データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第26回主要国首脳会議におけるG7蔵相から首脳への報告,国際金融システムの悪用・濫用に対する行動

[場所] 沖縄
[年月日] 2000年7月21日
[出典] http://www.g8kyushu-okinawa.go.jp/j/documents/action.html
[備考] 外務省仮訳
[全文]

A.課題と我々の取組み

1.金融犯罪は,資金の高度な移動性と新たな支払手段の急速な発展に特徴づけられる今日の開放されたグローバルな金融の世界において,高まりつつある懸念となっている。国際金融システムの便益を確保するため,我々G7の蔵相は,金融市場の信頼性と健全性が金融犯罪によって侵されないようにしなければない。また,国際金融システムの濫用に実効的に対処するため,貧弱な規制上の基準,過度の銀行秘密,有害な税の競争を放置してはならない。

2.政府は,資金洗浄及び有害な税の競争に実効的に対処し,また国際的な基準の実施や良い統治を実現させるため,協力体制と国際的なフレームワークを強化しなければならない。この理由から,我々は,我々自身の努力をより協調させるとともに,さまざまな国際的なフォーラムにおいて行われている努力と迅速なフォローアップ作業を支援する必要がある。また,我々は,金融犯罪と濫用に対処するため,法執行,税,規制当局間の国際的な協力を促進させる必要がある。

B.資金洗浄

3.資金洗浄に効果的に対処するため,世界の全ての金融センターが適切な国際基準を遵守し,資金洗浄との闘いに実効的に協力することが重要である。我々は,2000年2月に合意したクライテリアに基づいて2000年6月に29カ国・地域の規則や慣行のレビュー及び15の非協力国・地域(NTTCs)の特定を公表した金融活動作業部会(FATF)の最初の作業を歓迎する。FATFの決定及びその勧告に従って,我々は他のFATF参加国とともに,報告書の内容について我々の国内金融機関に通知した。我々の当局は自国の金融機関に対して,NCCTsで業務を行うこと,または,このNCCTsに本拠を有し,または口座を保有する個人や団体によるクロスボーダー取引に伴うリスクへの認識や監視の強化を求める要請を発出した。我々はFATFに対し,NCCTsの特定作業を継続すること,そして,特定された当該国・地域及びそれ以外の国・地域の変化を斟酌するために,当該リストを定期的に見直すことを要請する。我々は,これら全ての国・地域と深く関与し続ける旨のFATFの決定を支持する。我々はまた,NCCTsが資金洗浄対策の速やかな改善を図り,指摘された欠点を改善することを強く求める。我々は,適当な場合には,必要な改革に向けて様々な措置を講ずることをコミットする国・地域に対して助言や技術支援を行う用意がある。我々は,適切な改革を行わないNCCTsに対し,必要かつ適当であれば,共同してこれらの国・地域との金融取引に条件を課し,または制限する可能性を含む対抗措置を講ずる用意がある。我々は,この状況を2001年のサミットに向けてレビューする。

4.我々は日本及びカナダにおいて特定金融情報室(FIU)が設置されたことを歓迎するとともに,資金洗浄対策当局間の情報交換を促進するためにG7で活動しているFIU間の情報交換取極の締結を支持する。

5.バーミンガム・サミット及びケルン・サミットから進展して,我々は,資金洗浄と闘うための広範な措置を協議する機会を得たことを評価する。我々は,専門家の参加の下に既に存在するメカニズムにおける我々の努力を強化しつづけることに合意する。我々は,2001年のサミットへの準備として,以下の問題についてレビューを行い,進展を報告する。我々は,FATFに対してこれらの問題に対処するために,「40の勧告」を見直すことの余地があるか検討を要請する。

 a.ゲートキーパー:我々は,1999年10月の国際組織犯罪対策に関するモスクワ閣僚級会合のフォローアップとして,法律家や会計士などの職業専門家(国際金融システムへの「ゲートキーパー」)の資金洗浄への関与を検討するための専門家会合が召集されたことに留意する。我々は,この問題に関する作業の継続を支援する。

 b.国際支払システム:我々は,金融界に対し,クロスボーダーの支払い指図を行うにあたって,送金者の特定方法を見出すことを強く求める。この点について,我々は,G10中央銀行の支払決済システム委員会や他の適切な当局が,実効性及び国際支払システムの進展,さらにはこのような支払い情報に関するプライバシー保護を勘案しつつ,技術的問題を探り,この問題に対してとり得る具体的措置を検討することが有益であると考える。

