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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] WTO紛争解決手続了解(世界貿易機関紛争解決手続了解,紛争解決に係る規則及び手続に関する了解(WTO協定附属書2))

[場所] 
[年月日] 1994年4月15日
[出典] 国際関係の基本文書(下),一般財団法人鹿島平和研究所編,日本評論社,376-401頁
[備考] 
[全文] 

紛争解決に係る規則及び手続に関する了解(WTO協定附属書2)

1994年4月15日

第1条(適用対象及び適用)1.この了解に定める規則及び手続は、この了解の附属書Iに掲げる協定(この了解において「対象協定」という)の協議及び紛争解決に関する規定に従って提起される紛争について適用する。この了解に定める規則及び手続は、また、世界貿易機関を設立する協定(この了解において「世界貿易機関協定」という)及びこの了解に基づく権利及び義務に関する加盟国間の協議及び紛争解決(その他の対象協定に基づく権利及び義務にも係るものとして行われるものであるかないかを問わない)について適用する。

 2.この了解に定める規則及び手続の適用は、対象協定に含まれている紛争解決に関する特別又は追加の規則及び手続(附属書IIに掲げるもの)の適用がある場合には、これに従う。この了解に定める規則及び手続と同附属書に掲げる特別又は追加の規則及び手続とが抵触する場合には、同附属書に掲げる特別又は追加の規則及び手続が優先する。2以上の対象協定に定める規則及び手続に関する紛争において、検討される当該2以上の対象協定に定める特別又は追加の規則及び手続が相互に抵触する場合であって、紛争当事国が小委員会の設置から20日以内に規則及び手続について合意することができないときは、次条1に定める紛争解決機関の議長は、いずれかの加盟国の要請の後10日以内に、紛争当事国と協議の上、従うべき規則及び手続を決定する。議長は、特別又は追加の規則及び手続が可能な限り用いられるべきであり、かつ、この了解に定める規則及び手続は抵触を避けるために必要な限度において用いられるべきであるという原則に従う。

第2条(運用)1.この了解に定める規則及び手続並びに対象協定の協議及び紛争解決に関する規定を運用するため、この了解により紛争解決機関を設置する。ただし、対象協定に係る運用について当該対象協定に別段の定めがある場合には、これによる。同機関は、小委員会を設置し、小委員会及び上級委員会の報告を採択し、裁定及び勧告の実施を継続的に監視し並びに対象協定に基づく譲許その他の義務の停止を承認する権限を有する。対象協定のうち複数国間貿易協定であるものの下で生ずる紛争に関し、この了解において「加盟国」とは、当該複数国間貿易協定の締約国である加盟国のみをいう。同機関がいずれかの複数国間貿易協定の紛争解決に関する規定を運用する場合には、当該協定の締約国である加盟国のみが、当該紛争に関する同機関の決定又は行動に参加することができる。

 2.紛争解決機関は、世界貿易機関の関連する理事会及び委員会に対し各対象協定に係る紛争における進展を通報する。

 3.紛争解決機関は、その任務をこの了解に定める各機関内に遂行するため、必要に応じて会合する。

 4.この了解に定める規則及び手続に従って紛争解決機関が決定を行う場合には、その決定は、コンセンサス方式による*1*。

第3条(一般規定)1.加盟国は、1974年のガットの第22条及び第23条の規定の下で適用される紛争の処理の原則並びにこの了解によって詳細に定められ、かつ、修正された規則及び手続を遵守することを確認する。

 2.世界貿易機関の紛争解決制度は、多角的貿易体制に安定性及び予見可能性を与える中心的な要素である。加盟国は、同制度が対象協定に基づく加盟国の権利及び義務を維持し並びに解釈に関する国際法上の慣習的規則に従って対象協定の現行の規定の解釈を明らかにすることに資するものであることを認識する。紛争解決機関の勧告及び裁定は、対象協定に定める権利及び義務に新たな権利及び義務を追加し、又は対象協定に定める権利及び義務を減ずることはできない。

 3.加盟国が、対象協定に基づき直接又は間接に自国に与えられた利益が他の加盟国がとる措置によって侵害されていると認める場合において、そのような事態を迅速に解決することは、世界貿易機関が効果的に機能し、かつ、加盟国の権利と義務との間において適正な均衡が維持されるために不可欠である。

