データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 欧州連合の運営に関する条約(EU運営条約)

[場所] 
[年月日] 1957年3月25日
[出典] 現代国際政治の基本文書,一般財団法人鹿島平和研究所編,原書房,669-697頁
[備考] 署名:1957年3月25日(ローマ条約),最終改正:2007年12月13日(リスボン条約)
[全文] 

   前文(略)

  第1部(原則)

第1条〔欧州連合運営条約の位置づけ〕 1. この条約は、連合の運営について定め、連合の権限行使の分野、限界および取決めについて定める。

 2. この条約および欧州連合条約は、連合が基礎とする条約を構成する。これら二つの条約は、同一の法的価値を有し、以下「基本条約」という。


第1編(連合権限の種類と分野)

第2条〔権限の種類と定義〕 1. 基本条約が特定分野において排他的権限を連合に付与する場合には、連合のみが立法を行い、法的拘束力ある行為を採択することができる。構成国は、連合により授権される場合、または、連合の行為を実施する場合に限り、自ら立法を行い、法的拘束力ある行為を採択することができる。

 2. 基本条約が特定分野において構成国と共有する権限を連合に付与する場合には、連合と構成国は、この分野において立法を行い、法的拘束力ある行為を採択することができる。構成国は、連合が権限を行使しない範囲においてその権限を行使する。構成国は、連合が権限の行使の停止を決めた範囲において、再びその権限を行使する。

 3. 構成国はこの条約が定める取決めの枠内において、経済および雇用政策を調整する。この取決めに関しては、連合が決定する権限を有する。

 4. 連合は、欧州連合条約の規定に従い、共通防衛政策の漸進的な策定を含めて、共通外交安全保障政策を定め、かつ実施する権限を有する。

 5. 基本条約に定める特定の分野および条件において、連合は、当該分野における構成国の権限を奪うことなく、構成国の行動を支援、調整または補足するための行動を実施する権限を有する。

 基本条約の規定を根拠にこれらの分野に関して採択された連合の法的拘束力のある行為は、構成国の法令の調和化を伴うものではない。

 6. 連合の権限の行使の範囲およびそのための取決めは、各分野に関する基本条約の規定によって定める。

第3条〔排他的権限の分野〕 1. 連合は、次の分野において排他的権限を有する。

(a) 関税同盟

(b) 域内市場の運営に必要な競争法規の設定

(c) ユーロを通貨とする構成国の金融政策

(d) 共通漁業政策に基づく海洋生物資源の保護

(e) 共通通商政策

 2. 連合は、国際協定の締結が連合の立法行為の中に定められる場合、運合が対内権限の行使を可能にするために必要である場合、または、協定の締結が共通法規に影響を与えもしくはその範囲を変更するものである場合には、国際協定の締結について排他的権限を有する。

第4条〔共有権限の分野〕1. 連合は、基本条約が第3条および第6条に定める分野に関係しない権限を連合に付与する場合には、構成国と権限を共有する。

 2. 連合と構成国間の共有権限は、以下の主要な分野に適用される。

(a) 域内市場

(b) この条約に定める側面に関する社会政策

(c) 経済的、社会的および領域的な緊密化

(d) 農業および漁業(海洋生物資源の保護を除く)

(e) 環境

(f) 消費者保護

(g) 運輸

(h) 欧州横断交通網

(i) エネルギー

(j) 自由、安全および司法の分野

(k) この条約に定める側面に関する公衆衛生問題における共通の安全関心事項

 3. 研究、技術開発および宇宙の分野において、連合は、活動を実施する権限、とくに計画の策定と実施の権限を有する。ただし、この権限の行使は、構成国の権限の行使を妨げない。

 4. 開発協力および人道援助の分野において、連合は、活動を行い、かつ共通政策を実施する権限を有する。ただし、このような権限の行使は、構成国の権限の行使を妨げない。

