データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 欧州連合に関する条約(EU設立条約,マーストリヒト条約)

[場所] 
[年月日] 1992年2月7日
[出典] 現代国際政治の基本文書,一般財団法人鹿島平和研究所編,原書房,729-758頁
[備考] 署名:1992年2月7日,最終改正:2007年12月13日(リスボン条約)
[全文] 

前文(略)

  第1編(共通規定)

第1条〔欧州連合の設立〕 締約国は、この条約により、締約国間に欧州連合(以下「連合」という)を設立し、構成国が共通に有する目的を達成するため、連合に諸権限を与える。

 この条約は、欧州の諸国民の間に一層緊密な連合を創設する過程の新たな段階を画するものであり、この連合においては、できる限り市民に開かれ、かつ近いところで決定が行われる。

 連合は、この条約及び欧州連合の運営に関する条約(以下これらを「基本条約」という)に基づいて設立する。これらの2つの基本条約は、同一の法的価値を有するものとする。連合は、欧州共同体にとって代わり、それを承継する。

第2条〔価値〕 連合は、人間の尊厳の尊重、自由、民主主義、平等、法の支配、人権(少数者に属する人の権利を含む)の尊重という諸価値に基礎を置く。これらの諸価値は、多元主義、非差別、寛容、正義、連帯および男女の平等が広く受け入れられた社会をもつ構成国に共通のものである。

第3条〔目的〕 1.連合の目的は、平和、連合の諸価値及び連合の諸人民の福祉を促進することにある。

 2.連合は、連合市民に域内境界のない、自由、安全及び正義の地域を提供する。そこにおいては、域外国境の管理、庇護、移住及び犯罪の防止と撲滅に関する適切な措置と相まって、人の自由移動を保証する。

 3.連合は、単一の域内市場を設立する。連合は、均衡のとれた経済成長及び価格の安定、完全雇用及び社会発展を目指す高度に競争的な社会的市場経済、並びに高度の環境保護及び環境の質の改善に基づく欧州の持続的発展のために活動する。連合は、科学的及び技術的進歩を促進する。

 連合は、社会的排除及び差別と闘い、社会的な正義及び保護、男女間の平等、世代間の連帯、並びに児童の権利の保護を促進する。

 連合は、構成国間の経済的、社会的及び領域的結合並びに連帯を促進する。

 連合は、その豊かな文化的及び言語的多様性を尊重し、欧州の文化的遺産が保護され発展することを確保する。

 4.連合は、ユーロを通貨とする経済通貨同盟を設立する。

 5.連合は、外の世界との関係では、連合の諸価値及び利益を支持し及び促進し、並びに連合市民の保護に寄与する。連合は、平和、安全、地球の持続可能な発展、諸人民の間における連帯及び相互尊重、自由かつ公正な貿易、貧困の根絶、人権とりわけ児童の権利の保護、並びに国際法の厳格な遵守及び発展(国際連合憲章の諸原則の尊重を含む)に寄与する。

 6.連合は、基本条約においてみずからに付与された権限に応じた適切な手段により、その目的を追求する。

第4条〔基本原則〕 1.第5条に従って、基本条約により連合に付与されていない権限は、引続き構成国に存する。

 2.連合は、基本条約の前における構成国の平等、並びに、構成国の政治的及び憲法的基礎構造(地方自治を含む)に内在するその国民的一体性を尊重する。連合は、国家の領土保全の確保、法と秩序の維持及び国家安全保障の保護を含む、構成国の本質的な国家機能を尊重する。とりわけ、国家安全保障は、もっぱら各構成国の責任である。

 3.誠実な協力の原則に従い、連合及び構成国は、相互に十分尊重し合いながら、基本条約から生ずる任務の実施において互いに援助しあうものとする。

 構成国は、基本条約及び連合機関の行為から生ずる義務の履行を確保するため、一般的又は個別的なすべての適当な措置をとる。

 構成国は、連合の任務の達成を促進することとし、連合の目的の達成を脅かすいかなる措置をも慎まなければならない。

第5条〔行動原則〕 1.連合の権限の限界は、権限付与の原則により規律される。連合の権限の行使は、補完性の原則及び比例性の原則により規律される。

 2.連合は、権限付与の原則に差づいて、基本条約に定める目的を達成するために基本条約において構成国が付与した権限の限界内においてのみ行動する。基本条約により連合に付与されていない権限は、引続き構成国に存する。

