データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ASEANビジョン2020

[場所] 
[年月日] 1997年12月15日
[出典] 現代国際政治の基本文書,一般財団法人鹿島平和研究所編,原書房,604-609頁
[備考] 
[全文] 

 本日、我々ASEAN首脳はクアラ・ルンプールに集まり、1967年8月8日のバンコク宣言の中で示されているASEANの諸目的に対するコミットメント、特に、平等とパートナーシップ精神による東南アジアにおける地域協力を促進し、以て地域の平和、進歩及び繁栄に貢献することを再確認する。

 我々ASEANは、我々の国民のための繁栄を速やかに達成し、かつ、我々の国民の生活を着実に改善しつつ、域内外に対し平和のうちに東南アジア諸国の共同体を創造した。我々の豊かな多様性は、我々に力と発想を与え、強い共同体意識を育成するための助けとなった。

 我々は、今や約5億の人口と総額6千億ドルのGDPを有する市場となった。我々は、過去の数年の間に、高度経済成長、安定及び貧困撲滅などの経済分野において大きな成果を達成した。加盟国は、多大な自由化の措置により、貿易・投資が大幅に拡大した。

 我々は、これらの実績を増進する決意である。

ASEAN創設後30年が経過し、21世紀を目前にして、我々は今日の現実と2020年までの数十年間に対する見通しに基づき、ASEANのためのビジョンを描くため、ここに会合した。

 本ビジョンは、東南アジアの国民の集まりとしてのASEANによるものである。これらの国民は、外向きで、平和、安定及び繁栄の中で生活を送り、ダイナミックな発展のパートナーとして、また福祉に配慮する社会の共同体として結びつけられている。

(東南アジア諸国間の協調) 我々のビジョンは、2020年にASEAN地域が、1971年のクアラ・ルンプール宣言において規定されている東南アジア平和・自由・中立地帯(ZOPFAN)となることである。

ASEANは、2020年までに、正義と法の支配を常に尊重し、また、各国及び地域の強靭性を強化することを通じて、各国がそれぞれ平和で、また、紛争の原因が少ない、平和で安定的な東南アジアを実現する。

 我々のビジョンは、領有権問題等紛争が平和的手段により解決された東南アジアの実現である。

 我々のビジョンは、東南アジア友好協力条約が、この地域における関心を有する他の国の支持を得つつ、政府と国民に対し拘束力のある行動規約として十分機能していることである。

   (中略)

(ダイナミックな発展のためのパートナーシップ) 我々は、「ASEAN2020 :ダイナミックな発展のためのパートナーシップ」と呼称される2020年に向けた新しい方向を定めることを決意した。これは、ASEAN内でのより緊密な経済的統合を作り上げるものである。

 我々は、経済開発戦略を通じ、ASEAN経済協力を向上する決意を再確認する。この開発戦略は、我々各国国民の熱望と軌を一にして、持続的で、かつ、衡平な成長を重視し、また、各国及び地域の強靭性を向上するものである。

 我々は、現行の協力のための努力基盤の推進、我々の実績の統合、我々の共同努力の拡大、及び相互支援の向上によって、ASEANの高度な経済実績を維持することを誓約する。

 我々は、より緊密な一体性及び経済的統合に向けて進むこと、加盟国間における発展の差を縮小すること、多角的貿易システムが公正で開かれたものであることを確保しつつ、また、世界レベルの競争力を達成することを約束する。

 我々は、財、サービス、投資が自由に流れ、資本の自由な流れが促進され、衡平に経済が発展し、貧困と社会・経済面での不平等が縮小するような、安定的で繁栄し、競争力あるASEAN経済地域を創設する。

 我々は、なかんずく、以下の諸点を約束する。

−マクロ経済政策及び金融政策面でより緊密な協議を促進することにより、マクロ経済及び金融面での地域的な安定性を維持する。

−次の総合的な戦略により、経済的統合及び協力を進める。

 AFTA の完全実施、サービス貿易の自由化推進、2010年までのASEAN投資地域の実現及び2020年までの投資の自由な流れの実現、現行及び新規の成長地帯についてサブ・リージョナルな協力の強化・拡大、ASEAN域外との地域的連携の互恵的増強・強化、多角的貿易システム強化のための協力、成長の原動力としての民間分野の役割の増強。

   (中略)

(福祉社会としての共同体) 我々のビジョンは、東南アジア全体が2020年までに歴史的絆を踏まえ自らの文化的遺産を自覚した、共通の地域的なアイデンティティにより結び付けられた共同体となることである。

 我々は、各国のアイデンティティを尊重しつつ、性別、人種、宗教、言語または社会・文化的出自にかかわらず、全ての人が人間として向上・発展するための公平な機会を享受するような、活気に満ち、開放的なASEAN社会を想定する。

 我々のビジョンは、飢餓、栄養失調、略奪、貧困はもはや基本的な問題とはならない社会的に一体性を有し、福祉に配慮するASEANである。その社会では、必ず社会の基本的な単位としての家族の関係が強固であり、家族の構成員、特に、子女、青少年、女性、高齢者の面倒が良く見られるとともに、市民社会が実現し、社会的弱者、障害者、少数者に対し特別な配慮が払われ、社会的公正及び法の支配により統治が行われるだろう。

 我々は、2020年以前に、東南アジアでは不法な薬物の生産、加工、取引、使用が撲滅されることが可能と考える。

 我々のビジョンは、技術に優れ、かつ、良く訓練された人員を適当水準有し、そして、優れた科学技術研究所やセンターの強力なネットワークを持つような、戦略的・実用的技術に富んだ、技術的競争力のあるASEANである。

 我々のビジョンは、持続可能な開発のための十分に確立されたメカニズムにより、地域環境の保護、天然資源の持続性、人々の質の高い生活を確保する「清潔で緑豊かなASEAN」(Clean and green ASEAN)である。

 我々のビジョンは、環境の汚染と悪化、薬物取引、女性・子供の売買、国境を越えた他の犯罪等地域規模でのみ対応が可能な諸問題を処理するための、東南アジアにおける行動及び協力措置についての合意された規範が進展していることである。

 我々のビジョンは、人間の福祉と尊厳、共同体の利益に焦点をあてつつ、我々の国が人々の同意と積極的な参加をもって統治されることである。

 我々は、ASEANがこのビジョンを実現し、また、次世紀の諸問題に対応することができるようにするため、ASEANの機構とメカニズムを発展・強化することを決意する。さらに、このビジョンの実現のために、ASEAN事務局を強化し、その役割を拡大する必要があることも認識する。

(外に目を向けるASEAN) 我々は、外向きのASEANが国際的場裡において中心的役割を果たし、ASEANの共通の利益を推進することを想定する。我々のビジョンは、対等なパートナーシップと相互尊重に基づき、ASEANが対話国・機関及び他の地域機構との関係を強化していることである。

(結論) 我々は、この「2020年ASEANヴィジョン」を実現するという決意と姿勢を我々の国民に約束する。