 4.紛争解決機関が行う勧告又は裁定は、この了解及び対象協定に基づく権利及び義務に従って問題の満足すべき解決を図ることを目的とする。

 5.対象協定の協議及び紛争解決に関する規定に基づいて正式に提起された問題についてのすべての解決(仲裁判断を含む)は、当該協定に適合するものでなければならず、また、当該協定に基づきいずれかの加盟国に与えられた利益を無効にし若しくは侵害し、又は当該協定の目的の達成を妨げるものであってはならない。

 6.対象協定の協議及び紛争解決に関する規定に基づいて正式に提起された問題についての相互に合意された解決は、紛争解決機関並びに関連する理事会及び委員会に通報される。いずれの加盟国も、同機関並びに関連する理事会及び委員会において、当該解決に関する問題点を提起することができる。

 7.加盟国は、問題を提起する前に、この了解に定める手続による措置が有益なものであるかないかについて判断する。紛争解決制度の目的は、紛争に関する明確な解決を確保することである。紛争当事国にとって相互に受け入れることが可能であり、かつ、対象協定に適合する解決は、明らかに優先されるべきである。相互に合意する解決が得られない場合には、同制度の第一の目的は、通常、関係する措置がいずれかの対象協定に適合しないと認められるときに当該措置の撤回を確保することである。代償に関する規定は、当該措置を直ちに撤回することが実行可能でない場合に限り、かつ、対象協定に適合しない措置を撤回するまでの間の一時的な措置としてのみ、適用すべきである。紛争解決手続を利用する加盟国は、この了解に定める最後の解決手段として、紛争解決機関の承認を得て、他の加盟国に対し対象協定に基づく譲許その他の義務の履行を差別的に停止することができる。

 8.対象協定に基づく義務に違反する措置がとられた場合には、当該措置は、反証がない限り、無効化又は侵害の事案を構成するものと認められる。このことは、対象協定に基づく義務についての違反は当該対象協定の締約国である他の加盟国に悪影響を及ぼすとの推定が通常存在することを意味する。この場合において、違反の疑いに対し反証を挙げる責任は、申立てを受けた加盟国の側にあるものとする。

 9.この了解の規定は、世界貿易機関協定又は対象協定のうち複数国間貿易協定であるものに基づく意思決定により対象協定について権威のある解釈を求める加盟国の権利を害するものではない。

 10.調停及び紛争解決手続の利用についての要請は、対立的な行為として意図され又はそのような行為とみなされるべきでない。紛争が生じた場合には、すべての加盟国は、当該紛争を解決するために誠実にこれらの手続に参加する。また、ある問題についての申立てとこれに対抗するために行われる別個の問題についての申立てとは、関連付けられるべきでない。

 11.この了解は、世界貿易機関協定が効力を生ずる日以後に対象協定の協議規定に基づいて行われた協議のための新たな要請についてのみ適用する。世界貿易機関協定が効力を生ずる日以前に1947年のガット又は対象協定の前身であるその他の協定に基づいて協議の要請が行われた紛争については、世界貿易機関協定が効力を生ずる日の直前に有効であった関連する紛争解決に係る規則及び手続を引き続き適用する*2*。

 12.11の規定にかかわらず、対象協定のいずれかに基づく申立てが開発途上加盟国により先進加盟国に対してされる場合には、当該開発途上加盟国は、次条から第6条まで及び第12条の規定に代わるものとして、1966年4月5日の決定(ガット基本文書選集(BISD)追録第14巻18ページ)の対応する規定を適用する権利を有する。ただし、小委員会が、同決定の7に定める期間がその報告を作成するために不十分であり、かつ、当該開発途上加盟国の同意を得てその期間を延長することができると認める場合は、この限りでない。次条から第6条まで及び第12条に定める規則及び手続と同決定に定める対応する規則及び手続とが抵触する場合には、抵触する限りにおいて、後者が優先する。

