データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] グアムにおけるニクソン大統領記者会見(グアム・ドクトリン)

[場所] 
[年月日] 1969年7月25日
[出典] 現代国際関係の基本文書(上),一般財団法人鹿島平和研究所編,日本評論社,496-499頁
[備考] 
[全文] 

 大統領冒頭発言

   (前略)

 米国は、そう遠くない将来、誰もいつとは言えないが、しかしそう遠くない将来に、一つの重要な決定を迫られるだろう。それは、ベトナム戦争終結後、アジア太平洋における米国の役割りは何かという決定だ。我々はその決定を迫られるだろうが、アジア諸国もその決定がどうなるだろうかと知りたがっている。

   (中略)

 この決定は戦争が終わるに従って勿論なされねばならない。しかしその決定に至る考え方を練り上げる時は今である。私は、アメリカの外交政策の弱点の一つは、出来事が起るとあまりにもしばしば慌しく反応することだと思う。有効な政策に必須なことは、広い視野と長期的な視点である。

 私が見るに、ベトナム戦争は、我々もよく知っているように、非常に挫折感のあるものであった。この挫折感の結果として多くの米国人の間に「この戦争が済んだらもうアジアには係わらないようにしよう」という傾向があるが、それにもかかわらず、私はアジアにおいて他の戦争に巻き込まれない方法は、米国が意味のある役割を演じ続けることだと確信している。

   (中略)

 しかし我々の役割りということに関して言えば、アジアの諸国を我々にあまりにも依存させることによって我々が現在ベトナムで経験しているような紛争に引き込まれていくことになるような政策は避けなければいけない。

   (中略)

質問:大統領閣下、アジアにおける米国の軍事関係の問題について、ある仮定上の質問をしたい。すなわち、もし我々と緊密な軍事関係がある国、それが SEATO であれベトナムであれ、その国の指導者が「さて、あなたはベトナムから兵を引き上げようとしています、そのように新聞に書いてありますよ。アジアでの安全保障の手はずに関しあなたが望んでいるような意味のある役割りを果たし続けるということを我々はどうしたらわかるのでしょうか」この質問にあなたはいかなるアプローチを取りうるのか。

大統領:その質問についての解答は易しいものではないと既に述べた。易しくない、なぜなら、もしある国が国内外の脅威に対処するために米国の軍事援助を求めた場合、我々はその援助を供与すると答える誘惑に強く駆られるだろうからだ。

 しかし私は、我々のアジアの友人たちとの関係において、米国は次の二点を強く強調するようなときが来たのだと思う。第一に、例えば SEATO 下にあるタイの場合のように条約上の約束は守るということである。しかし第二に、国内の安全確保の問題に関して、軍事的な防衛の問題に限っていえば、核兵器が係わる大国の脅威がある場合を除いて、米国は、問題がアジア諸国それ自身によってだんだん対処され、その責任を負うことを奨励するし、また期待する権利を持つということである。

 ついでながら、私が過去数ヶ月間に何人かのアジアの指導者と行なった予備的な話し合いでは、彼らはこの責任を喜んで取るとのことであった。それは簡単なことではない。しかし、もし米国が、これら諸国に国内・国外の間題が生じた際の援助の要請に応え続けていくとしたら、これら諸国はいつまでたっても自分で自分の問題を処理することができないだろう。

 また、我々がアジアの集団安全保障について話すとき、それはこの時点では弱い芦のように見えることに私は気がついたことも付け加えたい。現在ではそうだ。しかし将来を見据えた場合、私が今話しているのは現在から5年後、10年後のことだが、私は、一国の国内的な脅威に対処する限り,または核兵器国によってもたらされる脅威以外の脅威に対処する限りのものとして集団安全保障を考えている。私はこれが自由なアジアの国、独立したアジアの国が求め、そして米国が支援すべき日標だと信じている。

   (後略)