 c.会社形態:金融システムへのアクセスのためだけに会社が設立される場合がある。もし会社の所有者に不明確な点があるならば,銀行や金融機関は口座の受益者が特定できず,「顧客の本人確認をする」義務を履行していないことになる。市場へのアクセスと所有者の不明確さとが重なることは,資金洗浄と市場の悪用を助長する。我々は,違法な会社形態の利用を防ぐためにどのような措置を導入することが最も適当かを検討することに合意する。我々は,特に,法執行当局と行政当局が受益者を特定できるようにする必要性を強調する。この観点から,我々はこの問題に関しOECDが今後に予定しているレビューを歓迎する。

 d.盗まれた資産:国際的な資金洗浄は,しばしば公務員による公的資産を密かに不正流用する手段として使われている。このような犯罪に対する政府の脆弱性は,新興民主国家や発展途上国又は体制移行国において顕著である。我々は,この問題に関する国際的な協力を促進する第一歩として,各国において,このような洗浄された資産の特定,追跡,差押えを行うための既存の法的手段や担当部局のあり方を検討することが有益であることに合意する。

C.タックスヘイブンとその他の有害な税制

6.我々は,経済行動を歪め,課税ベースを侵食する有害な税の競争を阻止する必要性を再確認する。我々は,2000年6月にOECDの閣僚理事会に提出されたタックスヘイブンの基準に合致する国・地域のリスト及び加盟国における潜在的に有害な税制のリストの2つのリストを含む「有害な税制の特定及び除去の作業の進展についての報告書」を歓迎する。我々は,OECDが有害な税制の抑止に引き続き取り組むことを奨励する。この観点で,我々は,OECD加盟国が優遇税制におけるあらゆる有害な要素を除去する努力を継続することを支持する。我々は,有害な税制を取り除くことについて既にコミットした国・地域を歓迎するとともに,全ての国・地域に対して同様のコミットをすることを強く求める。我々は,OECDによる非加盟国との対話を深めることへの支持をコミットする。

7.我々は,税目的のために銀行情報にアクセスを向上させることに関するOECDの報告書への支持を再確認するとともに,この報告書を出発点として,税目的のために銀行情報へのアクセス及び情報の交換が可能となるよう速やかに作業を進めることを全ての国に要請する。

8.脱税と資金洗浄は別々の犯罪であるが,その実行にあたって用いられる手法には類似点が多い。我々は,OECD租税委員会(CFA)と金融活動作業部会(FATF)の情報交換に関する共同の努力の進展を歓迎する。我々は,CFAとFATFの定期的な対話の促進を期待し,それが脱税者と資金洗浄者双方によって用いられる犯罪類型などの共同研究などに注意を払うことを期待する。

D.オフショア金融センター

9.犯罪を阻止し,脱税と租税回避を防ぐための努力は,国際基準を遵守していない,いわゆる「オフショア金融センター」(OFCs)によって阻害されている。FATF及びOECDにおいて行われているイニシアティブに加えて,金融安定化フォーラム(FSF)のオフショア金融センター作業グループのレポートは,OFCsに対し,国際協力と情報提供,本質的な監督権限と慣行,そして顧客の本人確認と記録の保存に関する国際基準を当面の優先課題として,金融監督及び協力に関する国際基準の遵守を促進するための勧告を行った。この3つのイニシアティブは,不適切な資金洗浄対策基準,有害な税制,脆弱な金融規制という3つの主要分野に取り組むものである。我々は,これらのイニシアティブを支持するとともに,問題のあるOFCsに対して,これらのフォーラムが相互に協力し,適切な場合には,活動の歩調を合わせることを強く求める。

10.また,我々は,OFCsが上述のフォーラムによる全ての勧告を実施し,また,次の8つの分野における制度の改善を図ることにより,これらのイニシアティブに積極的に対応することを求める。

 a.国際的な協力:我々は,資金洗浄対策,税及び金融規制に責任を有する当局が,それぞれの分野で金融犯罪,脱税及び規則違反と闘うために密接に協力することを期待する。また,これらの当局は,金融機関のクロスボーダーの活動に対する実効力のある日常的な監督を行うことが認められるべきである。

b.情報交換:税及び資金洗浄対策に責任を有する当局と規制当局は他の国・地域のカウンターパートと情報交換ができるようにしなければならない。

c.顧客の特定:全ての国・地域は,匿名口座を禁止し,金融機関に対して顧客の厳密な特定を義務付けるべきである。会社及び信託形態は,不適切な形で所有者を隠蔽し,脱税,資金洗浄及び規則違反を助長するメカニズムを提供するべきではない。

d.過度の秘密の廃止:全ての国・地域は,国際基準の実施を妨げ,犯罪,税,規制の捜査を妨害し,また他の国・地域との実効的な協力を制約する銀行秘密を禁止すべきである。