 3.連合は、補完性原則に基づいて、その排他的権限に属しない分野においては、提案された行動の目的が中央政府であれ地方政府であれ構成国によっては十分に達成できず、提案された行動の規模又は効果の点からいって連合により一層良く達成できる場合にのみ、かつその限りにおいて行動する。

 連合の機関は、補完性原則及び比例性原則の適用に関する議定書に定めるように、補完性原則を適用する。各国議会は、同議定書に定める手続に従って補完性原則の遵守を確保する。

 4.比例性原則に基づいて、連合の行動の内容及び形式は、基本条約の目的を達成するために必要な限度を超えてはならない。

 連合の機関は、補完性原則及び比例性原則の適用に関する議定書に定めるように、比例性原則を適用する。

第6条〔基本権の尊重〕 1.連合は、2007年12月12日にストラスブールで調整された2000年12月7日の欧州連合基本権憲章に定める権利、自由及び原則を承認する。同憲章は、基本条約と同一の法的価値を有する。

 同憲章の規定は、基本条約に規定する連合の権限をいかなる意味でも拡大するものではない。

 同憲章上の権利、自由及び原則は、その解釈及び適用を規律する憲章第7編の規定に従い、憲章にいう説明であってこれらの規定の淵源を述べたものに適正な考慮を払って解釈されなければならない。

 2.連合は、人権及び基本的自由の保護のための欧州条約に加入する。この加入は、基本条約に定める連合の権限に影響を及ぼすものではない。

 3.人権及び基本的自由の保護のための欧州条約により保障され、かつ構成国に共通の憲法的伝統に由来する基本権は、連合の法の一般原則を構成する。

第7条〔制裁〕 1.理事会は、構成国の3分の1、欧州議会又は欧州委員会による理由を付した提案に基づき、欧州議会の同意を得た後、その構成員の5分の4の多数決により、構成国による第2条にいう価値の重大な違反が生じる明白な危険があることを認定する。このような認定を行う前に、理事会は、当該構成国から事情を聴取しなければならず、また、同様の手続に従って当該国に勧告を行うことができる。

 理事会は、このような認定がなされた根拠が継続して妥当していることを定期的に検証する。

 2.欧州理事会は、構成国の3分の1又は欧州委員会の提案に基づき、欧州議会の同意を得た後、当該構成国政府の意見の提出を勧誘した後に、金会一致によって、当該構成国による第2条にいう価値に対する重大かつ継続的な違反の存在を認定することができる。

 3.2に基づいて認定が行われた場合、理事会は、当該構成国に対する基本条約の適用から生ずる一定の権利(理事会における当該構成国政府代表の投票権を含む)の停止を特定多数決によって、決定することができる。その場合、理事会は、かかる停止が自然人及び法人の権利義務に及ぼす影響を考慮しなければならない。

 この条約に基づく当該構成国の義務は、いかなる場合においても、当該国を引続き拘束する。

 4.理事会は、その後、当該措置を課す原因となった状況の変化に対応して、特定多数決によって3に基づいてとられた措置の変更又は撤回を決定することができる。

 5.この条の適用にあたって、欧州議会、欧州理事会及び理事会に適用する票決に関する取決めは、欧州連合の運営に関する条約第354条に定める。

第8条〔隣接諸国との関係〕 1.連合は、連合の価値に基づく繁栄と善隣の地域であって、協力を基礎とする緊密かつ平和的関係の性格を有するものの設立を目指して、隣接諸国との特別の関係を発展させる。

 2.1の目的のために、連合は当該諸国と特別の協定を締結することができる。この協定においては、相互的権利義務並びに共同の行動の実施可能性を規定することができる。この協定の実施は、定期的協議の対象とする。


  第2編(民主主義原則に関する規定)

第9条〔連合市民〕 連合は、そのすべての活動において、連合市民の平等の原則を遵守する。連合市民は、連合の機関、補助機関、部局及び外局により平等に注意を払われる。構成国の国民はすべて、連合の市民である。連合市民権は、各国の市民権に付加して認められるものであり、それに取って代わるものではない。