第5条 〔加盟国の政策調整〕 1. 構成国は、連合内において経済政策を調整する。この目的のために、理事会は、措置とくに経済政策に関する幅広い指針を採択する。

 ユーロが通貨である構成国には、特別の規定が適用される。

 2. 連合は、とりわけ雇用政策に関する指針を定めることによって、構成国の雇用政策の調和を確保するための措置をとる。

 3. 連合は、構成国の社会政策の調和を確保するためのイニシアチブをとることができる。

第6条 〔支援、調整または補足的権限の分野〕 連合は、構成国の措置を支援、調整または補足する措置を実施する権限を有する。欧州レベルにおける行動の分野は、次の通りとする。

(a) 人間の健康の保護および改善

(b) 産業

(c) 文化

(d) 観光

(e) 教育、職業訓練、青少年およびスポーツ

(f) 市民保護

(g) 行政上の協力


第2編(一般規定)

第7条 〔政策および活動の一貫性確保〕 連合は、あらゆるその目的を考慮に入れて、かつ権限付与の原則に従って、その政策および活動の一貫性を確保する。

第8条 〔男女平等原則〕 連合は、すべてのその活動において男女の間の不平等の除去および平等の促進を目指す。

第9条 〔雇用、社会、教育、健康等の配慮原則〕 連合は、その政策および活動の決定と実施において、高水準の雇用の促進、十分な社会的保護の確保、社会的排除に対する闘い、ならびに、高水準の教育、職業訓練および人間の健康の保護に関連する要請を考慮に入れる。

第10条 〔非差別の原則〕 連合は、その政策および活動の決定と実施において、性別、人種もしくは種族的出身、宗教もしくは信条、障害、年齢または性的指向に基づく差別と闘うことを目指す。

第11条 〔環境保護〕 環境保護の要請は、とくに持続可能な発展の促進のため、連合の政策および活動の決定と実施の中に統合されなければならない。

第12条 〔消費者保護〕 消費者保護の要請は、連合の他の政策および活動の決定と実施において考慮される。

第13条 〔動物の福祉への配慮〕 連合の農業政策、漁業政策、運輸政策、域内市場政策、研究技術開発および宇宙政策の決定と実施において、連合および構成国は、感覚ある生物としての動物の福祉を十分に尊重する。他方で、とくに宗教儀式、文化的伝統および地域的遺産に関係する構成国の立法上もしくは行政上の規定および慣習が尊重される。

第14条 〔一般的経済利益事業への配慮〕 欧州連合条約第4条またはこの条約の第93条、第106条および第107条を妨げることなく、また連合が共有する価値の中で一般的経済利益事業が占める位置ならびに社会的および領域的緊密化を促進する役割を考慮に入れつつ、連合および構成国は、それぞれの権限内および基本条約の適用範囲内において、その使命の遂行を可能にする原則および条件、とくに経済的および財政的条件に基づいて、これらの事業が運営されるように注意を払う。欧州議会および理事会は、通常立法手続に従い、規則により、これらの原則を設定し、構成国の権限を妨げることなく、基本条約を遵守する形で、これらのような事業を提供し、開始しおよびこれらに融資する諸条件を定める。

第15条〜第17条 (略)


  第2部(非差別および連合市民権)

第18条〔差別の禁止〕 基本条約の適用の範囲内において、かつ、基本条約に別段の定めがある場合を除くほか、国籍に基づくすべての差別は禁止される。

 欧州議会と理事会は、通常立法手続きに従い前記の差別を禁止するための法規を採択することができる。

第19条〔差別防止のための行動〕1.基本条約の他の規定を妨げることなく、かつ、連合に付与された権限の範囲内において、理事会は、特別立法手続に従いかつ欧州議会の同意を得た後に、全会一致により、性別、人種もしくは種族的出身、宗教もしくは信条、障害、年齢、または性的指向に基づく差別と闘うために、適切な行動をとることができる。

 2. 1とは別に、欧州議会と理事会は、通常立法手続に従い、1に定める目的の実現に寄与するために、加盟国の法令の調和化を除いて、加盟国によってとられる行動を支援するための連合の促進措置に関する基本原則を採択することができる。