e.金融機関の効果的な調査:犯罪者や規則違反の前例のある者によって金融機関の所有と経営が侵入され,管理され,影響されることのないことを期するための実効的な手続きが整備されるべきである。

f.金融監督と資金洗浄対策への手段・人員の拡充:国際的な金融サービスから経済的な便益を享受している国・地域は,このサービスの悪用を実効的に阻止するために十分な手段・人員を投入すべきである。特に,十分な手段・人員が金融規制,資金洗浄対策,及び外国の当局との協力に投入されるべきである。

g.法制度の改善:全ての国・地域は,全ての重大な犯罪から生ずる収益の洗浄行為を犯罪とし,金融規制当局者に実効的な権限と制裁権限を与え,また,法制度の相違が資金洗浄,脱税及び規則違反の調査を妨害することのないようにするべきである。

h.有害な税制の除去:我々は,全ての当局が有害な税制を特定し,除去するために国際的に協力することを期待する。

11.国際的な基準の実施に対して,政治的に強く支持し,遵守し,その実施に進展がある場合,そして,可能でかつ必要な場合に,我々は技術支援を行い,直接または適切な国際機関を通じて支援する用意がある。

12.国・地域が所定の基準を満たしていないことが明らかであり,または国際基準遵守の水準向上をコミットしない場合,我々は,当該国・地域に対して,必要な改善を働きかけるとともに,そうした不備の影響から国際的な金融システムを守る措置をとる。具体的には以下の措置が考えられる。

 a.ディスクロージャーを含む市場インセンティブは,国・地域の国際的な規制基準実施に対する評価がリスク・アセスメントに反映され,当該国・地域とビジネスを行う金融機関のコストに影響を与える。

 b.公的インセンティブは公的セクターによって発動され,国際機関の活動,加盟資格,各国の監督・規制といった形で具体化される。そして,

国際金融システムを守るために企画される対抗措置には,(_)非協力国・地域との全ての金融取引に対して特別の注意を払うための金融機関に対する具体的な要請,(_) 非協力国・地域で活動する個人や法人との特定の金融取引の報告要請,そして,(_)これらの国・地域との金融取引を制限し,条件を課し,更には禁止する措置をも含む。

13.我々は,関係機関がこうした全ての分野における進展をレビューすることを強く求める。

E.国際金融機関の役割

14.資金洗浄と腐敗は,国際金融機関(IFIs)プログラムの信頼性,実効性,国際金融機関自身の信頼性を脅かすものである。このため,我々はIMF及び世界銀行に対し,それぞれの資金手続きの厳正なレビューを引き続き行うとともに,資金利用のセーフガード及びプログラムにおけるガバナンス及び腐敗対策の強化を求める。

15.資金洗浄行為は,マクロ経済への深刻な歪み,世界中の資源や資本の不適切な配分,そして銀行の健全性に対する大きなリスクをもたらす可能性がある。このため,我々は,国際金融機関に対して各加盟国が,資金洗浄対策,規制と国際協力の強化及び強靭な国内金融システムの構築を目的としたFATFの40の勧告,バーゼル銀行監督委員会のコアプリンシプル及び国際証券監督者機構(IOSCO)の目的と原則などの国際基準の実施を支援するように求める。このために,我々はIMF,世界銀行その他の国際金融機関に対し,資金洗浄が格別な脆弱性やリスクと特定される場合には,当該国が金融セクタープログラムの設計や支援の中で,資金洗浄対策への取組み支援を強く求める。我々は,適切な場合には,世銀―IMFの金融セクター評価プログラム(FSAP)とIMFの4条協議プロセスにおいて,資金洗浄対策の促進,支援を含めることを提案する。我々は,世銀が,その汚職対策プログラムの中で資金洗浄の問題をより明確に取り上げることを要請する。アジア開発銀行,米州開発銀行,欧州復興開発銀行,アフリカ開発銀行といった地域開発銀行もまた,監督を強化し,良い統治を促進するための金融セクター開発への努力の一部として,資金洗浄対策に取り組むことの重要性に対する認識を高めるために重要な役割を果たすべきである。

16.我々は,国際基準を適切に満たしていないオフショア金融センター(OFCs)によって,国際金融システムが潜在的な脅威にさらされていることを認識する。これに関連して,我々は,金融安定化フォ−ラム(FSF)のオフショア金融センター作業部会のレポートを歓迎するとともに,オフショア金融センターの国際基準実施を促進するため,アセスメントプロセスに関する勧告の実施においてIMFがその役割を果たすことを要請する。