データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 米州機構憲章(OAS憲章)

[場所] 
[年月日] 1993年6月10日
[出典] 現代国際政治の基本文書,一般財団法人鹿島平和研究所編,原書房,867-875頁
[備考] 署名:1948年4月30日,最終改正:1993年6月10日
[全文] 

   (前略

 米州の歴史的使命が、人に自由の地とその人格の発展および正当な願望の実現にとって好ましい環境とを提供するにあることを確信し、

 その使命が、ともに平和に生活しようとし、かつ、相互の理解とおのおのの主権の尊重とによって、独立に、平等におよび法の下ですべての者の向上を図ろうとする米州諸国民の欲求のうちにその本質的価値をもつ幾多の協定を成立させてきたことを自覚し、

 代議制民主主義が地域の安定、平和および発展の不可欠の条件であることを確信し、

 米州の連帯と善隣との真の意義が、民主的制度のなかで、人の本質的権利の尊重に基づく個人的自由および社会的正義の体制をこの大陸において確立することのみを意味することを信じ、

 これらの諸国の福祉と世界の進歩および文明に対する貢献とが、一層強い大陸的協力を必要とすることを確信し、

 これらの諸国が厳粛に再確認する原則と目的とをもつ国際連合に対して人類が付与した崇高な使命を堅持することを決意し、

 法的機構が、道德的秩序および正義に基づく安全および平和に必要な条件であることを確信し、かつ

 メキシコ·シティにおいて開催された戦争と平和との問題に関する全米会議の第9決議に従って、

 つぎの米州機構憲章を協定した。


   第1編


  第1章 性質および目的

第1条 米州諸国は、平和および正義の秩序を達成し、それらの諸国の連帯を促進し、その協力を強化しかつその主権、領土保全および独立を守るために発展させてきた国際機構をこの憲章によって確立する。米州機構は、国際連合内においては、地域機関である。

 米州機構はこの憲章によって明示的に与えられた権限以上の権限を有しておらず、憲章のいかなる条項も米州機構に加盟国の国内管轄権内の事項に干渉する権限を与えるものではない。

第2条 米州機構は、機構の基礎となっている原則を実行しかつ国際連合憲章に基づく地域的責任を果たすため、つぎの本質的目的を宣言する。

(a)米大陸の平和と安全とを強化すること。

(b)不干渉の原則に対して必要な敬意を払った上で、代議制民主主義を促進し、強化すること。

(c)紛争を起こすことのある原因を防止し、かつ、加盟國間に起こることのある紛争の平和的解決を確保すること。

(d)侵略の際に加盟国における共同行動を準備すること。

(e)加盟国間に起こることのある政治的、法律的および経済的問題の解決を求めること。および、

(f)協力的行動によって、加盟国の経済的、社会的および文化的発展を促進すること。

(g) この半球の諸国民の全面的な民主的発展の障碍となる極端な貧困を撲滅すること。

(h)加盟国の経済的及び社会的発展に最大限の資源を投入できるように通常兵器の効果的な制限を達成すること。


  第2章 原則

第3条 米州諸国は、つぎの原則を再確認する。

(a) 国際法は、米州諸国の相互の関係における行動の基準である。

(b) 国際的秩序は、本質的に、国の人格、主権および独立の尊重並びに条約その他の国際法の法源から生ずる義務の誠実な履行から成り立つ。

(c) 信義が国家間の関係を支配しなければならない。

(d) 米州諸国の連帯およびそれによって求められる崇高な目的は、これらの諸国による代議制民主主義の有効な実施を基礎とする政治機構を必要とする。

(e)全ての加盟国は、外からの干渉を受けることなく、自らの政治的、経済的そして社会的なシステムを選択し、自分たちにもっとも適したやり方でそれを作り上げる権利を有し、また他国の事項に干渉することを控える義務を有する。このことは守らねばならないが、米州諸国は、その政治的、経済的そして社会的システムとは関係なく、お互いに全面的に協力しなければならない。

(f) 極端な貧困の撲減は、議会制民主主義の促進と強化の本質的な部分であり、また米州諸国の共通の責任である。

(g) 米州諸国は、侵略戦争を否定する。勝利は、権利を与えるものではない。

(h)米州の一国に対する優略行為は、他のすべての米州諸国に対する侵略行為である。

(i) 2以上の米州諸国の間の国際的性質を有する紛争は、平和的手続によって解決しなければならない。

(j)社会的正義と社会的安全とは、永統的平和の基礎である。

(k)経済的協力は、米州諸国民の共同の福祉と繁栄とにとって不可欠であ

る。

(l) 米州諸国は、人種、国籍、信条または性に関する差別のない個人の基本的権利を宣言する。

(m) 米州の精神的結合は、米州諸国の文化的価値の尊重に基づくものであって、文明の崇高な目的のためにそれらの諸国が緊密に協力することを必要とする。

(n)国民の教育は、正義、自由および平和を指向しなければならない。


  第3章 加盟国

第4条 この憲章を批准するすべての米州諸国は、この機構の加盟国であ

る。

第5条〜第9条(略)