第10条〔連合の民主主義〕 1.連合の運営は、代議制民主主義に基礎をおく。

 2.市民は、連合においては、欧州議会により直接に代表される。

 構成国は、欧州理事会においては国家元首又は政府の長により、理事会においては政府により代表され、政府はそれ自体各国議会又は各国市民に対して民主主義的に責任を負う。

 3.すべての市民は、連合の民主主義的生活に参加する権利を有する。決定は、できる限り市民に開かれ、かつ近いところでなされなければならない。

 4.欧州規模における政党は、欧州の政治意識の形成及び連合市民の意思の表明に寄与する。

第11条〔市民の直接的権利〕 1.連合の機関は、適当な手段により、連合の行動のすべての領域において市民及びその代表組織の意見を周知させ、公に交換する機会を彼らに提供する。

 2.連合の機関は、代表組織及び前民社会との公開で、透明で定期的な対話を維持する。

 3.欧州委員会は、連合の行動が一貫しており整合的で透明であることを確保するため、関係者と広範な協議を実施する。

 4.相当数の構成国の国民を含む100万人以上の市民は、欧州委員会が、その権能の枠組内で、基本条約を実施するため連合の法的行為が必要であると市民が考える事項についての適当な提案を提出するよう、発議することができる。

 こうした市民の発議に必要な手続及び条件は、欧州連合の運営に関する条約第24条第1段に従って定められる。

第12条〔各国議会の役割〕 各国議会は、次のことにより連合の適正な運営に能動的に寄与する。

(a)欧州連合における各国議会の役割に関する議定書に従って、連合機関により情報を与えられ、かつ立法行為の草案を通知されること

(b)補完性原則及び比例制原則の適用に関する議定書に規定する手続に従って、補完性原則が尊重されるよう注意を払われること

(c)自由、安全及び正義の地域の枠組内で、欧州連合の運営に関する条約第70条に従って、この地域の連合政策の実施メカニズムの評価に参加すること、並びに、同条約第88条及び85条に従って、ユーロポールの政治的監視及びユーロジャストの活動の評価に関わること

(d)この条約第48条に従って、基本条約の改正手続に参加すること

(e)この条約第49条に従って、連合への加盟申請を通知されること

(f)欧州連合における各国議会の役割に関する議定書に従って、各国議会の間における、また欧州議会との間における議会間協力に参加すること。


  第3編(機関に関する規定)

第13条〔機関〕 1.連合は、連合の価値の促進をめざし、連合の目的を前進させ、連合の利益、市民の利益及び構成国の利益に仕え、並びに連合の政策及び行動の一貫性、実効性及び継続性を確保する組織的枠組みを有する。

 連合の機関は、次の通りである。

−欧州議会

−欧州理事会

−理事会

−欧州委員会(以下、委員会という)

−欧州連合司法裁判所

−欧州中央銀行

−会計検査院

 2.各機関は、基本条約で与えられた権限の範囲内で、かつ基本条約で定められた手続、条件及び目的に従って、行動する。機関は、相互に誠実な協力を実践する。

 3.欧州中央銀行及び会計検査院に関する規定並びに他の機関に関する詳細な規定は、欧州連合の運営に関する条約で定める。

 4.欧州議会、理事会及び委員会は、諮問機関としての資格で行動する経済社会評議会及び地域評議会により補佐される。

第14条〔欧州議会〕 1.欧州議会は、理事会と共同して、立法機能及び予算に関する機能を果たす。欧州議会は、基本条約に規定するように政治的監督及び協議の機能を果たす。欧州議会は、委員会の委員長を選挙する。

 2.欧州議会は、連合市民の代表により構成される。この代表は、一人の議長のほか、750名を超えないものとする。市民の代表は、構成国について逓減的に比例的なものとし、最小6名とする。いかなる構成国も96を超える議席を配分されない。

 欧州理事会は、欧州議会の発議によりかつその同意を得て、欧州議会の構成を定める決定であって、前段にいう原則を尊重するものを全会一致で採択する。

 3.欧州議会の議員は、自由かつ秘密投票による直接普通選挙により、5年の任期で選挙される。

 4.欧州議会は、その議員の中から、議長及び役員を選挙する。

第15条〔欧州理事会〕 1.欧州理事会は、連合に対してその発展のために必要な刺激を与え、また連合の一般的な政策指針及び優先順位を定める。欧州理事会は、立法に関する機能を有しない。

 2.欧州理事会は、構成国の国家元首又は政府の長、欧州理事会常任議長及び委員会の委員長で構成する。連合外務安全保障政策上級代表は、その作業に参加する。

 3.欧州理事会は、その常任議長の招集により、6カ月に2回会合する。議題により必要とされる場合には、欧州理事会の構成員は、1名の閣僚、また委員会の委員長の場合には、1名の委員により、補佐されることを決定することができる。状況により必要とされる場合には、常任議長は欧州理事会の特別会合を招集する。

