データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 東南アジア諸国連合憲章(ASEAN憲章)

[場所] 
[年月日] 2007年11月20日
[出典] 現代国際政治の基本文書,一般財団法人鹿島平和研究所編,原書房,610-619頁
[備考] 署名:2007年11月20日
[全文] 

   前文

 われわれ、ブルネイ・ダルサラーム、カンボジア王国、インドネシア共和国、ラオス人民民主共和国、マレーシア、ミャンマー連邦、フィリピン共和国、シンガポール共和国、タイ王国及びベトナム社会主義共和国の国家元首又は政府の長によって代表される東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国の人民は、

ASEAN設立宣言の公布によりバンコクで設立されて以降のASEANの多大な功績及び拡大に満足の意を表し、

   (中略)

 一つのビジョン、一つのアイデンティティ、一つの思いやり、共有する共同体という思いに突き動かされ、かつこの思いの下に結束し、

   (中略)

 友好と協力の基本的な重要性及び主権、平等、領土保全、内政不干渉、コンセンサス並びに多様性の中の統一の原則を尊重し、

 民主主義の原則、法の支配及びグッドガバナンス並びに人権及び基本的自由の尊重及び保護を遵守し、

 現在及び将来の世代の利益のために持続可能な発展を確保し、ASEAN共同体を設立する過程の中心に、人々の幸福、暮らし及び福祉を据えることを決意し、

   (中略)

 地域の協力及び統合の強化を通じて、特にASEAN協和バリ宣言 II で規定されたASEAN安全保障共同体、ASEAN社会・文化共同体からなるASEAN共同体、ASEAN経済共同体及びを設立することによって共同体の設立の強化に取り組み、

 この憲章を通じてASEANの法的及び制度的な枠組みを設立することを決定し、

 この目的のために、ASEAN設立40周年の歴史的な機会に、シンガポールに集まったASEAN加盟国の国家元首又は政府の長は、この憲章に合意した。


  第1章 目的及び原則

第1条(目的)ASEANの目的は、次の通りである。

 1. 平和、安全及び安定を維持、強化し、この地域における平和志向の価値をさらに強固なものとすること。

 2. 政治、安全保障、経済及び社会文化における協力をさらに促進することによって、この地域の強靭性を向上させること。

 3. 非核兵器地帯として及びその他の大量破壊兵器のない東南アジアを保持すること。

 4.ASEANの人民及び加盟国が、公正で民主的な調和のとれた環境の中で、世界全体と共に平和に暮らすことを確保すること。

 5. 安定した、繁栄した、高い競争を伴い、かつ経済的には貿易と投資の効果的な促進と一体化し、かつ商品、サービス、投資が自由に流入し、実業家、専門家、人材及び労働力が円滑に移動できる、単一の市場及び生産拠点を創設すること。

 6. 相互の援助及び協力を通じて、ASEAN内部の貧困を軽減し、発展の格差を縮小すること。

 7.ASEAN加盟国の権利及び責任に妥当な考慮を払ったうえで、民主主義を強化し、グッドガバナンスと法の支配を向上させ、かつ、人権及び基本的自由を促進し保護すること。

 8. 包括的安全保障の原則に従って、あらゆる形態の脅威、越境犯罪及び国境を越えた課題に効果的に対処すること。

 9. 地域の環境の保護、地域の天然資源の持続可能性、地域の文化的遺産の保全及び地域の人民の質の高い生活を保障するために、持続可能な発展を促進すること。

 10.ASEANの人民のエンパワーメントかつ、ASEAN共同体の強化のために、教育、生涯学習及び科学技術の分野におけるさらに密接な協力により、人材を開発すること。

 11. 人間の発展、社会福祉及び正義の機会への衡平なアクセスを提供することによって、ASEANの人民の福利及び暮らしを向上させること。

 12.ASEANの人民のために、安全で、安心のできる、かつ麻薬のない環境を構築するために、協力を強化すること。

 13. すべての社会部門がASEANの統合及び共同体設立の過程に積極的に参加し、その恩恵に浴することのできる、人間本位のASEANを促進すること。

 14. 地域の多様な文化及び遺産に対するより大きな関心を育成することによって、ASEANとしてのアイデンティティを促進すること。

 15. 開かれた、透明性を有する包括的な地域的枠組みにおいて、域外のパートナーとの関係及び協力の主要な原動力としてASEANが有する中心性及び積極的役割を維持すること。

第2条(原則) 1. 第1条に規定された目的に従い、ASEAN及びその加盟国は、ASEANの宣言、協定、協約、合意、条約及びその他の文書に盛り込まれている基本原則を再確認し、これを遵守する。

 2.ASEAN及びその加盟国は、次の原則に従って行動する。

(a) すべてのASEAN加盟国の独立、主権、平等、領土保全及びナショナルアイデンティティの尊重

(b) 地域の平和、安全及び繁栄の向上における共通の義務と集団的責任

(c) 侵略及び武力による威嚇若しくは武力の行使又はいかなる方法であれ国際法に違反するその他の行動の放棄

(d)紛争の平和的解決に対する信頼

(e)ASEAN加盟国の国内問題に対する不干渉

(f)外部からの干渉、破壊行為及び強制を受けることなく、国家として存在することのできるすべての加盟国の権利の尊重

(g)ASEANの共通の利益に重大な影響を及ぼす問題に関する協議の強化

(h)法の支配、グッドガバナンス、民主主義の原則及び立憲政治体制の遵守

(i)基本的自由の尊重、人権の促進及び保護、並びに社会的正義の促進

(j)ASEAN加盟国が署名した国連憲章、及び国際人道法を含む国際法の遵守

(k)ASEAN加盟国又はASEAN非加盟国若しくは非国家主体によって追求されるあらゆる政策又は活動であって、ASEAN加盟国の主催、領土保全若しくは政治的及び経済的安定性を脅かすものへの参加(領域の使用を含む)を差し控えること。