第20条〔連合市民権〕1. 連合市民権をここに創設する。構成国の国籍を有する者は、何人も連合の市民となる。連合市民権は、国家の市民権に付加されるものであって、それに代替するものではない。

 2. 連合市民は、基本条約に定められた権利を享有し、かつ、義務を負う。とくに連合市民は、次の権利を有する。

(a) 構成国の領域内を自由に移動し、またそこに居住する権利

(b) 欧州議会の選挙および居住する構成国の地方選挙における居住国の国民と同一条件の下での選挙権および被選挙権

(c) 国籍を有する構成国が代表を置いていない第三国の領域において、いずれかの他の構成国の国民と同一の条件で、当該他の構成国の外交上および領事上の保護を受ける権利

(d) 欧州議会に対する請願権、欧州オンブズマンへの申請権、ならびに、連合の諸機関または諮問機関に対して、条約の諸言語のいずれかで問い合わせを行い、かつ同一の言語で返答を得ることができる権利

 以上の権利は、基本条約とその下で採択される措置に定める条件と制限に従って行使される。

第21条〔移動・居住の権利〕 1. すべての連合市民は、基本条約およびその実施のために採択された措置に規定される制限および条件に従い、構成国の領域内を自由に移動し、またそこに居住する権利を有する。

 2. この目的を達成するために連合による行動が必要であることが証明され、かつ、基本条約が必要な権限を規定していない場合には、欧州議会と理事会は、通常立法手続に従い、1に定める権利の行使を容易にするための規定を採択することができる。

 3. 1に定める目的と同一の目的のために、基本条約が必要な権限を規定していない場合には、理事会は、特別立法手続に従い、社会保障または社会的保護に関する措置を採択することができる。理事会は、欧州議会と協議した後に、全会一致により決定する。

第22条〔選挙権と被選挙権〕 1. 構成国内に居住する連合市民は、その居住国の国民でなくとも、自己が居住する構成国の地方選挙において、居住国の国民と同一の条件の下で選挙権および被選挙権を有する。この権利は、理事会が特別立法手続に従いかつ欧州議会と協議した後に、全会一致により採択する実施細目に従って行使される。

これらの実施細目は、構成国に特有の事情による逸脱を規定することができる。

 2.第223条1およびその実施のために採択される規定を妨げることなく、他の構成国に居住する連合市民は、その居住国の国民でなくとも、居住する構成国の欧州議会の選挙において、居住国の国民と同一の条件の下で選挙権および被選挙権を有する。この権利は、理事会が特別立法手続に従いかつ欧州議会と協議した後に、全会一致により採択する実施細目に従って行使される。これらの実施細目は、構成国に特有の事情による逸脱を規定することができる。

第23条〔外交・領事保護〕 すべての連合市民は、国籍をもつ構成国が代表を置いていない第三国の領域において、いずれかの他の構成国の国民と同一の条件で、当該他の加盟国の外交上または領事上の保護を受ける。構成国は、必要な規定を採択し、この保護を確保するために必要な国際交渉を開始する。

 理事会は、特別立法手続に従いかつ欧州議会と協議した後に、このような保護を容易にするために必要な調整および協力措置を創設する指令を採択することができる。

第24条〜第25条(略)


  第3部 (連合の域内政策と活動)

第1編(域内市場)

第26条〔域内市場における自由移動〕1. 連合は、域内市場を設定し、またはその機能を確保するために、基本条約の関係規定に従い措置を採択する。

 2. 域内市場は、物、人、サービスおよび資本の自由移動が基本条約の規定に従って確保される域内国境のない領域からなる。

 3. 理事会は、委員会の提案に基づき、すべての関係分野の均衡のある発展を確保するために必要な指針と条件を決定する。

第27条 (略)


第2編(物品の自由移動)

第28条 〔関税同盟〕 1. 連合は、物品のすべての貿易を規律し、輸出入にかかる関税およびそれと同等の効果を有する課徴金の構成国間における禁止ならびに第三国との関係における共通関税率の採択を内容とする、関税同盟を含む。