 4.基本条約に別段の定めがある場合を除くほか、欧州理事会はコンセンサスで決定する。

 5.欧州理事会は、特定多数決によって1回の再選が可能な2年半の任期でその常任議長を選挙する。障害又は重大な非行の場合には、欧州理事会は同一の手続により常任議長の任期を終了させることができる。

 6.欧州理事会常任議長は

(a)欧州理事会の議長を務め、その作業を推進する。

(b)委員会の委員長と協力して、かつ総務理事会の作業を基礎として、欧州理事会の作業の準備及び継続性を確保する。

(c)欧州理事会内での団結とコンセンサスを促進するよう努力する。

(d)欧州理事会の各会合の後に欧州議会に報告書を提出する。

 欧州理事会常任議長は、そのレベル及び資格において、共通外交安全保障政策に関する問題について連合の対外的代表権を有する。ただし、連合外務安全保障政策上級代表の権限を害するものではない。

 欧州理事会常任議長は、国の職を有してはならない。

第16条〔理事会〕 1.理事会は、欧州議会と共同して、立法機能及び予算に関する機能を果たす。理事会は、基本条約に規定するように、政策の策定及び調整の機能を果たす。

 2.理事会は、政府を代表してその票を投じる、各構成国の閣僚級の1名の代表により構成する。

 3.基本条約に別段の定めがある場合を除き、理事会の議決は特定多数決によって行う。

 4.2014年11月1日より、特定多数決は、少なくとも15人の構成員を含み、かつ連合の総人口の少なくとも65パーセントを包含する構成国を代表する理事会構成員の少なくとも55パーセント、と定義される。

 議決を阻止する投票は、少なくとも理事会の4人の構成員を含まなければならない。これに達しない場合には、特定多数決は満たされたものとみなされる。

 特定多数決を規律するその他の取決めは、欧州連合の運営に関する条約第238条2に規定される。

 5.特定多数決の定義に関する経過規定であって2014年10月31日まで適用されるもの及び2014年11月1日から2017年3月31日まで適用されるものは、経過規定に関する議定書に規定される。

 6.理事会は、さまざまな編成で会合するが、その一覧は、欧州連合の運営に関する条約第236条に従って採択される。

 総務理事会は、理事会のさまざまな編成における作業に一貫性を確保する。総務理事会は、欧州理事会常任議長及び委員会と連絡をとって欧州理事会の会合を準備しそのフォローアップを確保する。

 外務理事会は、欧州理事会により定められる戦略的指針に基づき連合の対外的行動を作成し、それが一貫したものであることを確保する。

 7.構成国政府の常駐代表で構成する委員会が、理事会の作業の準備に責任を負う。

 8.理事会は、法令の草案について評議し票決する時は公開で会合する。このため、理事会の各会合は、連合の立法行為の評議を扱う部分と非立法行為の評議を扱う部分という2つの部分に分割される。

 9.理事会の諸編成の議長は、外務理事会の場合を除き、欧州連合の運営に関する条約第236条に従って設定される条件に従って、平等な輪番制を基礎に理事会における構成国代表が務める。

第17条〔委員会〕 1.委員会は、連合の一般利益を促進し、このため適当な発議を行う。委員会は、基本条約及びそれに従って機関が採択した措置の適用を確保する。委員会は、欧州連合司法裁判所の監督の下に連合法の適用を監視する。委員会は、予算を執行し計画を管理する。委員会は、基本条約に規定するように、調整、執行及び管理の機能を果たす。共通外交安全保障政策及び基本条約に規定するその他の場合を除き、委員会は、連合の対外的な態度表明を確保する。委員会は、機関間の合意を達成するため、連合の年次計画及び多年次計画を発議する。

 2.連合の立法行為は、基本条約に別段の定めのある場合を除き、委員会の提案を基礎にしてのみ採択することができる。基本条約が規定する場合は、他の行為も委員会の提案を基礎として採択される。

 3.委員会の任期は5年とする。

 委員会の委員は、全般的能力及び欧州に対する献身を基準として選出され、かつその独立性に疑いがあってはならない。

 委員会は、その責任を果たすにあたって、完全に独立でなければならない。18条2を害することなく、委員は、いかなる政府、機関又は団体からも、指示を求め又は指示を受けてはならない。委員は、その職務又はその任務の遂行と両立しないいかなる行為も行わない。