第4条(協議)1.加盟国は、加盟国が用いる協議手続の実効性を強化し及び改善する決意を確認する。

 2.各加盟国は、自国の領域においてとられた措置であっていずれかの対象協定の実施に影響を及ぼすものについて他の加盟国がした申立てに好意的な考慮を払い、かつ、その申立てに関する協議のための機会を十分に与えることを約束する*3*。

 3.協議の要請が対象協定に従って行われる場合には、当該要請を受けた加盟国は、相互間の別段の合意がない限り、当該要請を受けた日の後10日以内に当該要請に対して回答し、かつ、相互に満足すべき解決を得るため、当該要請を受けた日の後30日以内に誠実に協議を開始する。当該加盟国が当該要請を受けた日の後10日以内に回答せず又は当該要請を受けた日の後30日以内若しくは相互に合意した期間内に協議を開始しない場合には、当該要請を行った加盟国は、直接小委員会の設置を要請することができる。

 4.すべての協議の要請は、協議を要請する加盟国が紛争解決機関並びに関連する理事会及び委員会に通報する。協議の要請は、書面によって提出され、並びに要請の理由、問題となっている措置及び申立ての法的根拠を示すものとする。

 5.加盟国は、この了解に基づいて更なる措置をとる前に、対象協定の規定に従って行う協議において、その問題について満足すべき調整を行うよう努めるべきである。

 6.協議は、秘密とされ、かつ、その後の手続においていずれの加盟国の権利も害するものではない。

 7.協議の要請を受けた日の後60日の期間内に協議によって紛争を解決することができない場合には、申立てをした紛争当事国(この了解において「申立国」という)は、小委員会の設置を要請することができる。協議を行っている国が協議によって紛争を解決することができなかったと共に認める場合には、申立国は、当該60日の期間内に小委員会の設置を要請することができる。

 8.緊急の場合(腐敗しやすい物品に関する場合等)には、加盟国は、要請を受けた日の後10日以内に協議を開始する。要請を受けた日の後20日以内に協議によって紛争を解決することができなかった場合には、申立国は、小委員会の設置を要請することができる。

 9.緊急の場合(腐敗しやすい物品に関する場合等)には、紛争当事国、小委員会及び上級委員会は、最大限可能な限り、手続が速やかに行われるようにあらゆる努力を払う。

 10.加盟国は、協議の間、開発途上加盟国の特有の問題及び利益に特別の注意を払うべきである。

 11.協議を行っている加盟国以外の加盟国が、1994年のガット第22条1サービス貿易一般協定第22条1又はその他の対象協定の対応する規定4)によって行われている協議について実質的な貿易上の利害関係を有すると認める場合には、当該加盟国は、当該規定による協議の要請の送付の日の後10日以内に、協議を行っている加盟国及び紛争解決機関に対し、その協議に参加することを希望する旨を通報することができる。その通報を行った加盟国は、実質的な利害関係に関する自国の主張が十分な根拠を有することについて協議の要請を受けた加盟国が同意する場合には、協議に参加することができる。この場合において、両加盟国は、同機関に対しその旨を通報する。協議への参加の要請が受け入れられなかった場合には、要請を行った加盟国は、1994年のガットの第22条1若しくは第23条1、サービス貿易一般協定の第22条1若しくは第23条1又は4その他の対象協定の対応する規定により協議を要請することができる*4*。

第5条(略)

第6条(小委員会の設置)申立国が要請する場合には、小委員会を設置しないことが紛争解決機関の会合においてコンセンサス方式によって決定されない限り、遅くとも当該要請が初めて議事日程に揚げられた同機関の会合の次の会合において、小委員会を設置する*5*。

 2.小委員会の設置の要請は、書面によって行われる。この要請には、協議が行われたという事実の有無及び問題となっている特定の措置を明示するとともに、申立ての法的根拠についての簡潔な要約(問題を明確に提示するために十分なもの)を付する。申立国が標準的な付託事項以外の付託事項を有する小委員会の設置を要請する場合には、書面による要請には、特別な付託事項に関する案文を含める。

