データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 米州相互防衛条約(リオ条約)

[場所] 
[年月日] 1947年9月2日
[出典] 現代国際関係の基本文書(上),一般財団法人鹿島平和研究所編,日本評論社,861-866頁
[備考] 
[全文] 

 大陸の平和および安全の維持に関する全米会議に代表者を出した各政府は、各自の間の友好および善隣の関係を強固にすることを希望し、かつ

 メキシコ·シティに会合した戦争および平和問題に関する全米会議の決議第8が、アメリカ諸国のうちのいずれかに対する侵略の脅威および行為をも防止しかつ除去するための条約の締結を勧告したこと

 締約国が、国際連合の目的と原則とに一致する全米機構の形で依然として結合していようとする自己の意志を再言し、かつ国際平和および安全の維持に関する事項であって地域的行動に適当であるものについて 締約国の締結した協定の存在を再確認していること

 締約国が、全米の連帯性および協力の原則、特にチャブルテペック協定の前文および宣言に掲げられていて、締約国の相互の関係の基準として、および全米機構の法的基礎として受諾されるものと了解されなければならない諸原則を各自が遵守することを再確認していること

 アメリカの諸国が、各自の間の紛争の平和的処理に関する手続を改善するため、戦争および平和の問題に関する全米会議の決議第9および第39において予見されている「全米平和機構」に関する条約を締結することを企図していること

 アメリカの諸共和国の相互援助および共同防衛の義務が、これらの諸国の民主的理想と平和政策の諸原則および目的の遂行に永久に協力するという右諸国の意思とに本質上関係を有していること

 アメリカの地域的共同体が、法的組織は、平和および安全の必要な前提要件であることと平和が、正義および道徳的秩序を、従って人権および自由の国際的承認および保護、人民の不可欠の福祉並びに正義および安全の国際的実現のための民主主義の有効性を基礎としているものであることを明白な真理として確認していること

 にかんがみて、適当な手段によって平和を確保するためおよび右諸国のうちのいずれに対する侵略の脅威をも処理するため、アメリカのいずれの国に対する武力攻撃にも対抗する有効な相互援助を規定する左の条約を各自の国民の名において締結することを、前述の目的に従って決定した。

第1条 締約国は、正式に戦争を否認し、かつ各自の国際関係においては、

 国際連合憲章又はこの条約の規定に合致しないいかなる態様においてでも、武力の威嚇又は行使をなすことのないことを約束する。

第2条 前条に掲得げられている原則の結果として、締約国は、相互の間に起ることのあるあらゆる紛争を平和的解決という方法に付することと相互間の右紛争を、国際連合の総会又は安全保障理事会に付託するに先立って、全米機構において実施中の手続によって解決することに努めることを約束する。

第3条 1. 締約国は、アメリカの一国に対するいかなる国の武力攻撃も、アメリカの一切の国に対する攻撃とみなされることに意見が一致した。従って、右締約国の各は、国際連合憲章第51条によって認められている個別的又は集団的の固有の自衛権を行使して右攻撃に対抗することを援助することを約束する。

 2. 直接に攻撃を受けた1又は2以上の国の要請があったときに全米機構の協議機関の決定のあるまでは、各締約国は、前号に揚げられている義務の遂行としてかつ大陸連帯性の原則に従って、自国が個別的にとることのできる即時の措置を決定することができる。協議機関は、これらの措置を検討し、かつ執られなければならない集団的性質の措置を協定する目的をもって遅滞なく会合しなければならない。

 3. この条の規定は、第4条に記述されている地域内又はアメリカの一国の領域内で行われるいかなる武力攻撃の場合にも適用される。武力攻撃が右地域外で行われる場合には、第6条の規定が適用される。

 4. この条のもとに規定されている自衛措置は、国際連合安全保障理事会が、国際的平和および安全を維持するために必要な措置を執るに至るまでこれを執ることができる。

第4条 (略)

第5条 締約国は、自衛権の行使として、又は全米の平和および安全を維持するために、着手されたか又は計画中である活動に関する完全な情報を、国際連合憲章第51条および第54条に従って、国際連合安全保障理事会に直ちに送付しなければならない。

第6条 アメリカのいずれかの国の領土の不可侵性若しくは保全、又は主権若しくは政治的独立が、武力攻撃ではない侵略によってか、アメリカ外若しくはアメリカ内の紛争によってか又は、アメリカの平和を危くする虞のある他の何らかの事実若しくは事態によって影響を受ける場合には、協議機関は、侵略の場合にその侵略の犠牲国を援助するために執られなければならない措置又はいかなる場合でも共同防衛のためと大陸の平和および安全の維持のためとに執られなければならない措置を協定するために直ちに会合しなければならない。

第7条 アメリカの2国又はそれ以上の国の間の紛争の場合においては、国際連合憲章第51条に準拠した自衛権を妨げることなしに、締約国は、協議のために会合し、紛争当事国に対し戦闘を停止して事態を戦争前の原状に回復することを求めかつ更に全米内の平和と安全の再建又は維持のためおよび戦争の平和的手段による解決のための他の一切の必要な措置を執らなければならない。和平を招来する行動の担絶は、侵略者を決定するに際しおよび協議会の議定する措指置を適用するに当り考慮される。

第8条 この条約の適用上においては、協議機関が議定することのある諸措置は、次のもの、すなわち外交使節団の団長の召還、外交関係の断絶、領事関係の断絶、経済関係あるいは鉄道、海運、航空、郵便、電信、電話および無線電話若しくは無線電信による交通又は通信の一部又は全部の停止並びに武装兵力の使用、のうちの1又は2以上を含む。

第9条 協議機関が性質は侵略であるとすることのある他の行為以外に、次のものが同様のものとみなされる。

(a)一国による他国の領域、人民、又は陸軍、海軍、若しくは空軍に対する、挑発によらない武力攻撃。

(b)条約、司法上の決定、若しくは仲裁採決に従って画定された境界を越えることによって、一国の武装兵力が行うアメリカの一国の領域への侵入又は、右のように画定された国境のない場合には、他国の実際上の管轄権の下にある地域を犯す侵入。

第10条 この条約のいずれの規定も、国際連合憲章に基づく締約国の権利および義務を害するものと解釈されてはならない。

第11条 この条約に掲げられている協議は、この条約を批准したアメリカの諸共和国の外務大臣の会合によってか、又は将来協定されることのある方法若しくは機関によって、行われなければならない。

第12条 (略)

第13条 協議は、条約を批准した署名国のうちのいずれかが全米連合理事会に対して提出する要請によって開始される。

第14条 この条約に掲げられている投票には、条約を批准した署名国の代表者だけが参加することができる。

第15条 全米連合理事会は、この条約に関する一切の事項については、この条約を批准した署名国の間およびこれらの国と国際連合との間の連絡機関として行動する。

第16条 前記の第13条および第15条に掲げられている全米連合理事会の決議は、投票する権利を有している理事の絶対多数によってなされなければならない。

第17条 協議機関は、条約を批准した署名国の3分の2の投票によって自己の決議をなさなければならない。

第18条~第26条(略)