 4.リスボン条約の効力発生の日から2014年10月31日までの間に任命される委員会は、委員長及び連合外務安全保障政策上級代表を含み構成国につき各1名の国民により構成し、連合外務安全保障政策上級代表は、副委員長となる。

 5.2014年11月1日より、委員会は、委員長及び連合外務安全保障上級代表を含む構成国の3分の2の数の委員により構成される。ただし、欧州理事会が、全会一致によりこの数を変更する場合はこの限りではない。

 委員は、すべての構成国の人口的及び地理的範囲を反映するように、構成国間の厳格に平等な輪番制を基礎として構成国国民から選出される。この輪番制は、欧州連合の運営に関する第244条に従って欧州理事会により全会一致で設定される。

 6.委員長は、

(a)委員会の作業についての指針を定める。

(b)委員会が一貫して、効率的にかつ合議体として行動することができるよう、委員会の内部組織を決定する。

(c)委員の内から、連合外務安全保障政策上級代表を除く副委員長を指名する。

 委員会の委員は、委員長が要請した場合には、辞任する。連合外務安全保障政策上級代表は、委員長が要請した場合には、第18条1に定める手続に従って辞任する。

 7.欧州理事会は、欧州議会選挙を考慮に入れ、かつ適当な協議の後、特定多数決により欧州議会に対して委員長の候補を提案する。この候補者は、欧州議会によりその総議員の絶対多数により選挙される。候補者が必要な多数を得ない場合には、欧州理事会は、特定多数決により、1カ月以内に新たな候補を提案する。この候補者も同一の手続に従い欧州議会により選挙されなければならない。

 理事会は、委員長に選挙された者との合意により、委員会の委員として指名を提案するその他の者の名簿を採択する。これらの者は、この条3第2段及びこの条5第2段にいう基準に従って、構成国の提案を基礎として選出されなければならない。

 委員長、連合外務安全保障政策上級代表及び委員会のその他の委員は、一体として欧州議会による同意投票を受けなければならない。委員会は、この同意投票を基礎として、特定多数決により議決する欧州理事会により任命される。

 8.委員会は、機関として欧州議会に責任を負う。欧州議会は、欧州連合の運営に関する条約234条に従って、委員会に対する不信任決議案について票決することができる。不信任決議が採択された場合、委員会の委員は機関として辞任し、連合外務安全保障政策上級代表は、委員会内で負う職務から辞任する。

第18条〔連合外務安全保障政策上級代表〕 1.欧州理事会は、委員長の同意を得て、特定多数決により連合外務安全保障政策上級代表を指名する。欧州理事会は、同一の手続でその任期を終了させることができる。

 2.上級代表は、連合の共通外交安全保障政策を実施する。上級代表は、提案によって同政策の発展に寄与し、理事会の委任に応じて同政策を実施する。共通安全保障防衛政策についても同じとする。

 3.上級代表は、外務理事会を主宰する。

 4.上級代表は、委員会の一の副委員長である。上級代表は、連合の対外行動の一貫性を確保する。上級代表は、対外関係について委員会に課される責任について、また連合の対外行動の他の側面を調整することについて、委員会内で責任を負う。上級代表は、委員会内でのこれらの責任を果たすにあたって、かつそれらの責任についてのみ、この条2及び3と両立する範囲で委員会の手続に拘束される。

第19条〔欧州連合司法裁判所〕 1.欧州連合司法裁判所は、司法裁判所、一般裁判所及び専門裁判所を含む。欧州連合司法裁判所は、基本条約の解釈及び適用において、法の遵守を確保する。

 構成国は、連合法が関わる領域において実効的な法的保護を確保するに十分な救済手段を提供しなければならない。

 2.司法裁判所は、各構成国ごとに1名の裁判官で構成する。司法裁判所は、法務官による補佐を受ける。

 一般裁判所は、構成国につき少なくとも1名の裁判官を含むものとする。

 司法裁判所の裁判官及び法務官並びに一般裁判所の裁判官は、その独立性に疑いのない、かつ欧州連合の運営に関する条約第253条及び第254条に定める条件を満たす者から選ばれる。これらの者は、構成国政府の合意により6年の任期で任命される。退任する裁判官及び法務官は、再選されることができる。

