データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 拡大中東・北アフリカとの前進と共通の未来に向けたパートナーシップ

[場所] シーアイランド、ジョージア州
[年月日] 2004年6月9日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1.我々G8首脳は、拡大中東・北アフリカ諸国における平和、政治的・経済的・社会的発展、繁栄及び安定が、我々及び国際社会全体に関わる課題であることに留意する。したがって我々は、この地域から生じている民主的・社会的及び経済的改革への我々の支援を宣言する。

2.拡大中東・北アフリカの人々は、政治、貿易、科学、芸術などにおいて、豊かな伝統と実績ある文化を有している。彼らは、人類の文明に対して多くの永続的な貢献を行った。我々は、改革の必要性に関するこの地域の首脳による最近の声明、特に、アラブの指導者達が「民主主義の基礎をしっかりと構築する」との決意を表明したチュニスにおけるアラブ首脳会議における首脳声明を歓迎する。同様に、我々は、アレキサンドリア及び死海、サナア並びにアカバにおける声明を含め、ビジネス及び市民社会の代表者による改革声明を歓迎する。世界の主要先進民主主義国の首脳として、我々は、自由と改革を支援するための特別な責務を認識し、この偉大な職務において努力を継続することを誓約する。

3.したがって、本日、我々は拡大中東・北アフリカの政府及び人々と、「前進と共通の未来に向けたパートナーシップ」を約束する。このパートナーシップは、全ての人のための自由、民主主義及び繁栄を強化するため、地域の政府並びにビジネス及び市民社会の代表との誠実な協力に基づくものとなろう。

4.パートナーシップに具体化された我々が提案する価値は普遍的なものである。人間の尊厳、自由、民主主義、法の支配、経済的な機会、社会正義は普遍的な願望であり、世界人権宣言のような関連のある国際的文書に反映されている。

5.このパートナーシップを開始するにあたり、我々は次に掲げる原則を堅持する。

5.1.国際社会による拡大中東・北アフリカ地域における平和と安定に対するコミットメントの強化は不可欠である。

5.2.特にイスラエル・パレスチナ間の紛争のように、永続的で、しばしば悲痛な争いの解決は、この地域の進展の重要な要素である。

5.3.同時に、地域紛争は改革の障害となってはならない。実際、改革は紛争の解決に向けて大きな貢献を行うことができる。

5.4.イラクにおける平和と安定の回復は、多数のイラク人の福利と地域の安全保障に不可欠である。

5.5.改革の成功はこの地域の諸国にかかっており、変革は外部から強制されるべきではなく、強制することも出来ない。

5.6.各国はそれぞれが独特であり、その多様性は尊重されるべきである。我々の関与は、現地の状況に応え、現地のオーナーシップに基づかなければならない。各社会は、その変革の速度と範囲について自らの結論に達する。しかし、独特であることは重要であるが、改革を妨げるために利用されてはならない。

5.7.改革への我々の支援は、この地域の政府、ビジネス指導者、市民社会を、完全なメンバーとして我々の共通の努力に巻き込んでいく。

5.8.すべての市民の利益のためにこの地域の改革を支援することは、長期の努力であり、G8及び地域が世代にわたるコミットメントが必要である。

6.地域の改革に対する我々の支援は、国連安保理決議242及び338に基づく、アラブ・イスラエル間の紛争の公正、包括的かつ永続的な解決に対する支援と同一歩調で進む。我々は、2004年5月4日の四者会合の声明を完全に支持し、四者会合の「イスラエル及び自立した民主的な主権を有する隣接のパレスチナが、隣り合って平和且つ安全に生存するという二つの国家の共通のビジョン」に加わる。我々は、パレスチナ改革に関する国際タスクフォース及び特別連絡委員会の作業を支持し、全ての国に対し、これらの作業に提供できる支援につき検討するよう強く要請する。我々は、世界銀行の信託基金の設立を歓迎し、援助国がこの重要なイニシアティブに対して拠出するよう強く要請する。我々は、四者会合の「双方が、国連安保理決議1515及び以前の四者会合声明において要請されているロードマップの下でのそれぞれの義務を履行するための措置をとり、アカバ及びシャルム・エル・シェイクの紅海サミットにおいて行った約束を果たす」との要請に加わる。我々は、アラブ・イスラエル間の紛争の公正、包括的かつ永続的な解決は、シリア及びレバノンに関するものを含め、「国際的に承認された境界線の中でのレバノンの領土の一体性、主権及び政治的独立への厳格な尊重を呼びかける」国連安保理決議425を含む関連する国連安保理の諸決議に完全に従うべきであることを再確認する。

