データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 平和五原則(周恩来・ネルー共同声明)

[場所] 
[年月日] 1954年6月28日
[出典] 現代国際関係の基本文書(下),一般財団法人鹿島平和研究所編,日本評論社,109-111頁
[備考] 
[全文] 

 中華人民共和国首相兼外相周恩来閣下は、インド共和国首相兼外相ジャワハルラル・ネルー閣下の招待によりデリーを訪問し、3日間滞在した。周恩来、ネルー両国首相は中国およびインドに共通の多くの関係事項について協議した。両首相はとくに東南アジアの平和の前途およびジュネーブ会議におけるインドシナ問題の発展について討議した。インドシナの情勢はアジアおよび世界の平和にとってきわめて重要であるため、両首相はいずれもジュネーブで、いま行われている努力が成功することを希望した。両者はまたジュネーブにおけるインドシナ停戦交渉が若干進展したことに満足をもって注目し、これらの努力が近い将来成功するとともに同地の各種問題が政治的に解決されることを熱望した。

 両首相会談はジュネーブおよびその他の地域で現在行われている平和解決の努力をできるだけ援助することを目ざしたものであり、その主な目的は、相互の観点について一層はっきりした理解をうることにより相互が協力し、さらには他の国家とも協力して平和の確保に努めることにある。

 最近中国とインドの間に一つの協定が成立した。両国はこの協定の中で両国に関係あるつぎの原則を定めた。

(1)領土保全および主権の相互尊重

(2)不可侵

(3)内政不干渉

(4)平等互恵

(5)平和的共存

 両首相はこれらの原則を再確認するとともに両国とアジアおよび世界のその他の諸国との間にもこれらの原則を適用すべきことを痛感した。もしこれらの原則が各国間ばかりでなく一般国際関係にも適用されるならば、それは平和と安全の強固な基礎となり、現在存在する恐怖と疑いの念は信頼感に置き替えられるであろう。

 両首相は次のことを確認した。すなわちアジアおよび世界各地には異った社会制度と政治制度があるが、もし上述の各原則を受入れ、これらの原則に基いて処理し、どの国でも他の国に対する干渉を行うことがなければ、これらの相違は平和の妨害になったり、紛争をもたらすようなことはない。また領土保全と主権および不干渉が保証されれば、国家関係は相互に平和共存的、友好的となり、現在世界にみられる緊張は緩和され、平和的空気を作り上げるのに役立つであろう。

 両首相はとくにインドシナ問題の解決にこれらの原則が適用されることを希望した。インドシナの政治解決にあたっては自由、民主、統一および独立した国家を樹立することを目的とすべきで、これらの国は侵略目的に利用されることなく、また外部の干渉を受けるべきではない。それによってこれらの国の自信の増大とともに、これらの国家相互間およびその隣接国との間の友好関係をもたらすことになる。また上述の原則を採用することは、一つの平和地域を設立することに役立つ。もし事情が許せば、この平和地域は拡大することができ、かくして戦争の可能性が減少し、世界平和が強化される。

両首相は中国およびインド間の友好関係に対する確信を表明したが、このような友好関係は世界の平和ならびに両国自身とアジアの他の諸国の平和的発展に寄与するものである。

 これらの会談は、アジア問題に対する一層の理解をもたらすことを助けるとともに、世界の他の諸国と共に、これらの諸問題および類似の諸問題を解決する平和的、協力的努力を促進することを目的として行われた。

両首相は中印両国は密接な接触を維持し、これにより両国が引続き十分理解を保つようにすることに同意した。両首相は今回会談を行い、十分に意見を交換して、平和のため一層の理解と協力を得る機会を得たことを多とした。