 3.欧州連合司法裁判所は、基本条約に従って、

(a)構成国、機関又は自然人若しくは法人により提起される訴訟について裁判する。

(b)構成国裁判所の要請により、連合法の解釈又は機関により採択された行為の有効性について先行判決を与える。

(c)基本条約が規定するその他の事件について裁判する。


  第4編(より強化された協力に関する規定)

第20条 1.連合の非排他的権限の枠組内でみずからの間でより強化された協力を確立しようとする構成国は、基本条約の関連規定を適用することにより、その限界内でかつ欧州連合の運営に関する条約第326条から334条に規定する詳細な取決めに従って、連合の機関を利用しこれらの権限を行使することができる。

 より強化された協力は、連合の目的を推進し、その利益を保護し、その統合過程を強化することを目指す。かかる協力は、欧州連合の運営に関する条約第328条に従って、すべての構成国にいつでも開かれたものでなければならない。

 2.より強化された協力を許可する決定は、当該協力の目的が合理的期間内に連合全体により達成できないことが証明された場合であって、かつ少なくとも9の構成国が当該協力に参加する場合に、最終的な手段として理事会により採択される。理事会は、欧州連合の運営に関する条約第329条に規定する手続に従って議決する。

 3.理事会のすべての構成員が評議に参加するが、より強化された協力に参加する構成国を代表する理事会構成員のみが票決に参加する。票決に関する規則は、欧州連合の運営に関する条約第330条に定める。

 4.より強化された協力の枠組内で採択された行為は、参加国のみを拘束する。それらは連合への加盟に際して候補国が受け入れなければならない既決事項とみなされてはならない。

  第5編(連合の対外行動に関する一般規定及び共通外交安全保障政策に関する特別規定)

第1章(連合の対外行動に関する一般規定)

第21条〔原則及び目的〕 1.国際的な場面における連合の行動は、連合みずからの創設、発展及び拡大を鼓舞し、連合がより広い世界において進展を求める諸原則により導かれる。すなわち、民主主義、法の支配、人権及び基本的自由の普遍性と不可分性、人間の尊厳の尊重、平等と連帯の原則並びに国際連合憲章及び国際法の諸原則の尊重である。

 連合は、前段の規定の諸原則を共有する第三国及び国際的、地域的又は世界的な機構との関係を発展させ、かつ連携を構築する。連合は、とりわけ国際連合の枠組みの中で、共通の問題への多国間による解決を促進する。

 2.連合は、共通の政策及び行動を策定し及び追求し、かつ国際関係のすべての分野におけるより高度な協力に向けて活動する。その目的は次のとおりである。

(a)連合の価値、基本的利益、安全保障、独立並びに一体性を擁護すること

(b)民主主義、法の支配、人権並びに国際法の原則を強化し支援すること

(c)域外国境に関する原則を含む、国際連合憲章の目的及び原則、ヘルシンキ最終文書の原則及びパリ憲章の目標に従って、平和を維持し、紛争を予防し、かつ国際的安全保障を強化すること

(d)貧困の根絶を主たる目的とする、開発途上国の持続可能な経済上、社会上及び環境上の発展を促進すること

(e)国際貿易に対する制限の漸進的な撤廃によることを含む、すべての国の世界経済への統合を奨励すること

(f)持続可能な発展を確保するために、環境の質及び地球の天然資源の持続可能な管理を維持し改善するための国際的措置の発展を援助すること

(g)自然的又は人為的災害に直面する人々、国及び地域を支援すること

(h)より強固な多国間協力及び良いグローバル・ガバナンスに基づく国際体制を促進すること。

 3.連合は、この編及び欧州連合の運営に関する条約第5部が対象とする連合の対外行動のさまざまな分野及び連合の他の政策の対外的側面を発展させ、かつ実施することにおいて、1及び2に定める原則を尊重し、目的を追求する。

 連合は、その対外行動のさまざまな分野の間及びこれらの分野と連合の他の政策の間の一貫性を確保する。理事会及び委員会は、連合外務安全保障上級代表が補佐し、その一貫性を確保し、かつその趣旨で協力する。

第22条〔連合の戦略的な利益及び目的〕 1.第21条に定める原則及び目的に基づき、欧州理事会は、連合の戦略的な利益及び目的を定める。

 連合の戦略的な利益及び目的に関する欧州理事会の決定は、共通外交安全保障政策及び連合の対外行動の他の分野に関係する。その決定は、連合と特定の国又は地域との関係にかかわることができ、又は課題別に対応することができる。決定は、その期限並びに連合及びその構成国が利用可能な手段を策定する。

