データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] キューバ危機:ケネディ大統領全米放送

[場所] 
[年月日] 1962年10月22日
[出典] 現代国際政治の基本文書,一般財団法人鹿島平和研究所編,原書房,489-493頁
[備考] 
[全文] 

 アメリカ国民諸君−−

 本政府は、かねて約束したとおり、キューバ島におけるソ連の軍事力増強に対し最も厳重な監視を続けてきた。過去1週間以内に、明白な証拠によって、一連の攻撃用ミサイル基地が現在、あの監禁された島キューバに準備されているという事実が確証された。これらの基地の目的は、西半球に対する核攻撃力を確保すること以外の何ものでもありえない。

 去る16日午前9時、この種の最初の予備的な確報を受け取ると同時に、私はわが方の監視を一段と強化するよう指令した。そして今やこの証拠を確認し、それに対するわれわれの評価を完了し、とるべき措置を決定し終わったので本政府は国民諸君に対し、この新しい危機について十分詳細に報告する義務があると感じている。

 これら新ミサイル基地の特徴はそれが二つの別種の施設から成っていることを示している。そのうちの幾つかは、1000海里以上の距離に核弾頭を運ぶことのできる中距離弾道ミサイルを含んでいる。要するに、これらのミサイルはそれぞれ、首都ワシントン、パナマ運河、ケープカナベラル、メキシコシティ、その他アメリカ南東部、中央アメリカあるいはカリブ海地域のどんな都市をも攻撃する能力を持っているのである。

 まだ完成していない他の基地はその2倍以上の射程を持つ。したがって、北はカナダのハドソン湾から、南はペルーのリマに至る西半球の主要都市の大半を攻撃することのできる中距離弾道ミサイル用のものと思われる。そのうえ、核兵器を運ぶことのできるジェット爆撃機が目下キューバで荷ほどきされ、組み立てられており、そのために必要な空軍基地も準備されつつある。

 これら明らかに攻擊的な大型、長距離、即時大量破壊兵器の存在によって、キューバが急速に重要な戦略基地に変貌しつつあることは、1947年のリオ条約、わが国と西半球の伝統、第87議会の共同決議、国連憲章および9月4日、13日の両日私がソ連に対して行なった公式の警告を重大かつ故意に無視したものである、全米州国家の平和と安全に対する明白な脅威である。こうした措置はまた、ソ連スポークスマンが公式および非公式に再三行なった保証、すなわちキューバの軍備増強は当初の防衛的性格を維持するとの保証、またソ連は他国の領土に戦略ミサイルを配置する必要も願望も持っていないと再三繰り返してきた保証に反するものである。

   (中略)

 従って、アメリカ自体の安全と西半球全体の安全を防衛するために、また憲法が私に与える権限、議会の決議によって裏打ちされた権限に基づいて、私は次の第一段措置を即時取るよう命じた。

第一−−この攻撃力増強を阻止するため、キューバ向け輸送途上にあるいっさいの攻撃的軍事装備に対し、厳重な禁制措置をとり始めた。キューバ向け船舶は、国籍、出発港を問わず攻撃的武器を積んでいることが判明した場合はすべて引き返させる。この禁制措置は、必要があれば他の積み荷や輸送手段にも及ぼすであろう。しかし、現在の段階では、かつてソ連が1948年のベルリン封鎖の際に企てたように、生活必需品の輸送まで止めることはしない。

第二−−私はキューバとその軍事力増強を引きつづき、いっそう厳重に監視するよう指令した。米州機構(OAS)加盟諸国外相は10月6日コミュニケで、西半球におけるこうした事柄については秘密にしないむね声明した。もしこのような攻撃的な軍事的準備が続けられて、その結果西半球に対する脅威がさらに高まるようなことがあれば、さらに新たな措置が当然必要となろう。私はアメリカ軍に対し、いかなる不測の事態に対しても備えるよう命令した。だが私は、キューバ国民ならびにこれらの基地にいるソ連技術者のためこのような脅威を統けてゆくことから全関係者にどんな危険が及ぶかということを十分認識してもらえると思う。

第三−−アメリカはもし西半球のいずれかの国に対してキューバから核ミサイルが発射されたならば、これをソ連によるアメリカ攻撃−−ソ連に対して全面的報復措置を行なうべき攻撃−−とみなす方針である。

第四−−必要な軍事的警戒措置として、グアンタナモのアメリカ軍基地のアメリカ軍要員家族を本日引き揚げさせ、さらに多くの部隊に警戒待機態勢を命じた。

第五−−西半球の安全に対するこの脅威を検討し、あらゆる必要措置を支持するリオ条約第6条および第8条を発動するため、米州機構の即時招集を今夜要請する。国連憲章は地域的安全保障措置を認めており、また西半球諸国はずっと前に外部勢力軍隊の西半球駐留に反対する決議を行なっている。全世界の他のすべてのわが同盟諸国にも警告が発せられた。

第六−−国連憲章に基づき、われわれは今夜、安全保障理事会に対し、遅滞なく緊急会議を招集、世界平和に対する最近のソ連の脅威に対し措置を講ずるよう要請する。その際、われわれは国連オブザーバーの監視のもとに、キューバにあるすべての攻撃兵器を直ちに解体、撤収するよう要求し、それが実施されないうちは禁制措置を解除しないむね明らかにした決議案を提出するつもりである。

第七−−そして最後に、私はフルシチョフ首相に対し世界平和と安定した両国関係に対するこのような秘密、無謀、挑発的な脅威をやめ、排除するよう要求する。さらにまた、このような世界支配政策を放棄し、危険な軍備競争を終わらせ、人類の歴史を一変させるための歴史的努力に参加するよう要求する。フルシチョフ首相にとつて、今は−−ソ連は自国領土外にミサイルを置く必要はないというソ連政府自身の言明に立ち戻って、キューバからそれらの兵器を撤収することにより−−現在の危機を拡大、深刻化させるいかなる措置をも差し控えることにより−−さらに平和的かつ恒久的な解決策の探求に加わることによって世界を破滅の地獄から引き戻す好機である。

   (後略)