データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 労働者・農民・公務員・科学者・芸術家、その他全ての人々のための二千語(プラハの春:二千語宣言)

[場所] 
[年月日] 1968年6月27日
[出典] 現代国際政治の基本文書,一般財団法人鹿島平和研究所編,原書房,787-791頁
[備考] 
[全文] 

   (前略)

 しかし、われわれはこの希望の時に諸君に呼びかける―まだこの希望は脅かされている。われわれの多くが発言できるのだと信じ込めるまでには何ヵ月もの時間がかかった。そして多くの人々はなおこれを信じられないでいる。それにもかかわらず、われわれは発言した。そしてわれわれはこの政権に人間性を回復させるというわれわれの目標を何とかして完成しなければならないことを多くの事実が示している。さもなければ古い勢力の報復は残酷なものとなるであろう。われわれはこれまでただ待つだけであった人々を主としてあてにしている。いま訪れようとしている時期は、将来長年にわたり決定的な意義を持つことになろう。

   (中略)

 われわれ一人一人が独自の結論を下す責任をとらなければならない。共通の合意を見た結論というものは、討議を通じて初めて可能となるものであり、そのためには表現の自由を必要としている。そして実際のところ、表現の自由だけが今年にはいってからの民主化の成果なのである。

 今後われわれはイニシアチブと決意とを示さなければならない。

 共産党をのぞき、あるいは共産党に反対して、何らかの民主主義の復活が可能だと考えるような考え方が出てきたとしたら、それには反対しなければならない。それは正しくないし、非合理的でもある。共産党員は出来上がった組織を持っており、われわれは共産党内の進歩派を支持すべきである。彼らは経験ある事務官を擁しているし、その手中に決定権を持っていることもまた確かである。彼らの行動計画は大衆に提示されている。それは最大の不平等の調整に手を染めようとする計画で、他の誰もそのような具体的計画は持っていない。

 われわれは各地区、各地域社会でそれぞれの行動計画が提示されることを要求しなければならない。ここでもわれわれは、ごくあたり前の長い間待たれていた措置を突然とることになるだろう。チェコ共産党は、新しい中央委を選出する大会の準備を整えている。中央委が現在の中央委よりもよいものとなるよう要求しようではないか。もし共産党が、将来においては力によらず、市民の信託をその指導的立場の基礎にしようというのであるならば、われわれは現地各支部会議に代表として派遣されている人々を信頼できるかぎり、これを信用しようではないか。

 民主化の過程が中止されるのではないかとの懸念が最近表明されている。このような感じ方は、困難な時期に直面したための疲労の現われである。一つは、アッというような真相暴露、高官の辞任、これまでになかった大胆な発言の魅力が薄れてきたためである。しかしながら、各勢力間の闘争がある程度蔭に隠れてきただけのことである。現在、法の内容と実施について、今後とるべき実際的な措置について戦いが行なわれている。それにわれわれは、新しい人々、閣僚、検事、議長、書記に仕事をする時間を与えなければならない。彼らはよい仕事ができるか、できないかを実証するためにも、この時間を与えられる権利がある。その他には、今のところ中央政治機関に多くを望むことはできない。

   (中略)

 もし現状において現在の中央政治機関からこれ以上のことを望めないのであれば、われわれは各地区で、そして共産党員について、もっと多くのことをしなければならない。権力を濫用し、公共の財産を傷つけ、不正直あるいは残酷な行為をした人々の辞任を要求しよう。われわれは、たとえば公開の批判、決議、デモ、職場での示威行動、餞別募金、ストライキ、戸別のピケなど、彼らを辞めさせる方法を見つけ出さなければならない。

 しかしながら、アレクサンデル・ドゥプチェクに対して同じ方法が用いられるのを防ぐため、非合法な、卑劣な、ないしは粗野な手段をとるのは控えよう。

 われわれは、軽蔑的な手紙を書くことに全面的に反対しており、今後もし彼らがそのような手紙を受け取ったとしたら、彼ら自身が発送したものと考えて貰ってさしつかえない。われわれは、国民戦線の活動を復活しなければならない。国民委員会の公開会議の開催を要求しよう。誰も(公職者)が知ろうとしないことについては特別市民委員会をつくろう。それは簡単である。少数の人が集まり、議長を選び、きちんとした議事録をつくり、見解を公表し、解決を要求し、誰にもおどされないようにすればよい。

 公式見解の代弁者になり下がっている地方の新聞を改め、すべての積極的な勢力の討論の場にしよう。国民戦線の代表によって構成される編集委員会の設置を要求しよう。あるいは新たな新聞をつくり出そう。表現の自由を守る委員会を設置しよう。われわれの集会の中に特務部を設置しよう。もしおかしなニュースを耳にしたら、これをチェックしよう。関係者のところに代表を送り、その返事を木にでも打ちつけて公表しよう。検察当局が本当の犯罪活動を取り締まっているときは、これに協力しよう。われわれは無政府状態とか全般的な不安状態をつくり出そうとしているのではない。政治問題についての執念深さはやめよう。密告者たちは暴露しよう。

   (中略)

 外国勢力がわれわれの国内問題に干渉する可能性について、最近大きな憂慮が示されている。

 これらの優勢な力に直面した場合、われわれとしてできる唯一の手は、おとなしく自分自身を守り、挑発しないことである。われわれは政府に対し、必要とあれば武器をとってでも、政府がわれわれの与えた命令に沿って行動するかぎり、これを支持することを約束できる。またわれわれは同盟国に対し、同盟、友好、貿易取り決めを守ることを約束できる。感情的な非難や潜行した疑惑はわれわれの政府の立場をより難しくするものであり、何の役にも立たない。

 いずれにせよ、われわれが他国との平等な立場を保ち得る方法は、国内をまず固め、これらの関係を確立し、維持するに十分な勇気と名誉と政治的な英知を備えた政治家をいつの日か選べるようにするため、復活の過程を進めてゆく他はない。ついでだが、これは世界のあらゆる小国のあらゆる政府にとっての共通問題である。

 今年の春は、戦争が終わったときのように、再びわれわれに大きな機会が与えられた。再びわれわれは、共通の目標をわれわれの手の中に取り戻す可能性を手に入れた。これは実際問題としてわれわれが社会主義と呼ぶものであり、かつてのわれわれのよい評判と、われわれ自身に対する比較的よい評価とによりふさわしい形をそれに与えることができるであろう。春は今終わり、二度と帰ってこない。冬にはすべてが分かるだろう。

 これをもって労働者、農民、官吏、芸術家、科学者、技術者ならびにすべての人々に対するわれわれの呼びかけを終わる。これは学者と科学者たちの提案により書かれたものである。