第7条(小委員会の付託事項)1.小委員会は、紛争当事国が小委員会の設置の後20日以内に別段の合意をする場合を除くほか、次の付託事項を有する。

「(紛争当事国が引用した対象協定の名称)の関連規定に照らし(当事国の名称)により文書(文書番号)によって紛争解決機関に付された問題を検討し、及び同機関が当該協定に規定する勧告又は裁定を行うために役立つ認定を行うこと」

 2.小委員会は、紛争当事国が引用した対象協定の関連規定について検討する。

 3.小委員会の設置に当たり、紛争解決機関は、その議長に対し、1の規定に従い紛争当事国と協議の上、小委員会の付託事項を定める権限を与えることができる。このようにして定められた付託事項は、すべての加盟国に通報される。標準的な付託事項以外の付託事項について合意がされた場合には、いずれの加盟国も、同機関においてこれに関する問題点を提起することができる。

第8条~第10条(略)

第11条(小委員会の任務)小委員会の任務は、この了解及び対象協定に定める紛争解決機関の任務の遂行について同機関を補佐することである。したがって、小委員会は、自己に付託された問題の客観的な評価(特に、問題の事実関係、関連する対象協定の適用の可能性及び当該協定との適合性に関するもの)を行い、及び同機関が対象協定に規定する勧告又は裁定を行うために役立つその他の認定を行うべきである。小委員会は、紛争当事国と定期的に協議し、及び紛争当事国が相互に満足すべき解決を図るための適当な機会を与えるべきである。

第12条~15条(略)

第16条(小委員会の報告の採択)1.小委員会の報告は、加盟国にその検討のための十分な時間を与えるため、報告が加盟国に送付された日の後20日間は紛争解決機関により採択のために検討されてはならない。

 2.小委員会の報告に対して異議を有する加盟国は、小委員会の報告を検討する紛争解決機関の会合の少なくとも10日前に、当該異議の理由を説明する書面を提出する。

 3.紛争当事国は、紛争解決機関による小委員会の報告の検討に十分に参加する権利を有するものとし、当該紛争当事国の見解は、十分に記録される。

 4.小委員会の報告は、加盟国への送付の後60日以内に、紛争解決機関の会合において採択される*6*。ただし、紛争当事国が上級委員会への申立ての意思を同機関に正式に通報し又は同機関が当該報告を採択しないことをコンセンサス方式によって決定する場合は、この限りでない。紛争当事国が上級委員会への申立ての意思を通報した場合には、小委員会の報告は、上級委員会による検討が終了するまでは、同機関により採択のために検討されてはならない。この4に定める採択の手続は、小委員会の報告について見解を表明する加盟国の権利を害するものではない。

第17条(上級委員会による検討)

常設の上級委員会

 1.紛争解決機関は、常設の上級委員会を設置する。上級委員会は、小委員会が取り扱った問題についての申立てを審理する。上級委員会は、7人の者で構成するものとし、そのうち3人が1の問題の委員を務める。上級委員会の委員は、順番に職務を遂行する。その順番は、上級委員会の検討手続で定める。

 2.紛争解決機関は、上級委員会の委員を4年の任期で任命するものとし、各委員は、一回に限り、再任されることができる。ただし、世界貿易機関協定が効力を生じた後直ちに任命される7人の者のうち3人の任期は、2年で終了するものとし、これらの3人の者は、くじ引きで決定される。空席が生じたときは、補充される。任期が満了しない者の後任者として任命された者の任期は、前任者の任期の残余の期間とする。

 3.上級委員会は、法律、国際貿易及び対象協定が対象とする問題一般についての専門知識により権威を有すると認められた者で構成する。上級委員会の委員は、いかなる政府とも関係を有してはならず、世界貿易機関の加盟国を広く代表する。上級委員会のすべての委員は、いつでも、かつ、速やかに勤務することが可能でなければならず、また、世界貿易機関の紛争解決に関する活動その他関連する活動に常に精通していなければならない。上級委員会の委員は、直接又は間接に自己の利益との衝突をもたらすこととなる紛争の検討に参加してはならない。

 4.紛争当事国のみが、小委員会の報告について上級委員会への申立てをすることができる。第10条2の規定に基づき小委員会に提起された問題について実質的な利害関係を有する旨を紛争解決機関に通報した第三国は、上級委員会に意見書を提出することができるものとし、また、上級委員会において意見を述べる機会を有することができる。