 欧州理事会は、各分野で定める取決めに従って理事会が採択する勧告に基づき、全会一致で行動する。欧州理事会の決定は、条約が定める手続に従い実施される。

 2.連合外務安全保障上級代表は共通外交安全保障政策の分野についての、また委員会は対外行動の他の分野についての、共同の案を理事会に提出することができる。


第2章(共通外交安全保障政策に関する特別規定)

第1節(共通規定)

第23条〔連合の行動〕 国際的場面における連合の行動は、この章に従い、第1章に定める諸原則に導かれ、及び、第1章に定める一般規定の目的を追求し、その規定に従って遂行する。

第24条〔連合の権限〕 1.共通外交安全保障政策事項における連合の権限は、共同防衛にいたる可能性のある共通防衛政策の漸進的な策定を含む、外交政策のすべての分野及び連合の安全保障に関するすべての問題を含む。

 共通外交安全保障政策は、特別の規則と手続に従う。それは、基本条約に別段の定めがある場合を除き、欧州理事会及び理事会が全会一致で策定し、実施する。立法行為の採択は、除外する。共通外交安全保障政策は、基本条約に従い、連合外務安全保障上級代表及び構成国が実施する。この分野における欧州議会及び委員会の特別の役割は、基本条約が規定する。欧州連合司法裁判所は、これらの規定に関する管轄権をもたない。ただし、この条約第40条の遵守を監視するための、及び欧州連合の運営に関する条約第275条第2段に定める特定の決定の合法性を審査するための管轄権を除く。

 2.対外行動の原則及び目的の枠組みの中で、連合は、構成国相互の政治的連帯の発展、一般的利益を有する問題の明確化及び構成国の行動の絶えざる収斂度の増進の達成に基づき、共通外交安全保障政策を遂行し、策定し及び実施する。

 3.構成国は、忠誠と相互連帯の精神に則り、積極的かつ全面的に連合の対外政策及び安全保障政策を支持し、本分野における連合の行動に従う。

 構成国は、相互の政治的連帯を高めかつ発展させるために協力して活動する。構成国は、連合の利益に反するか又は国際関係における結合した勢力としての連合の効果を損なうおそれのある行動を差し控える。

 理事会及び上級代表は、これらの原期が遵守されることを確保する。

第25条〔共通外交安全保障政策の方法〕 連合は、次の方法により共通外

交安全保障政策を遂行する。

(a)一般的指針を策定すること

(b)次のことを策定する決定を採択すること

 (i)連合が約束した行動

 (ii)連合がとるべき立楊

 (iii)(i)及び(ii)の決定を実施するための取決め

(c)政策遂行にあたっての構成国間の組織的協力を強化すること

第26条〔共通外交安全保障政策の実施〕 1.欧州理事会は、防衛に関わる事項を含む、連合の戦略的利益を明確にし、共通外交安全保障政策の目的を決定し、かつその一般的指針を策定する。欧州理事会は、必要な決定を採択する。

 国際的展開が必要とする場合、欧州理事会の議長は、当該展開に直面する連合の政策の戦略的方針を策定するために、欧州理事会の臨時会合を招集する。

 2.理事会は、欧州理事会が定める一般的指針及び戦略的方針に基づき、共通外交安全保障政策を立案し、かつそれを策定し実施するために必要な決定を行う。

理事会及び連合外務安全保障上級代表は、連合の行動の統一性、一貫性及び有効性を確保する。

3.共通外交安全保障政策は、国及び連合の資源を活用して、上級代表及び構成国が実施する。

第27条〔連合外務安全保障上級代表)1.連合外務安全保障上級代表は、外務理事会の議長を務め、共通外交安全保障政策の準備のための提案を通じて寄与し、欧州理事会及び理事会が採択する決定の実施を確保する。

 2.上級代表は、共通外交安全保障政策に関わる事項について連合を代表する。上級代表は、連合を代表して第三者と政治的対話を行い、国際組織及び国際会議において連合の立場を表明する。

 3.上級代表は、任務を遂行するにあたり、欧州対外行動庁の補佐を受ける。欧州対外行動庁は、構成国の外務担当部局と協力して活動し、理事会及び委員会の事務局の関係部局からの職員並びに構成国の国家外務担当部局から派遣される職員により構成される。欧州対外行動庁の組織及び任務は理事会の決定により定められる。理事会は、欧州議会と協議した後、かつ委員会の同意を得た後に、上級代表からの提案に基づき議決する。

