データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] キューバ危機:フルシチョフ首相発ケネディ大統領宛書簡

[場所] 
[年月日] 1962年10月27日
[出典] 現代国際関係の基本文書(上),一般財団法人鹿島平和研究所編,日本評論社,494-496頁
[備考] 
[全文] 

 親愛なる大統領閣下

   (前略)

 あなたはキューバのことで心配しておられます。キューバを心配するのは、キューバがアメリカの海岸から海を隔てて90マイルのところにあるからだ、とあなたは言われています。しかし、トルコはわが国の隣にあり、両国の歩哨が巡視しており、お互いに見張りをしています。あなたは、自国の安全保障と、あなたが攻撃的と称している兵器の撤去を要求する権利をもっているが、われわれにはその権利を認めないと考えているのでしょうか。文字どおり、わが国のすぐ隣のトルコに、あなたが攻撃的と称する破壊的なロケット兵器をあなたたちは配置しているではありませんか。そこで、軍事面におけるわれわれの平等な可能性を認めることと、われわれ両大国間のこのような不平等な関係とは、どのように一致するのでしょうか。それはどうしても一致させることが不可能です。

   (中略)

 わたしは、紛争を早急に終らせ、事態を正常化させうると考えており、そうなれば、責任ある政治家たちがまじめな精神と自分の責任感、そして複雑な諸問題を解決し事態を戦争の惨禍にまで持ち込まないようにする能力を持ち合わせていることを知って、人びとは安堵の息をつくでしょう。

 わたしは次の提案をします。われわれは、あなたが攻撃的兵器とみなしている兵器をキューバから撤去することに同意します。われわれは、それを実行しその責任を負うことについて、国運で声明することに同意します。あなたがたの側では、アメリカがソビエト国家の心配と懸念を考慮してトルコから同様な兵器を引き揚げるという声明をすることになります。これを実行するため、あなたがたにとって、またわれわれにとって、いつがよいかについて話し合おうではありませんか。その後には、国連安保理事会の代表がこの責任の履行を現地で監視することもで

きるでしょう。もちろん、この権限をもった人物がキューバとトルコに入って、双方が負ったこの責任の履行を点検することを、キューバ政府とトルコ政府が許可することが必要です。おそらく、この権限をもった人物が安保理事会の責任とわれわれ両国−アメリカとソ連−の信任を受け、またトルコとキューバの信任を受けるならば、なおさらよいことでしょう。わたしは、すべての当事国側の信任と尊敬を受けるような人物を選ぶことが、おそらく難しいことではないだろうと考えます。

 われわれは、キューバとトルコの両国人民に満足と希望を与え、自国の安全に対する両国の確信を強めるために、この責任を負うとともに、安保理事会においてソ連政府がトルコ国境の不可侵と主権を尊重し、その内政に干渉せず、トルコを侵略せず、そのような侵略のための橋頭堡として自国領土を利用せず、またソ連領からも、トルコと隣接する他の国の領土からもトルコに対して侵略をしかけようと考える者を押し止めるということを、厳かに約束すると声明するでしょう。

 アメリカもキューバについて同じような声明を安保理事会で行うこととなります。アメリカ政府は、アメリカがキューバ国境の不可侵とその主権を尊重し、その内政に干渉せず、自ら侵略を行わず、自国領土をキューバ侵略のための橋頭堡として利用しないという義務を負い、さらにアメリカ領からも、またキューバに隣接する他の国の領土からも、キューバに侵略をしかけようと考える者を押し止める、と声明することです。

   (後略)

N.フルシチョフ