 5.紛争当事国が上級委員会への申立ての意思を正式に通報した日から上級委員会がその報告を送付する日までの期間は、原則として60日を超えてのはならない。上級委員会は、その検討の日程を定めるに当たり、適当な場合には、第4条9の規定を考慮する。上級委員会は、60日以内に報告を作成することができないと認める場合には、報告を送付するまでに要する期間の見込みと共に遅延の理由を書面により紛争解決機関に通報する。第1段に定める期間は、いかなる場合にも、90日を超えてはならない。

 6.上級委員会への申立ては、小委員会の報告において対象とされた法的な問題及び小委員会が行った法的解釈に限定される。

 7.~8.(略)

上級委員会による検討に関する手続

 9.上級委員会は、紛争解決機関の議長及び事務局長と協議の上、検討手続を作成し、加盟国に情報として送付する。

 10.上級委員会による検討は、秘密とされる。上級委員会の報告は、提供された情報及び行われた陳述を踏まえて起草されるものとし、その起草されるものとし、その起草に際しては、紛争当事国の出席は、認められない。

 11.上級委員会の報告の中で各委員が表明した意見は、匿名とする。

 12.上級委員会は、その検討において、6の規定に従って提起された問題を取り扱う。

 13.上級委員会は、小委員会の法的な認定及び結論を支持し、修正し又は取り消すことができる。

上級委員会の報告の採択

 14.紛争解決機関は、上級委員会の報告を、加盟国への送付の後30日以内に採択し*7*、紛争当事国は、これを無条件で受諾する。ただし、同機関が当該報告を採択しないことをコンセンサス方式によって決定する場合は、この限りでない。この14に定める採択の手続は、上級委員会の報告について見解を表明する加盟国の権利を害するものではない。

第18条(略)

第19条(小委員会及び上級委員会の勧告)小委員会又は上級委員会は、ある措置がいずれかの対象協定に適合しないと認める場合には、関係加盟国*8*に対し当該措置を当該協定に適合させるよう勧告する*9*。小委員会又は上級委員会は、更に、当該関係加盟国がその勧告を実施し得る方法を提案することができる。

 2.小委員会及び上級委員会は、第3条2の規定に従うものとし、その認定及び勧告において、対象協定に定める権利及び義務に新たな権利及び義務を追加し、又は対象協定に定める権利及び義務を減ずることはできない。

第20条(紛争解決機関による決定のための期間)紛争解決機関が小委員会を設置した日から同機関が小委員会又は上級委員会の報告を採択するために審議する日までの期間は、紛争当事国が別段の合意をする場合を除くほか、原則として、小委員会の報告につき上級委員会への申立てがされない場合には9箇月、申立てがされる場合には12箇月を超えてはならない。小委員会又は上級委員会が第12条9又は第17条5の規定に従い報告を作成するための期間を延長する場合には、追加的に要した期間が、前段に定める期間に加算される。

第21条(勧告及び裁定の実施の監視)

 1.紛争解決機関の勧告又は裁定の速やかな実施は、すべての加盟国の利益となるような効果的な紛争解決を確保するために不可欠である。

 2.紛争解決の対象となった措置に関し、開発途上加盟国の利害関係に影響を及ぼす問題については、特別の注意が払われるべきである。

 3.関係加盟国は、小委員会又は上級委員会の報告の採択の日の後30日以内に開催される紛争解決機関の会合において、同機関の勧告及び裁定の実施に関する自国の意思を通報する*10*。勧告及び裁定を速やかに実施することができない場合には、関係加盟国は、その実施のための妥当な期間を与えられる。妥当な期間は、次の(a)から(c)までに定めるいずれかの期間とする。

(a)関係加盟国が提案する機関。ただし、紛争解決機関による承認を必要とする。

(b)(a)の承認がない場合には、勧告及び裁定の採択の日の後45日以内に紛争当事国が合意した期間

(c)(b)の合意がない場合には、勧告及び裁定の採択の日の後90日以内に拘束力のある仲裁によって決定される期間*11*。仲裁が行われる場合には、仲裁人*12*に対し、小委員会又は上級委員会の勧告を実施するための妥当な期間がその報告の採択の日から15箇月を超えるべきではないとの指針が与えられるべきである。この15箇月の期間は、特別の事情があるときは、短縮し又は延長することができる。