 2. 第30条および本編第2章の規定は、構成国原産の産品および構成国において自由流通している第三国を積出地とする産品に適用する。

第29条 (略)


第1章(関税同盟)

第30条 〔関税・課徴金の禁止〕 輸出入に対する関税および同等の効果を有する課徴金は、構成国間において禁止される。この禁止は、財政的性質の関税にも適用される。

第31条〜第33条 (略)


第3章(構成国間の数量制限の禁止)

第34条〔輸入数量制限の禁止〕 輸入に関する数量制限および同等の効果を有するすべての措置は、構成国間において禁止される。

第35条〔輸出数量制限の禁止〕 輸出についての数量制限、および同等の効果をもつすべての措置は、構成国間において禁止される。

第36条〔例外的許容〕 第34条および第35条の規定は、公衆道徳、公の秩序もしくは公共の安全、人間、動物もしくは植物の健康および生命の保護、芸術的、歴史的もしくは考古学的価値のある国宝の保護、または、工業的および商業的財産の保護を理由として正当化される輸出入品もしくは通過中の物品に対する禁止または制限を排除するものではない。ただし、このような禁止または制限は、恣意的な差別の手段または構成国間の貿易に対する擬装された制限となるものであってはならない。

第37条〜第44条 (略)


第4編(人、サービスおよび資本の自由移動)

第1章(労働者)

第45条〔労働者の自由移動〕1. 労働者の自由移動は、連合内において確保される。

 2. この自由移動は、雇用、報酬その他の労働および雇用条件に関して、構成国の労働者間の国籍に基づくあらゆる差別の撤廃を含む。

 3. 労働者の自由移動は、公の秩序、公共の安全または公衆衛生を理由として正当化される制限を条件として、次の権利を含む。

(a) 実際になされた雇用の提供を受諾する権利

(b) この目的のために構成国の領域を自由に移動する権利

(c) 法律、法令または行政行為により定められた構成国の国民の雇用を規律する規定に従い雇用の目的でその構成国に滞在する権利

(d) 委員会が作成する規則に定める条件に従い、一の構成国の領域内で雇用された後に、その構成国の領域に在留する権利

 4. 本条の規定は、公共サービスにおける雇用には適用されない。

第46条〜第48条(略)

第2章(開業・設立の権利)

第49条〔開業および設立の自由) 以下に定める規定の枠内において、いずれかの構成国の国民の他の構成国の領域における開業の自由に対する制限は、禁止される。このような禁止は、いずれかの構成国に居住する構成国の国民による代理店、支店または子会社の設立に対する制限にも適用される。

 開業の自由は、開業がなされる国の法律によりその国民に対して定められる条件の下で、資本に関する章の規定に服しつつ、自営業者としての活動を開始しかつこれに従事する権利ならびに企業、とくに第54条2の意味における会社を設立し、経営する権利を含む。

第50条〜第52条(略)

第53条〔自営業者のための資格等の相互承認〕 1. 自営業者としての活動を開始し従事することを容易にするために、欧州議会と理事会は、通常立法手続に従い、卒業証書、免許状および他の公式の資格証明の相互承認に対して、ならびに自営業者としての活動の開始および従事に関する構成国における法律、法令または行政行為により定められる規定の調整に関して、指令を定める。

 2. 医療およびそれに付随する職業ならびに薬剤業の場合には、その制限の漸進的廃止は、構成国によってさまざまに実施される就業条件が調整されるのに応じて達成される。

第54条〔会社に対する本章の適用〕加盟国の法律に基づいて設立され、かつ、定款上の本拠、経営管理の中心または主たる営業所を連合内に有する会社は、本章の適用上、構成国の国民である自然人と同様に取り扱われる。  (中略)

第55条(略)


第3章(サービス)

第56条〔サービスの自由〕 以下に定める規定の枠内において、連合内におけるサービス提供の自由に対する制限は、サービスの対象となる者がいる構成国とは異なる加盟国に居住している構成国国民との関係では、禁止される。

 欧州議会および理事会は、通常立法手続に従い、連合内において居住しサービスを提供する第三国の国民に対して、本章の規定の適用を拡大することができる。

第57条〜第66条 (略)