7.我々は、一致団結して、国家を再建しようとしているイラクの人々及び完全なる主権を有するイラク暫定政権を支援する。イラクは、国内、近隣諸国及びより広い世界全体の平和の中で、自由で民主的で繁栄した国となる可能性を実現するため、国際社会の強力な支持を必要としている。我々は、イラクに関する国連安保理決議1546の全会一致による承認を歓迎し、統治権限移譲後のイラクにおいて、状況が許す限り国際連合が関与を継続し拡大することを一致して支持する。我々は、2005年1月31日までに行われる暫定国民議会選挙に至る選挙プロセスに対する支持と支援を提供することを誓約する。我々は、イラクにおける多国籍軍が、国連安保理決議1546に従って、国連の存在に対する保護を含む治安の回復と維持を支援するとともに、人道及び復興における努力を支援するとの役割において、成功を収めることを一致して望む。我々は、暫定政権によって特定された優先的プロジェクトに焦点をあてながら、イラクの経済復興を支援するという我々の共通の約束を表明し、他の国々にも支援を呼びかける。我々は、先般のドーハにおけるイラク復興信託基金のドナー会合の成功を歓迎し、G8各国がそれぞれどのようにイラク復興に貢献できるかについて明らかにするため、本年後半に東京で開催される次回会合までに会議を行うことを約束する。債務削減は、イラクの人々が自由で繁栄する国家を建設する機会を得るために極めて重要である。債務削減は、IMFプログラムと関連して、かつ、最近のIMFによる分析を考慮に入れて、債務持続性を確保するために十分となるよう行われるべきである。2004年中にこの目的を達成するため、我々は、互いに、またパリクラブ及び非パリクラブの債権者とともに作業していく。イラクの人々が数十年に及ぶ専制と圧政から脱し、イラクの政治的、社会的及び経済的再生を開始するにあたり、我々は、イラクと世界を結ぶ絆を再び築くため、イラクの人々―個人、学校及び都市―に対して、直接接触を行う方法を探求する。

8.本日、我々が開始するパートナーシップは、二国間及び多国間の協力プログラムを通じての地域における改革努力に対する長年の支援に基づく。欧州・地中海パートナーシップ(バルセロナ・プロセス)、米・中東パートナーシップ構想、日・アラブ対話構想は、民主的及び経済的な発展の支援に対する我々の強固なコミットメントの例である。同様に、我々は多国間の再建努力を通じ、アフガニスタンやイラクでの進展にコミットしている。我々が提案するパートナーシップは、地域で進行中である我々の関与を基礎とするものである。

9.この地域が直面する課題の大きさは、改革と協力に対する新たなコミットメントを必要とする。我々の努力を結合させることによってのみ、我々は、永続的な民主的進展を生じさせることが出来る。我々はこの地域の発展の支援を目的とする他の政府、機関、多国間機関の作業を歓迎し、支持する。

10.この新たなパートナーシップの中心になるのが「未来のためのフォーラム」であり、これは我々の努力を開かれた永続的な対話に根づかせるものである。このフォーラムは閣僚レベルの枠組みを提供し、並行して行われる対話に参加するビジネス及び市民社会の指導者とともに、G8及び地域の外務、経済及びその他の閣僚を改革について進行中の議論に集めるものである。フォーラムは、地域の必要に耳を傾け、我々が共同で行う努力がその懸念に応えるものとなるよう確保するための手段として役立つ。

11.本日我々が約束するパートナーシップでの我々の努力は、3分野に焦点を合わせている。

11.1.政治分野{前4文字下線有り}においては、民主主義及び法の支配に向けた進展は、人権及び基本的な自由という分野において効果的な保証を設けることを伴うものであり、これは特に多様性と多元性の尊重を意味する。このことは、協力、自由な意見の交換、相違の平和的な解決という結果を生む。国家の改革、良い統治及び近代化も、民主主義構築のために必要な構成要素である。

11.2.社会的及び文化的分野{前10文字下線有り}においては、万人のための教育、表現の自由、男女平等及び全世界の情報技術へのアクセスは、近代化と繁栄にとって極めて重要である。より良い教育を受けた労働力は、グローバル化された世界に積極的に参加するための鍵である。我々は、特に女児と女性の非識字率の低下及び教育に対するアクセスの向上に我々の努力を集中する。

11.3.経済分野{前4文字下線有り}においては、雇用の創出がこの地域の多くの国において最優先事項である。機会を拡大し、民間セクターが雇用を創出出来るような条件を助長するため、我々は、政府及びビジネス指導者と共に、企業家精神の促進、貿易投資の拡大、資本へのアクセスの向上、財政改革の支援、財産権の保証、透明性の促進、腐敗との闘いに取り組む。地域内の貿易の促進は、拡大中東及び北アフリカの経済的発展にとって優先事項である。

12.「前進と共通の未来に向けたパートナーシップ」は、我々と拡大中東・北アフリカ地域との関係に対して推進力を与える。我々の決意の表明として、本日、我々は、パートナーシップに生命を授けるために現在行われている及び計画されている諸活動の概略を示す最初の「改革支援計画」を発出する。