  第4章 国家の基本的権利および義務

第10条 国家は、法的に平等であって、平等な権利およびそれを行使する平等な能力を享有し、かつ、平等な義務を有する。個々の国の権利は、権利行使を確保するその国の力に依存するのではなく、その国が国際法の下において一個の人格として存在するという単なる事実に基づくものである。

第11条 米州各国は、他の各国が国際法に従って享有する権利を尊重する義務を有する。

第12条 国家の基本の権利は、いかなる方法によっても侵してはならない。

第13条 国家の政治の存在は、他の国の承認に依存しない。承認前でも、国家は、その完全性と独立とを守り、その存続と繁栄とを図る権利を有する。従って、また、国家は、自らふさわしいと考えるように自己を組織し、その利害について立法し、その行政をなし、かつ、その裁判所の管轄と権限とを定める権利を有する。これらの権利の行使は、国際法による他の国の権利の行使によってのみ制限される。

第14条 承認は、それを与える国が新しい国の人格を、これらの両国について国際法が規定するすべての権利義務とともに受諾することを意味する。

第15条 個々の国が自己を防衛し、自己の生活を営む権利は、他の国に不正な行為をなすことをその国に許すものではない。

第16条 国家の管轄権は、各自の領域内においては、自国民であるか他国民であるかを問わずすべての住民に平等に行使される。

第17条 個々の国は、その文化的、政治的および経済的生活を自由にかつ自然に発展させる権利を有する。国家は、この自由な発展に当たり、個人の権利および普遍的道徳の原則を尊重しなければならない。

第18条 条約の尊重と誠実な遵守は、国家間の平和的関係の発展の基準である。国際条約および協定は、公開されるものでなければならない。

第19条 国または国の集合は、理由のいかんを問わず、直接または間接に、他の国の国内または対外の事項に干渉する権利を有しない。この原則は、国の人格またはその政治的、経済的および文化的要素に対する武力のみでなく他のいかなる形式による干渉または威嚇の試みも禁止するものである。

第20条 国家は、他の国の主権意思を強制し、それによって何らかの利益を得るため、経済的もしくは政治的性質を有する強圧手段を用いまたは用いることを奨励してはならない。

第21条 国家の領域は、不可侵である。国家の領域は、いかなる理由によ

っても、直接または間接に、一時的であっても、他の国の軍事占領または他の武力措置の目的としてはならない。武力または他の強制手段のいずれかによって得られた領土取得または特別利益は、承認してはならない。

第22条 米州諸国は現行条約に従いまたはその履行として自衛を行う場合を除いては、武力の使用に訴えないことを約束する。

第23条 現行条約に従い平和と安全の維持のため執られる措置は、第19条および第21条に掲げる原則の違反とならない。


  第5章 紛争の平和的解決

第24条 米州諸国間に生ずることのある国際紛争は、この憲章で定められている平和的手続に付託されなければならない。

 この条項は、国際連合憲章第34条および第35条の加盟国の権利と義務を害ものと解釈されてはならない。

第25条 平和的手続とは、直接交渉、周旋、仲介、調査および調停、司法解決、仲裁裁判ならびに紛争の当事国が随時とくに合意するものをいう。

第26条 2以上の米州諸国の間にその1国が通例の外交手続では解決しえないと考える紛争が生じた場合には、当事国は、解決達成を可能にする何らかの平和的手続を協定しなければならない。

第27条 米州諸国の間の紛争が妥当な期間内に最終的解決に達しないことのないように、紛争の平和的解決の適切な手続を設定し、かつその適用のための適当な手段を規定するため特別の条約を締結する。


  第6章 集団安全保障

第28条 米州の1国の領土の保全もしくは不可侵またはその主権もしくは政治的独立に対する1国によるすべての侵略行為は、他の米州諸国に対する侵略行為と認める。

第29条 米州のいずれかの国の領土の不可侵もしくは保全またはその主権もしくは政治的独立が、武力攻撃、武力攻撃でない侵略行為、大陸外のあつれき、2以上の米州諸国の間のあつれきまたは米州の平和を危くすることのある他の事実もしくは事態によって影響される場合には、米州諸国は、大陸の連帯または集団的自衛の原則を推し進めて、この問題に関する特別条約において設定される措置と手続とを適用しなければならない。

第30条〜第52条(略)


   第2編

  第8章 機関

第53条 米州機構は、つぎの機関によって、その目的を達する。

(a) 総会

(b) 外務大臣協議会議

(c) 理事会

(d) 米州法律委員会

(e) 米州人権委員会

(f) 事務局

(g) 専門会議、および

(h) 専門機関

 憲章において、関連の規定に従い設けられる機関に加え、必要と考えられる補助機関、組織および他の団体は、これを設立することができる。

第54条~第146条(略)