第5編(自由、安全および司法の領域)

第1章(一般規定)

第67条〔自由、安全および司法の領域の構築〕 1. 連合は、基本権ならびに加盟国の異なる法制度および伝統を尊重しつつ、自由、安全および司法の領域を構成する。

 2. 連合は、域内国境管理の撤廃を確保し、構成国間の連帯に基づき、第三国国民に対して、難民、移民および域外国境管理に関する公正な共通政策を形造る。本編の適用上、無国籍者は第三国国民として取り扱う。

 3. 連合は、犯罪、人種差別および外国人排斥を防止しかつそれらと闘うための措置、警察、司法機関および他の権限ある機関の間の調整と協力のための措置、ならびに、刑事分野における判決の相互承認および必要に応じて刑事法の平準化を通じて、高水準の治安を確保するために努力する。

 4. 連合は、とくに民事分野における裁判上および裁判外の決定の相互承認の原則を通じて、司法制度の利用を容易にする。

第68条〜第76条 (略)


第2章(国境管理、難民および移民に関する政策)

第77条〔国境管理の措置〕 1. 連合は、次の目的のために政策を展開する。

(a) 域内の国境を通過する際に、国籍を問わず、人に対する管理を撤廃することの確保

(b) 域外国境を通過する人に対する検問と効率的な監視の実施

(c) 域外国境に対する統合された管理制度の漸進的導入

 2.1の適用上、欧州議会および理事会は、通常立法手続に従い、次の事項に関する措置を採択する。

(a) 査証およびその他の短期滞在許可に関する共通政策

(b) 域外国境を通過する人を対象とする検問

(c) 第三国国民が連合内を短期間旅行する自由を享受する際の条件

(d) 域外国境に対する統合された管理制度の漸進的確立のために必要なあらゆる措置

(e) 国籍を問わず、域内の国境を通過する際の、人に対する管理の撤廃

 3. 連合による行動が第20条 2(a)に定める権利の行使を容易にするために必要であることが証明され、基本条約が必要な権限を定めていない場合には、理事会は、特別立法手続に従い、旅券、身分証明証、居住許可書または他の同様の公的文書に関する規定を採択することができる。理事会は、欧州議会と協議した後に、全会一致により決定する。

 4. 本条は、国際法に従った構成国国境の地理的境界画定に関する構成国の権限に影響を与えるものではない。

第78条〜第81条 (略)


第4章(刑事分野における司法協力)

第82条〔刑事分野における司法協力に関する措置〕 1. 連合内の刑事分野における司法協力は、判決および裁判所の決定の相互承認の原則に基づき、2および第83条に定める分野における構成国の法令の平準化を含む。

 欧州議会および理事会は、通常立法手続に従い、次の事項に関する措置を採択する。

(a) すべての形式の判決および裁判所の決定の連合全域における承認を確保するための規則および手続の確定

(b) 構成国間の管轄権抵触の防止および解決

(c) 裁判官および司法職員の研修の支援

(d) 刑事分野における訴訟手続および決定の執行に関する構成国の司法機関またはそれに相当する機関相互間の協力の促進

 2. 国際的側面を有する刑事分野における判決および司法決定の相互承認ならびに警察および司法協力を容易にするために必要な範囲において、欧州議会および理事会は、通常立法手続に従い、指令により最小限の法規を採択することができる。この法規は、構成国の法的伝統および制度の相違を考慮に入れるものとする。

 この法規は、次の事項を含む。

(a) 構成国間の証拠の相互承認

(b) 刑事手続における個人の権利

(c) 犯罪被害者の権利

(d) 理事会が決定により事前に明確にした刑事手続の他の特定の側面。決定の採択にあたっては、理事会は、欧州議会の同意を得た後に、全会一致により議決する。

 本項に定める最小限の法規の採択は、構成国が個人のより高水準の保護を維持しまたは導入することを妨げるものではない。

 3.(略)

第83条〜第84条 (略)

