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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 暫定自治政府取決めに関する原則宣言(オスロ合意(パレスチナ暫定自治))

[場所] 
[年月日] 1993年9月13日
[出典] 現代国際政治の基本文書,一般財団法人鹿島平和研究所編,原書房,848-855頁
[備考] 
[全文] 

 イスラエル国政府及びパレスチナ人を代表するPLOチーム(中東和平会議のヨルダン−パレスチナ代表団中の「パレスチナ代表団」)は数十年に及ぶ対立と抗争に終止符を打ち、相互に正当かつ政治的な権利を認め合い、平和に共存し相互に尊厳をもって安全に生存するように努め、公正、包括的かつ永続的な和平の実現及び合意された政治的なプロセスを通じ歴史的な和解を実現する時が到来したことに合意する。よって両者は以下の諸原則に合意する。

第1条 (交渉の目的)現行の中東和平プロセスの枠組みの中におけるイスラエル・パレスチナ交渉の目的は、特に、パレスチナ暫定自治機構、即ち選出された評議会(以下、評議会)を西岸及びガザ地区のパレスチナ人のために5年を超えない暫定期間の間設立し、もって安保理決議242及び338に基づく恒久的解決に至ることにある。

 暫定取決めは、和平のプロセス全体と不可分一体をなすものであり、恒久的地位をめぐる交渉は安保理決議242及び338の実施に至るものであることと理解される。

第2条 (暫定期間の枠組み)暫定期間に関して合意された枠組みは、本原則宣言の中で示される。

第3条 (選挙)1.西岸及びガザ地区のパレスチナ人が民主的な原則に則り自らの統治を可能にするために、評議会選出のための直接的かつ自由な政治総選挙を、合意に基づく監督と国際監視の下に実施するものとし、パレスチナ警察は公の秩序の確保にあたる。

 2.選挙に関する正確な態様及び条件に関する合意は、この原則宣言が発効する日より9カ月を超えない期間内に選挙を実施するために、附属議定書Iに基づき結ばれるものとする。

 3.これらの選挙は、パレスチナ人の正当な権利と正当な要求実現に向けて重要な暫定的準備段階となる。

第4条 (管轄の範囲)評議会の管轄は、恒久的地位に関する交渉の際に議論されるべき諸問題を除き、西岸及びガザ地区領土に及ぶ。両者は、西岸及びガザ地区を、暫定期間中において一体性が保持されるべき単一の領土単位と見なす。

第5条 (暫定期間と恒久的地位に関する交渉)1.5年間の暫定期間は、ガザ地区及びジェリコ地域からの撤退をもって開始する。

 2.恒久的地位に関する交渉は、可能な限り速やかに、暫定期間開始後3年目初頭より遅れることのないようイスラエル政府とパレスチナ人代表との間で開始する。

 3.本交渉は、エルサレム、難民、入植地、安全保障取決め、国境、近隣諸国間との協力関係、そのほか両当事者の共通関心事項等あらゆる問題を含むものと理解されている。

 4.両当事者は、暫定期間のための合意が恒久的な地位に関する交渉の結果に予断を与えたり、もしくは先取りしたりしないことを合意する。

第6条 (権限及び責任の予備的委議)1.本原則宣言が発効し、ガザ地区及びジェリコ地域から撤退が行われるのに伴い、イスラエル軍政府及び民政局から本規定に細かく定めがあるとおり、所定のパレスチナ人に対し権限が委議される。この権限委顔は、評議会の設立までの間、予備的な性格を有する。

 2.本原則宣言が発効し、ガザ地区及びジェリコ地域から撤退が行われた後直ちに、西岸及びガザ地区における経済開発を推進するため、教育、文化、保健、社会福祉、直接課税及び観光の各分野における権限がパレスチナ人に委譲される。パレスチナ側は、既に合意したとおり、警察力の創設を開始する。評議会の開設までは、双方は既に合意したとおり、追加的な権限及び責任の委議に関する交渉を行うことができる。

第7条 (暫定合意)1.イスラエル及びパレスチナ代表団は、暫定期間に関する合意(「暫定合意」)につき交渉を行う。

 2.暫定合意は、なかんずく、評議会の構成、評議員定数、イスラエル軍当局及び民政局が有する権限と責任の評議会への委譲について規定するものとする。

 また、暫定合意は、評議会の執行権及び下記第9条による評議会の立法権並びに独立したパレスチナの司法機関を定めるものとする。

 3.暫定合意は、本原則合意第6条に従い、予め委譲される全ての権限と責任を評議会が引き受けることができるような取決めを含むものとし、これらは評議会の発足時に実施される。