 4.紛争解決機関による小委員会の設置の日から妥当な期間の決定の日までの期間は、小委員会又は上級委員会が第12条9又は第17条5の規定に従いその報告を作成する期間を延長した場合を除くほか、15箇月を超えてはならない。ただし、紛争当事国が別段の合意をする場合は、この限りでない。小委員会又は上級委員会がその報告を作成する期間を延長する場合には、追加的に要した期間が、この15箇月の期間に加算される。ただし、合計の期間は、紛争当事国が例外的な事情があることについて合意する場合を除くほか、18箇月を超えてはならない。

 5.勧告及び裁定を実施するためにとられた措置の有無又は当該措置と対象協定との適合性について意見の相違がある場合には、その意見の相違は、この了解に定める紛争解決手続の利用によって解決される。この場合において、可能なときは、当該勧告及び裁定の対象となった紛争を取り扱った小委員会(この了解において「最初の小委員会」という)にその意見の相違を付することができる。最初の小委員会は、その問題が付された日の後90日以内にその報告を加盟国に送付する。最初の小委員会は、この期間内に報告を作成することができないと認める場合には、報告を送付するまでに要する期間の見込みと共に遅延の理由を書面により紛争解決機関に通報する。

 6.紛争解決機関は、採択された勧告又は裁定の実施を監視する。加盟国は、勧告又は裁定が採択された後いつでも、これらの実施の問題を同機関に提起することができる。勧告又は裁定の実施の問題は、同機関が別段の決定を行う場合を除くほか、3の規定に従って妥当な期間が定められた日の後6箇月後に同機関の会合の議事日程に掲げられるものとし、当該問題が解決されるまでの間同機関の会合の議事日程に引き続き掲げられる。関係加盟国は、これらの各会合の少なくとも10日前に、勧告又は裁定の実施の進展についての状況に関する報告を書面により同機関に提出する。

 7.問題が開発途上加盟国によって提起されたものである場合には、紛争解決機関は、同機関がその状況に応じて更にいかなる適当な措置をとり得るかを検討する。

 8.問題が開発途上加盟国によって提起されたものである場合には、紛争解決機関は、同機関がいかなる適当な措置をとり得るかを検討するに当たり、申立てられた措置の貿易に関する側面のみでなく、関係を有する開発途上加盟国の経済に及ぼす影響も考慮に入れる。

第22条(代償及び譲許の停止)1.代償及び譲許その他の義務の停止は、勧告及び裁定が妥当な期間内に実施されない場合に利用することができる一時的な手段であるが、これらのいずれの手段よりも、当該勧告及び裁定の対象となった措置を対象協定に適合させるために勧告を完全に実施することが優先される。代償は、任意に与えられるものであり、また、代償が与えられる場合には、対象協定に適合するものでなければならない。

 2.関係加盟国は、対象協定に適合しないと認定された措置を当該協定に適合させ又は前条3の規定に従って決定された妥当な期間内に勧告及び裁定に従うことができない場合において、要請があるときは、相互に受け入れることができる代償を与えるため、当該妥当な期間の満了までに申立国と交渉を開始する。当該妥当な期間の満了の日の後20日以内に満足すべき代償について合意がされなかった場合には、申立国は、関係加盟国に対する対象協定に基づく譲許その他の義務の適用を停止するために紛争解決機関に承認を申請することができる。

 3.申立国は、いかなる譲許その他の義務を停止するかを検討するに当たり、次に定める原則及び手続を適用する。

(a)一般原則として、申立国は、まず、小委員会又は上級委員会により違反その他の無効化又は侵害があると認定された分野と同一の分野に関する譲許その他の義務の停止を試みるべきである。

(b)申立国は、同一の分野に関する譲許その他の義務を停止することができず又は効果的でないと認める場合には、同一の協定のその他の分野に関する譲許その他の義務の停止を試みることができる。