第85条〔欧州司法機構(Eurojust)〕 1. 欧州司法機構の任務は、2箇国以上の構成国に影響を与える重大犯罪または共通の基盤に基づく訴追を必要とする重大犯罪に関して国内の捜査および訴追機関相互間の調整と協力を支援し強化することにある。その際、欧州司法機構は、構成国の機関および欧州警察機関〔Europol〕により行われる活動および提供される情報を基礎とする。

 この目的のため、欧州議会と理事会は、通常立法手続に従って採択される規則を通じて、欧州司法機構の組織、運営、行動の範囲と任務を定める。この任務は、次の事項を含めることができる。

(a) 犯罪捜査、とくに連合の財政的利益に対する犯罪捜査の開始および国内管轄機関により行われる訴追の開始の提案

(b) (a)に定める捜査および訴追の調整

(c) 管轄権の抵触の解決および欧州司法網との緊密な協力を含む司法協力の強化

 これらの規則は、欧州議会および国内議会による欧州司法機構の活動の評価への関与についての取決めも定める。

 2.(略)

第86条(略)


第5章(警察協力)

第87条〔警察協力の構築〕 1. 連合は、刑事犯罪の防止、探知および捜査に関する警察、税関およびその他の専門的な法執行機関を含むすべての構成国の権限ある機関が関与する警察協力を構築する。

 2. 1の適用上、欧州議会と理事会は、通常立法手続に従い、次の事項に関する措置をとることができる。

(a) 関連する情報の収集、保管、処理、分析および交換

(b)職員の訓練の支援、職員の交流ならびに設備および犯罪探知研究に関する協力の支援

(c) 重大な形態の組織犯罪の探知に関する共同捜査技術

 3.(略)

第88条〔欧州警察機関(Europol)〕 1. 欧州警察機関の任務は、2以上の構成国に影響を与える重大犯罪、テロリズムおよび連合の政策により規律される共通利益に影響を与える犯罪形態を防止しかつそれと闘うにあたり、構成国の警察機関および他の法執行機関による行動ならびに相互協力を支援しかつ強化することにある。

 2.〜3.(略)

第89条〜第100条(略)


第7編(競争、税および法の接近に関する共通法規)

第1章(競争に関する法規)

第1節(事業者に適用される法規)

第101条〔競争阻害行為の禁止〕 1.構成国間の貿易に影響を及ぼすおそれがあり、かつ域内市場の競争を妨害し、制限しまたはわい曲することを目的とするかまたはそうした効果をもつ企業間のすべての合意、企業団体による決定および協調行動、およびとくに次の事項を含むものは、域内市場と両立しないものとして禁止される。

(a) 購入価格、販売価格またはその他の取引条件を直接的にまたは間接的に設定すること。

(b) 生産、販路、技術開発または投資を制限または統制すること。

(c) 市場または供給源を分割すること。

(d) 同等の取引に対して他の取引主体に異なる条件を適用し、取引主体を競争上不利にすること。

(e) 給付の内容または商慣習から契約の対象と関係しない追加的な給付を相手方が受諾することを契約の条件とすること。

 2. 本条に従って禁止される合意または決定は当然に無効となる。

 3. ただし、

−企業間の合意もしくはこれと同種の、

−企業団体が行う決定もしくはこれと同種のもの、または、

−協調行動もしくはこれと同種のもので、

 物品の生産もしくは販売の改善または技術もしくは経済進歩の促進に寄与し、同時に、消費者が結果として生じる利益の公正な配分を受けるものについては、それらが次の条件をみたす場合には、1の規定を、不適用と宣言することができる。

(a) 関連企業にこれらの目的の達成に不可欠ではない制限を課すものではないこと。

(b) 企業に問題となる産品の実質的な部分に関して競争を排除する可能性を与えるものではないこと。

第102条 〔支配的地位の濫用禁止〕 城内市場またはその主要な部分において支配的な地位にある1または2以上の企業によるその地位の濫用は、構成国間の貿易が影響を受けうる限りにおいて域内市場と両立しないものとして禁止される。