 4.評議会は、評議会がその発足とともに経済成長を推進できるように、パレスチナ電力当局、ガザ港湾当局、パレスチナ開発銀行、パレスチナ輸出振興局、パレスチナ環境当局、パレスチナ土地当局、パレスチナ水管理当局及びその他の合意された機構を、権限と責任を規定する暫定合意に従い設立する。

 5.評議会が開設された後、民政局は解散され、イスラエル軍政府は撤退する。

第8条 (公の秩序と治安)評議会は、西岸とガザ地区のパレスチナ人の公の秩序及び対内治安を保障するために強力な警察部隊を創設する。イスラエルは外部からの脅威に対する防衛の責任並びにイスラエル人の対内治安と公の秩序を守るため、イスラエル人の全般的安全につき引き続き責任を負う。

第9条 (法律と軍令)1.評議会は、暫定合意に従い、委任された全ての権限の範囲内において立法権を付与され

 2.両当事者は、その他の分野において現在施行されている法律及び軍令に関し、合同で見直しを行う。

第10条 (イスラエル・パレスチナ連絡合同委員会)本原則宣言の発効とともに、本原則宣言及び暫定段階に関するその後の諸合意の実施を円滑にするために、調整を必要とする事項、共通の関心事項及び紛争を扱うためのイスラエル・パレスチナ連絡合同委員会が設置される。

第11条 (経済分野におけるイスラエル、パレスチナ間の協力)本原則宣言の発効とともに、西岸、ガザ地区及びイスラエルの発展促進のための協力を行うことに共通の利益が存在することを認識し、附属議定書III及び同IVに定めるプログラムを協力的に発展実施するためにイスラエル・パレスチナ経済協力委員会が設置される。

第12条 (ヨルダン及びエジプトとの連絡及び協力)両当事者はヨルダン及びエジプト両国政府に対し、イスラエル政府とパレスチナ代表を一方としヨルダン及びエジプト両国政府を他方とする、相互の協力を促進するための一層の連絡,協力の取決めの設立に参加するよう呼びかける。

 これらの取決めは継続委員会の構成を含み、この委員会は、1967年に西岸及びガザ地区から退去させられた人々の受入れの態様を、混乱と無秩序を防止するために必要な措置とともに合意により決定する。他の共通関心事項はこの委員会において扱われる。

第13条 (イスラエル軍の再配置) 1. 本原則宣言の発効後遅くとも評議会選拳の直前までに、本原則宣言第14条に従ってイスラエル軍が撤退するのに加え、西岸及びガザ地区においてイスラエル軍の再配置が行われる。

 2.イスラエル軍の再配置に際しては、イスラエル軍は居住地域の外に再配置されるとの原則が尊重される。

 3.定められた地域への更なる再配置は、第8条に従いパレスチナ警察部隊による公の秩序と内部治安の責任負担から段階的に実施される。

第14条 (ガザ地区及びジェリコ地域からのイスラエルの撤退)イスラエルは、附属議定書IIに従いガザ地区及びジェリコ地域より撤退する。

第15条 (係争の解決)1.本原則宣言又はそれに続く暫定期間に係る全ての合意について、その適用や解釈に際して生起する係争は、第10条に規定する連絡合同委員会を通じ交渉により解決される。

 2.交渉により解決ができない係争については、当事者が合意する調停メカニズムにより解決することができる

 3.当事者は、暫定段階に関連するもので調停により解決できない係争を仲裁に委ねることに合意することができる。この目的のため、両当事者の同意のもとに、当事者は仲裁委員会を設置する。

第16条 (地域プログラムに関するイスラエル・パレスチナ協力)両当事者は、多国間協議の作業部会が、「マーシャル・プラン」、即ち、地域協力プログラム及び西岸・ガザ地区のための特別プログラムを含む付属議定書IVに示されるその他のプログラムを推進するための適当な機関であると考える。

第17条 (雑則) 1.本原則宣営は、署名から1カ月後に発効する。

 2.本原則宣言に付属する全ての議定書及び合意議事録は、本宣言と不可分一体をなすとみなされる。

 1993年9月13日ワシントンD.C.にて作成。

 イスラエル政府のために

 イツハック・ラビン

 PLOのために

 ヤセール・アラファト

 証人

 米国

 ウィリアム・J・クリントン

 ロシア連邦

 アンドレイ・V・コジレフ

附属書I〜附属書II(略)