(c)申立国は、同一の協定のその他の分野に関する譲許その他の義務を停止することができず又は効果的でなく、かつ、十分重大な事態が存在すると認める場合には、その他の対象協定に関する譲許その他の義務の停止を試みることができる。

(d)(a)から(c)までの原則を適用するに当たり、申立国は、次の事項を考慮する。

 (i)小委員会又は上級委員会により違反その他の無効化又は侵害があると認定された分野又は協定に関する貿易及び申立国に対するその貿易の重要性

 (ii)(i)の無効化又は侵害に係る一層広範な経済的要因及び譲許その他の義務の停止による一層広範な経済的影響

(e)申立国は、(b)又は(c)の規定により譲許その他の義務を停止するための承認を申請することを決定する場合には、その申請においてその理由を示すものとする。当該申請は、紛争解決機関への提出の時に、関連する理事会に対して及び、(b)の規定による申請の場合には、関連する分野別機関にも提出する。

(f)この3の規定の適用上、

 (i)物品に関しては、すべての物品を一の分野とする。

 (ii)サービスに関しては、現行の「サービス分野分類表」に明示されている主要な分野*13*のそれぞれを一の分野とする。

 (iii)貿易関連の知的所有権に関しては、貿易関連知的所有権協定の第2部の第1節から第7節までの規定が対象とする各種類の知的所有権のそれぞれ並びに第3部及び第4部に定める義務のそれぞれを一の分野とする。

(g)この3の規定の適用上、

 (i)物品に関しては、世界貿易機関協定附属書IAの協定の全体(紛争当事国が複数国間貿易協定の締約国である場合には、当該複数国間貿易協定を含む)を一の協定とする。

 (ii)サービスに関しては、サービス貿易一般協定を一の協定とする。

 (iii)知的所有権に関しては、貿易関連知的所有権協定を一の協定とする。

 4.紛争解決機関が承認する譲許その他の義務の停止の程度は、無効化又は侵害の程度と同等のものとする。

 5.紛争解決機関は、対象協定が禁じている譲許その他の義務の停止を承認してはならない。

 6.2に規定する状況が生ずる場合には、申請に基づき、紛争解決機関は、同機関が当該申請を却下することをコンセンサス方式によって決定する場合を除くほか、妥当な期間の満了の後30日以内に譲許その他の義務の停止を承認する。ただし、関係加盟国が提案された停止の程度について異議を唱える場合又は申立国が3の(b)若しくは(c)の規定により譲許その他の義務を停止するための承認を申請するに当たり3に定める原則及び手続を遵守していなかったと関係加盟国が主張する場合には、その問題は、仲裁に付される。仲裁は、最初の小委員会(その委員が職務を遂行することが可能である場合)又は事務局長が任命する仲裁人*14*によって行われるものとし、妥当な期間が満了する日の後60日以内に完了する。譲許その他の義務は、仲裁の期間中は停止してはならない。

 7.6の規定に従って職務を遂行する仲裁人*15*は、停止される譲許その他の義務の性質を検討してはならないが、その停止の程度が無効化又は侵害の程度と同等であるかないかを決定する。仲裁人は、また、提案された譲許その他の義務の停止が対象協定の下で認められるものであるかないかを決定することができる。ただし、3に定める原則及び手続が遵守されていなかったという主張が仲裁に付された問題に含まれている場合には、仲裁人は、当該主張について検討する。当該原則及び手続が遵守されていなかった旨を仲裁人が決定する場合には、申立国は、3の規定に適合するように当該原則及び手続を適用する。当事国は、仲裁人の決定を最終的なものとして受け入れるものとし、関係当事国は、他の仲裁を求めてはならない。紛争解決機関は、仲裁人の決定について速やかに通報されるものとし、申請に基づき、当該申請が仲裁人の決定に適合する場合には、譲許その他の義務の停止を承認する。ただし、同機関が当該申請を却下することをコンセンサス方式によって決定する場合は、この限りでない。