 とくにその濫用は、次のことを含む。

(a) 不公正な購入価格、販売価格またはその他の不公正な条件を直接または間接に課すこと。

(b) 生産、販路または技術開発を消費者に不利に制限すること。

(c) 同等の取引に対して他の取引主体に異なる条件を適用することにより取引主体を競争上不利にすること。

(d) その給付の内容または商慣習から契約の対象と関係しない追加的な給付を相手方が受諾することを契約の条件とすること。

第103条〔競争規則または指令の採択〕1. 第101条および第102条に定める諸原則を実施する適当な規則または指令が、委員会の提案に基づき、欧州議会と協議した後、理事会によって規定される。

 2. 1に定める規則または指令は、とくに次の目的をもつ。

(a) 罰金または強制金の導入により第101条1および第102条に定める禁止の遵守を確保すること。

(b)実効的な監視を確保する必要性と行政を可能な限り単純化する必要性の両方を考慮して、第101条3の適用に対する詳細な規定を定めること。

(c) 必要に応じて、経済の諸分野において、第101条および第102条の規定の範囲を明確にすること。

(d) 本項に定める規定の適用における委員会および欧州連合司法裁判所のそれぞれの機能を明確にすること。

(e) 国内法および本節に含まれる規定または本条に従って採択される規定との関係を定めること。

第104条〜第109条(略)


第2章(税に関する規定)

第110条〜第112条 (略)

第113条〔間接税等の調和〕 理事会は、特別立法手続に従い、欧州議会および経済社会評議会と協議した後に、売上税、消費税およびその他の間接税に関する法律の調和のための規定を、全会一致により採択する。ただし、そのような調和が域内市場の設立および運営ならびに競争のわい曲の回避を確保するのに必要な場合に限る。


第3章(法の平準化)

第114条〔構成国法の平準化〕 1. 基本条約に別段の定めがない限り、第26条に定める目的の達成のために、以下の規定が適用される。欧州議会および理事会は、通常立法手続に従い、経済社会評議会と協議した後に、加盟国において法律、法令または行政行為により定められる域内市場の設立と運営を対象とする規定の平準化のための措置を採択する。

 2. 1は、財政上の規定、人の自由移動に関する規定ならびに被雇用者の権利および利益に関する規定には適用されない。

 3. 委員会は、1に規定する健康、安全、環境保護および消費者保護に関する提案にあたって、とくに科学的事実を基礎にしたすべての新たな発展を考慮しつつ、高水準の保護をその基本とする。欧州議会と理事会は、同様にそれぞれの権限の枠内で、この目的の達成のために努力する。

4.〜10.(略)

第115条〜第118条 (略)


第8編(経済および金融政策)

第119条〔経済および金融政策分野の活動〕 1. 欧州連合条約第3条に定める目的のため、構成国および連合の活動は、基本条約に定めるところにより、構成国の経済政策の密接な調整、ならびに域内市場および共通の目的の定義に基づきかつ自由競争を伴う開放市場経済の原則に従って行われる経済政策の採択を含む。

 2. 前項の規定とともに、基本条約に定めるところによりかつ基本条約に定める手続に従い、これらの活動は、単一通貨ユーロならびに単一金融政策および為替政策の決定および実施を含む。これら2つの政策の主要な目的は、物価安定を維持し、かつこの目的を妨げることなく、連合における一般経済政策を自由競争を伴う開放市場経済の原則に従って支援することにある。

 3. 構成国および連合によるこれらの活動は、物価の安定、健全な公共財政および金融状況、ならびに持続可能な収支均衡という指導原則を遵守するものとする。


第1章(経済政策)

第120条〜第126条 (略)


第2章(金融政策)

第127条〔ESCBの目的と任務〕 1. 欧州中央銀行制度(以下 ESCB という)の主要な目的は、物価の安定を維持することにある。物価の安定という目的を妨げることなく、ESCB は、欧州連合条約第3条に定める連合の目的の達成に寄与するために、連合の一般経済政策を支援する。ESCBは、資源の効率的な配分を促進する自由競争を伴った開放市場経済の原則に従い、かつ第119条に定める原則を遵守して行動する。

