データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ハンガリー動乱:ナジ首相ラジオ演説 新政府樹立宣言(1956年10月28日),複数政党制導入宣言(1956年10月30日),ハンガリー中立宣言(1956年11月1日),ソ連の攻撃開始の報告(1956年11月4日)

[場所] 
[年月日] 1956年10月28日,1956年10月30日,1956年11月1日,1956年11月4日
[出典] 現代国際政治の基本文書,一般財団法人鹿島平和研究所編,原書房,783-787頁
[備考] 
[全文] 

I 新政府樹立宣言(1956年10月30日)

 過去数週間の間に血なまぐさい出来事が悲劇的な速度で起った。我々が見聞きし、参加したこのつらい出来事の中で、過去10年間の恐るべきあやまちと犯罪が我々の前に明らかになった。一千年の歴史の過程において運命はわが国民を苦しめることを容赦しなかった。しかしそのようなことはわが国をひるませたことはなかった。

 政府は、現在のこの並外れた運動が反革命的だとする見解を糾弾する。疑いもなく、偉大な人民の運動が起る際に常に見られるように、この運動もこの運動の評判を傷つけ、一般犯罪を起こそうとする犯罪分子によって利用された。人民の民主政権を転覆させる目的をもって反動的で反革命的な分子が運動に潜り込もうとしたことも事実である。

 しかしながら、この騒動の中においても、全ての国民を包含し、統一させる偉大な国民的・民主主義的な運動が生来的な力をもって発展してきたことも疑いのないところである。この運動は、国家の自由、独立と主権を保証し、民主主義への過程にある我々の社会、我々の経済的・政治的制度を前進させることを保証することを目的としている。この偉大な運動は、過去の歴史においてなされた深刻な犯罪のせいで勃発したものである。

 事態は、最後まで党の指導者たちが古く犯罪的な政策と最終的に決別することを決断しなかったという事実によって一層悪化した。とりわけこのことが、相対する双方のかくも多くの愛国者たちが命を落としたこの同胞間の悲劇的な闘いに導いたのである。この戦いの間に国民の意思を真に体現した民主的国民統合、独立と社会主義の政府が誕生したのである。これが政府の確固たる決意である。

(中略)


II 複数政党制導入宣言(1956年10月30日)

(中略)

 国民生活の一層の民主化のために、内閣は一党制度を廃止し、1945年に再生した連立諸政党間の民主的協力に基礎を置く政府を置くこととした。これに呼応して、国民政府の中に小内閣を設置する。この小内閣のメンバーは、イムレ・ナジ、ゾルタン・ティルディ、ベラ・コバチ、フェレンツ・エルディ、ヤノシュ・カダール、ゲザ・ロソンツィと社会民主党によって指名される一名である。政府は、ヤノシュ・カダールとゲザ・ロソンツィを国務相に選出するとの提案を人民共和国評議会に提出する。

 国民政府は、ソ連軍部隊がブダペスト地域から直ちに撤退を開始するようソ連軍司令部に訴える。同時に、国民政府はソ連軍部隊のハンガリーからの撤退について遅滞なくソ連政府と交渉を開始することを国民に報告する。

 国民政府を代表して私は、政府が今回の革命によってもたらされた地方自治の民主的機構を承認し、また政府はその地方自治機構を信頼し、さらに政府はそれら機構の支持を要請することを表明する。

 ハンガリーの同胞たち、愛国者たちよ! 祖国の忠実な市民たちよ! 革命の成果を守れ、あらゆる手段により秩序を守り、平静を回復せよ。同胞間の殺し合いによってわが国において血が流されるべきでない。いかなる形の騒擾も予防し、可能な全ての手段により生命と財産を守れ。

 我がハンガリーの同胞たち、勤労者、農民たちよ!この運命的な決定の時に国民政府の側にあれ。自由で民主的で独立したハンガリー万歳!


III ハンガリー中立宣言(1956年11月1日)

 ハンガリーの国民よ! ハンガリー国民政府は、ハンガリー国民とその歴史に対する深い責任感から、またハンガリーの何百万もの人々の不可分の意思に形を与えるため、ハンガリー人民共和国の中立を宣言する。

 ハンガリー国民は、独立と平等の基礎の下、また国連憲章の精神にもとづき、近隣諸国、ソビエト連邦及び世界の全ての人々と真の友好の下で生きていきたいと望む。

 ハンガリー国民は、他のいかなる勢力圏に加わることなく、国の革命の成果の強化と一層の発展を求める。ハンガリー国民の一世紀にもわたる夢がかくて実現された。過去及び現在のハンガリーの英雄たちによって闘われた革命闘争は、自由と独立の理想をついに勝利に導いた。この英雄的な闘争が、我が国民の国際関係のなかで中立という基本的な国益を達成することを可能にした。

 我々は、隣人たち、近隣及び遠隔の諸国に対し、我が国民の不変の決定を尊重するよう呼びかける。我が国民が現在この決定に関しておそらく歴史上かつてないほど団結していることは確な事実である。

 働いている何百万のハンガリーの人々よ! 革命への決意、自己犠牲的な働き及び秩序の強化をもってわが国、すなわち自由で独立し民主的で中立のハンガリーを守り、強くせよ。


IV ソ連の攻撃開始の報告(1956年11月4日)

 私はハンガリー人民共和国首相のイムレ・ナジだ。今朝早くソ連軍部隊が合法的で民主的なハンガリー政府を転覆するとの明白な意図をもって我が首都に対する攻撃を開始した。我が部隊は戦っている。政府は存在している。

私はこのことを国民と世界の世論に報告する。