸國皇帝陛下ニ於カセラレテ膠州灣ヲ自由港ト布吿セラレ且ツ同所ニ稅關設置ノ事ニ關シ淸國政府ニ助力スルノ政策ヲ執ラセラレタルコト及露國皇帝陛下ニ於カセラレテモ去ル八月十一日ノ詔勅ヲ以テ大連灣ヲ以テ自由港トセラレタルコトニ徵スレハ右兩國ニ於テモ諸國カ其ノ現行條約ニ依リ各國ニ保證シタル權利及特權ハ各國民カ其通商上ニ於テ享有スルコトニ干涉等ノコトナカルヘシトノ提議ニ對シ異議ヲ挿ムノ意ナキコトヲ證明スルモノト思料ス

英國政府ヨリハ全淸國ヲ通シテ英國貿易ヲ維持スルハ其確定政策ナル旨再三ノ保證アリシニ由テ察スレハ該國ハ進テ我國ノ提議ニ贊同ヲ表スヘシト信ス上記ノ宣言ハ米國駐劄帝國代表者ヨリ屢々當政府ニ傳達セラレタル保證ト符節ヲ合ハスル儀ナレハ之ニ依テ日本國商業上ノ利益ヲ增進スルハ當政府ノ確信スル所ナリ

右ノ趣旨日本國皇帝陛下ノ政府へ御通牒相成リ速ニ其ノ考量ヲ求メラレ當政府ニ贊同シ他ノ關係諸國ヲシテ承諾セシムルコトニ助力アラムコト當政府ノ切ニ希望スル所ナル旨御申入相成度此段及訓令候

右ニ關シ貴國政府ヨリ御承諾ノ回答ニ接シ度希望致候本使ハ茲ニ重テ閣下ニ向ヒ敬意ヲ表シ候

(右回答)

 靑木子ヨリ「バツク」氏宛書翰

以書翰致啓上候陳者本官ハ本月二十日附貴翰第百七十六號ヲ領承スルノ光榮ヲ有シ候右貴翰ニ依リ閣下ハ合衆國政府ノ訓令ニ從ヒ支那ニ於ケル合衆國ノ利益ニ關シ露西亞國、獨逸國及英吉利國ニ宛テラレタル書翰ニ陳述セラレタル合衆國ノ提議ヲ帝國政府ニ御通吿相成候本官ハ閣下ニ對シ帝國政府ハ他ノ一切ノ關係國カ同一ノ原則ヲ受諾スル限リ合衆國ノ正當ニシテ公平ナル原則ニ對シ贊同スルニ躊躇セサルモノナル旨ヲ斷言スルハ本官ノ幸福ナル義務トスル所ニ有之候

本官ハ茲ニ重ネテ閣下ニ向ヒ敬意ヲ表シ候 敬具

  明治三十二年十二月二十六日(千八百九十九年十二月二十六日)

 外務省ニ於テ 外務大臣子爵 靑木周藏