第28条〜第41条(略)

第2節(共通安全保障及び防衛政策に関する規定)

第42条〔共通安全保障及び防衛政策の策定〕 1.共通安全保障及び防衛政策は、共通外交安全保障政策の不可分の一部である。共通安全保障及び防衛政策は、連合に対して民間及び軍事の資源に依拠した作戦能力を提供する。連合はそれらの資源を、国際連合憲章の原則に従い平和維持、紛争予防及び国際安全保障の強化のために連合の域外への使節派遣に関して利用することができる。これらの任務の遂行は、構成国が提供する能力を用いることによって行われる。

 2.共通安全保障及び防衛政策は、連合の共通防衛政策の漸進的な策定を含む。これは欧州理事会が全会一致により決定する場合には共同防衛へと至るものである。その場合には、欧州理事会は、構成国に対して各国の憲法上の要件に従ってその決定を採択するように勧告する。

 本節に従う連合の政策は、若干の構成国の安全保障及び防衛政策の特殊な性格を害するものではなく、その共通の防衛が北大西洋条約のもとで北大西洋条約機構(NATO)において実現されることを期待する若干の構成国の義務を尊重し、かつその枠組みの中で確立される共通の安全保障及び防衛政策と両立する。

 3.構成国は、理事会が策定する目的に寄与するために、民間及び軍事の能力を共通安全保障及び防衛政策の実施のために連合が利用可能なものとする。ともに多国籍軍を結成する構成国も、その能力を共通安全保障及び防衛政策のために利用可能なものとすることができる。

 構成国は、その軍事的能力の改善を漸進的に行う。防衛能力の開発、研究、取得及び軍備の分野における機関(以下、「欧州防衛庁」とする)は、作戦上の必要を明確にし、これらの必要性を満たす措置を促進し、防衛部門の産業的及び技術的基盤を強化するために必要なすべての措置を明確にする。また、適当な場合には、それを実施することに寄与し、欧州の能力及び軍備政策の策定に参加し、かつ、軍事的能力の改善を評価するにあたり理事会を補佐する。

 4.共通安全保障及び防衛政策に関する決定(この条にいう任務の開始に関する決定を含む)は、連合外務安全保障上級代表の提案又は構成国の発議に基づき、理事会が全会一致により採択する。上級代表は、国の資源及び連合の手段双方の活用につき、適当な場合には委員会と共同で提案することができる。

 5.理事会は、連合の枠内において、その価値を保護しその利益に奉仕することを目的として、任務の執行を構成国のグループに付託することができる。その任務の執行は第44条が規律する。

 6.その軍事的能力がより高い基準を達成している構成国であって、もっとも困難な任務のためにこの分野において相互間により拘束力の強い約束を行ったものは、連合の枠内において常設の組織的協力を樹立する。このような協力は第46条が規律するものとし、第43条の規定に影響を及ぼすものではない。

 7.構成国がその領域に対する武力侵略の被害国となる場合には、他の構成国は、国際連合憲章第51条に従って、すべての可能な手段を用いてこれを援助し及び支援する義務を負う。このことは、若干の構成国の安全保障及び防衛政策の特殊な性格を害するものではない。

 この分野における約束及び協力は、北大西洋条約機構のもとにおける約束と両立するものとし、このような約束は同機構の加盟国である構成国にとっては引続き共同防衛の基礎であり、かつその実施のための枠組みである。

第43条〔共通安全保障及び防衛政策の任務〕 1.第42条1にいう任務は、連合が民間及び軍事の手段を利用することができる間、共同の武装解除活動、人道的任務及び救援任務、軍事的助言及び支援の任務、紛争予防及び平和維持任務並びに危機管理における実戦部隊の任務を含み、平和創造及び紛争後の安定化を含む。これらの任務はすべて、自国領域でテロリズムと闘う第三国への支援を含む、テロリズムに対する闘いに寄与することができる。

 2.理事会は、1の規定の任務にかかわる決定を採択し、任務の目的、卸囲及び実施のための一般的条件を策定する。連合外務安全保障上級代表は、理事会の許可に基づき、政治安全保障委員会と密接かつ継続的に接触して、その任務の民事及び軍事の側面の調整を確保する。

第44条〜第55条(略)