 2. ESCB を通じて遂行される基本的任務は、次のとおりである。

−連合の通貨政策の決定と実施

−第219条の規定に合致する外国為替の操作

−加盟国の公的外貨準備の保持と運用

−支払制度の円滑な運用の促進

 3.2第3段は、加盟国政府による外国為替操作の均衡の保持と運用を妨げるものであってはならない。

 4. 欧州中央銀行は、次に掲げる協議を受ける。

−その権限内にあるすべての連合行為の提案

−第129条4に定める手続に従い理事会により定められた制限および条件の下で、欧州中央銀行の権限内にある立法規定の草案に関する国内機関との協議

 欧州中央銀行は、その権限内にある事項に関して、適当な連合の機関もしくは組織または国内機関に対して意見を提出することができる。

 5. ESCB は、信用供与機関の金融監督および金融制度の安定に関して、権限ある機関により遂行される円滑な政策遂行に寄与する。

 6. 理事会は、特別立法手続に従い、規則により、欧州議会および欧州中央銀行と協議した後に、信用供与機関の金融監督および保険事業者を除くその他の金融機関に関する政策について、全会一致により欧州中央銀行に特別な任務を委任することができる。

第128条〜第204条 (略)


  第5部(連合の対外行動)


第1編(連合の対外行動に関する一般規定)

第205条 (略)


第2編(共通通商政策)

第206条〔関税同盟と通商政策〕 連合は、第28条から第32条に従い関税同盟を設立することにより、共通の利益に応じて、世界貿易の調和のとれた発展、国際貿易および外国投資の制限の漸進的な撤廃、ならびに関税および他の障壁の引下げに貢献する。

第207条〔共通通商政策〕 1. 共通通商政策は、とくに関税率の変更、物品およびサービスの貿易に関する関税および貿易協定の締結、知的財産の商業的側面、対外直接投資、自由化措置の統一の達成、輸出政策ならびにダンピングまたは補助金に関してとるべき措置を含む貿易上の保護措置に関して、統一的な諸原則に基礎を置く。共通通商政策は、連合の対外行動の原則と目的の文脈の中で実施される。

 2. 欧州議会と理事会は、通常立法手続に従い、規則により、共通通商政策を実施する枠組みを定める措置を採択する。

 3. 1もしくは2以上の第三国または国際組織と協定が交渉され締結されることが必要な場合には、本条の特別規定に従い、第218条が適用される。

 委員会は、理事会に勧告し、理事会は委員会が必要な交渉を開始することを許可する。理事会および委員会は、交渉される協定が連合の対内政策および規則と両立することを確保する責任を負う。

 委員会は、理事会がこの任務に関して委員会を補佐するために任命した特別委員会と協議し、かつ、理事会が定めることができる指令の範囲内でこの交渉を行う。委員会は、交渉の進展に関して、特別委員会および欧州議会に定期的に報告する。

 4. 3に定める協定の交渉および輝結に関して、理事会は特別多数決で決定する。

 サービス貿易および知的財産の貿易的側面ならびに外国直接投資の分野における協定の交渉と締結にあたっては、理事会は、その協定が内部規則の採択に全会一致を必要とする規定を含む場合には全会一致によって決定する。

 理事会は、次の分野における協定の交渉および締結に関しても、全会一致により決定する。

(a) これらの協定が連合の文化的および言語的多様性を危うくするおそれのある文化的および音響映像的サービスの貿易の分野

(b) これらの協定により、当該サービスの国内組織が著しく阻害され、かつサービスを供給する加盟国の責任が害される重大な危険性のある社会的、教育的および健康的サービス貿易の分野

 5. 運輸の分野における国際協定の交渉および締結は、第3部第4編および第218条に従う。

 6. 共通通商政策の分野において本条により付与される権限の行使は、連合と加盟国の間の権限配分に影響を与えず、また、基本条約が調和を排除している限り、構成国の立法規定または規制規定の調和に導くものであってはならない。

第208条〜第358条(略)