 8.譲許その他の義務の停止は、一時的なものとし、対象協定に適合しないと認定された措置が撤回され、勧告若しくは裁定を実施しなければならない加盟国により利益の無効化若しくは侵害に対する解決が提供され又は相互に満足すべき解決が得られるまでの間においてのみ適用される。紛争解決機関は、前条6の規定に従い、採択した勧告又は裁定の実施の監視を継続する。代償が与えられ又は譲許その他の義務が停止されたが、措置を対象協定に適合させるための勧告が実施されていない場合も、同様とする。

 9.対象協定の紛争解決に関する規定は、加盟国の領域内の地域又は地方の政府又は機関によるこれらの協定の遵守に影響を及ぼす措置について適用することができる。紛争解決機関が対象協定の規定が遵守されていない旨の裁定を行う場合には、責任を有する加盟国は、当該協定の遵守を確保するために利用することができる妥当な措置をとる。代償及び譲許その他の義務の停止に関する対象協定及びこの了解の規定は、対象協定の遵守を確保することができなかった場合について適用する*16*。

第23条~第27条(略)

附属書I この了解が対象とする協定(略)

附属書II 対象協定に含まれている特別又は追加の規則及び手続(略)

附属書III 検討手続(略)

附属書IV 専門家検討部会(略)



{*1* 紛争解決機関がその審議のために提出された事項について決定を行う時にその会合に出席しているいずれの加盟国もその決定案に正式に反対しない場合には、同機関は、当該事項についてコンセンサス方式によって決定したものとみなす。}

{*2* この11の規定は、小委員会の報告が採択されず又は完全に実施されなかった紛争についても適用する。}

{*3* 加盟国の領域内の地域又は地方の政府又は機関によってとられる措置に関する他の対象協定の規定がこの2の規定と異なる規定を含む場合には、当該他の対象協定の規定が優先する。}

{*4* 対象協定の対応する協議規定は、次に揚げるとおりである:農業に関する協定、第19条;衛生植物検疫措置の適用に関する協定、第11条1;繊維及び繊維製品(衣類に含む)に関する協定、第8条4;貿易の技術的障害に関する協定、第14条1;貿易に関する投資措置に関する協定、第8条;1994年の関税及び貿易に関する一般協定第6条の実施に関する協定、第17条2;1994年の関税及び貿易に関する一般協定第7条の実施に関する協定、第19条2;船積み前検査に関する協定、第7条;原産地規則に関する協定、第7条;輸入許可手続に関する協定、第6条;補助金及び相殺措置に関する協定、第30条;セーフガードに関する協定、第14条;知的所有権の貿易関連の側面に関する協定、第64条1;各複数国間貿易協定の権限のある内部機関が指定し、かつ、紛争解決機関に通報した当該協定の対応する協議規定}

{*5* 申立国が要請する場合には、紛争解決機関の会合は、その要請から15日以内にこの目的のために開催される。この場合において、少なくとも会合の10日前に通知が行われる。}

{*6* 紛争解決機関の会合が第16条1及び4に定める要件を満たす期間内に予定されていない場合には、この目的のために開催される。}

{*7* 紛争解決機関の会合がこの期間内に予定されていない場合には、この目的のために開催される。}

{*8* 「関係加盟国」とは、小委員会又は上級委員会の勧告を受ける紛争当事国をいう。}

{*9* 1944年のガットその他の対象協定についての違反を伴わない問題に関する勧告については、第26条を参照。}

{*10* 紛争解決機関の会合がこの期間内に予定されていない場合には、この目的のために開催される。}

{*11* 紛争当事国が問題を仲裁に付した後10日以内に仲裁人について合意することができない場合には、事務局長は、10日以内に、当該当事国と協議の上仲裁人を任命する。}

{*12* 仲裁人は、個人であるか集団であるかを問わない。}

{*13* サービス分野分類表(文書番号MTN・GNS-W-120の文書中の表)は、11の主要な分野を明示している。}

{*14* 仲裁人は、個人であるか集団であるかを問わない。}

{*15* 仲裁人は、個人、集団又は最初の小委員会の委員(仲裁人の資格で職務を遂行する)のいずれであるかを問わない。}

{*16* 加盟国の領域内の地域又は地方の政府又は機関がとる措置に関するいずれかの対象協定の規定が、この9の規定と異なる規定を含む場合には、当該対象協定の規定が優先する。}