(l)多様性の中の統一という精神に則り、ASEANの人民の共通の利益を強調する一方で、これら人民の様々な文化、言語及び宗教を尊重すること。

(m)積極的な関与、外向的で、共生的かつ非差別的な姿勢の維持と、外部との政治的、経済的、社会的及び文化的な関係におけるASEANの中心性

(n) 市場主導型経済における地域的経済的統合に対するすべての障壁の撤廃に向けた、経済的関与及び漸進的縮小の効果的履行のための多角的貿易規則の遵守及びASEANの規則に基づく体制の堅持


  第2章〜第3章(略)


  第4章 組織

第7条 (略)

第8条 (ASEAN調整評議会) 1.ASEAN調整評議会は、ASEAN加盟国の外務大臣によって構成され、少なくとも年に2回は開催する。

 2.〜3.(略)

第9条(ASEAN共同体評議会) 1.ASEAN共同体評議会は、ASEAN政治・安全保障共同体評議会、ASEAN経済共同体評議会及びASEAN社会・文化共同体評議会から構成される。

 2.〜6.(略)

第10条 (略)

第11条 (ASEAN事務総長及びASEAN事務局) 1.ASEAN事務総長は、誠実、能力、専門的経験及びジェンダーの平等に妥当な考慮を払ったうえで、国名のアルファベット順にASEAN加盟国の国民の中からASEAN首脳会議によって任命され、任期は5年として再任を認めない。

 2.〜9.(中略)

第12条(ASEAN常駐代表委員会)

1.各ASEAN加盟国は、ジャカルタに駐在する大使と同等の地位を有すASEAN常駐代表を任命する。

  (中略)

第13条(略)

第14条(ASEAN人権機構) 1. 人権及び基本的自由の促進及び保護に関するASEAN憲章の目的及び原則に従って、ASEANは、ASEAN人権機構を設立する。

 2.ASEAN人権機構は、ASEAN外相会議によって決定される付託事項に従って活動する。

第15条 (略)


  第5章〜第6章(略)


  第7章 意思決定

第20条(協議及びコンセンサス) 1. 基本原則として、ASEANにおける意思決定は、協議及びコンセンサスに基づくものとする。

 2. コンセンサスが得られない場合、ASEAN首脳会議は、特定の決定がなされる方式を決定することができる。

 3. 本条1及び2のいずれも、関連するASEAN法律文書に含まれる意思決定方式に影響を与えるものではない。

 4. 憲章の重大な違反又は不遵守があった場合には、当該問題はASEAN首脳会議に決定を求めて付託される。

第21条(履行及び手続) 1. 各ASEAN共同体評議会は、みずからの手続規則を定める。

2. 経済上の約束を履行するにあたり、ASEANマイナスX方式を含む柔軟な参加方式についてコンセンサスが得られている場合、当該方式を適用することができる。


  第8章 紛争の解決

第22条(一般原則) 1. 加盟国は、すべての紛争を、対話、協議及び交渉により、時宜を得た方法で平和的に解決するよう努める。

2.ASEANは、ASEAN協力のすべての分野において紛争解決メカニズムを維持し、確立する。

第23条(あっせん、調停及び仲介) 1. 紛争当事国である加盟国は、いつでも、合意された期限内に紛争を解決するために、あっせん、調停又は仲介に訴えることに合意することができる。

2. 紛争当事国は、職権において行動するASEAN議長又はASEAN事務総長に対し、あっせん、調停又は仲介を提供するよう要請することができる。

第24条〜第28条 (略)


  第9章〜第11章(略)


 第12章 対外関係

第41条(対外関係の遂行) 1.ASEANは、各国との及び小地域的、地域的及び国際的な組織との間に、友好関係、互恵的対話、協力及びパートナーシップを発展させる。

 2.ASEANの対外関係は、本憲章に規定された目的及び原則を遵守する。

 3.ASEANは、地域協力及び共同体設立におけるその中心性を提案し維持することで、地域的取極における主要な原動力となる。

 4.ASEANの対外関係の遂行にあたって、加盟国は、統一と連帯に基づいて、共通の立場を発展させ、共同行動を追求するために連携し、努力する。

 5.ASEANの対外関係における戦略的政策指針は、ASEAN外相会議の勧告に基づいてASEAN首脳会議によって定める。

 6.ASEAN外相会議は、ASEANの対外関係の遂行にあたって、一貫性と結束を確保する。

 7.ASEANは、各国との及び小地域的、地域的及び国際的な組織並びに機関との間で協定を締結することができる。こうした協定締結のための手続は、ASEAN共同体評議会との協議の上、ASEAN調整評議会によって規定する。

第42条(対話コーディネーター) 1.カントリー・コーディネーターとして行動する加盟国は、関連する対話パートナー、地域的及び国際的な組織並びに機関との関係において、ASEANの利益を調整し、かつ促進するために、交代で全体的責任を負う。

 2. 域外パートナーとの関係において、カントリー・コーディネーターは、特に、次のことを行う。

(a)ASEANを代表し、ASEANの原則に従って、相互尊重と平等に基づく関係を強化する。

(b)ASEANと域外パートナーとの間の関連する会合において共同議長を務める。

(c) 第三国及び国際組織において関連するASEAN委員会によって補佐される。

第43条〜第46条 (略)


  第13章(略)

第47条〜第55条 (略)