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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 新START条約(新米ロ核軍縮条約,戦略攻撃兵器の一層の削減及び制限のための措置に関するアメリカ合衆国とロシア連邦との間の条約)

[場所] 
[年月日] 2010年4月8日
[出典] 国際関係の基本文書(下),一般財団法人鹿島平和研究所編,日本評論社,295-304頁
[備考] 
[全文] 

戦略攻撃兵器の一層の削減及び制限のための措置に関するアメリカ合衆国とロシア連邦との間の条約

署名:2010年4月8日

〔前文〕略

第1条〔義務及び定義〕 1. 各締約国は、この条約の規定に従って戦略攻撃兵器を削減し及び制限し、並びに、この条約及びその議定書に定めるその他の義務を履行する。

 2. この条約及びその議定書において使用される用語の定義は、議定書の第1部に定める。

第2条〔制限・削減〕 1. 各締約国は、ICBM及びICBM発射基、SLBM及びSLBM発射基、重爆撃機、ICBM弾頭、SLBM弾頭、並びに重爆撃機の核軍備を削減し及び制限し、この条約の効力発生から7年後及びそれ以降、この条約の第3条に従って計算される総数が次の数を超えないようにする。

(a)700。配備されたICBM、配備されたSLBM及び配備された重爆撃機について。

(b)1550。配備されたICBMの弾頭、配備されたSLBMの弾頭及び配備された重爆撃機の計算上の核弾頭について。

(c)800。配備された及び配備されていないICBM発射基、配備された及び配備されていないSLBM発射基、並びに、配備された及び配備されていない重爆撃機について。

 2. 各締約国は、自国の戦略攻撃兵器の内訳と構成を自ら決定する権利を有する。

第3条〔計算方法〕 1. この条約の第2条1項(a)に定める総数制限の計算上、

(a)配備されたICBMは、それぞれ1基として数える。

(b)配備されたSLBMは、それぞれ1基として数える。

(c)配備された重爆撃機は、それぞれ1機として数える。

 2. この条約の第2条1項(b)に定める総数制限の計算上、

(a)ICBM及びSLBMの弾頭数は、配備されたICBM及び配備されたSLBMに備え付けられた再突入体の数とする。

(b)配備された重爆撃機は、それぞれにつき1核弾頭として数える。

 3. この条約の第2条1項(c)に定める総数制限の計算上、

(a)配備されたICBM発射基は、それぞれ1基として数える。

(b)配備されていないICBM発射基は、それぞれ1基として数える。

(c)配備されたSLBM発射基は、それぞれ1基として数える。

(d)配備されていないSLBM発射基は、それぞれ1基として数える。

(e)配備された重爆撃機は、それぞれ1機として数える。

(f)配備されていない重爆撃機は、それぞれ1機として数える。

 4. ICBM及びSLBMの計算を含め、この条約の適用上、

(a)組み立てられたミサイルとして発射キャニスター内において維持管理され、貯蔵され及び輸送されるICBM又はSLBMについては、特定の型の組み立てられたミサイルは、発射キャニスター内においてその型のICBM又はSLBMとみなされる。

(b)組み立てられたミサイルとして発射キャニスターなしで維持管理され、貯蔵され及び輸送されるICBM又はSLBMについては、特定の型の組み立てられたミサイルは、その型のICBM又はSLBMとみなされる。

(c)段に分けて維持管理され、貯蔵され及び輸送されるICBM又はSLBMについては、特定の型のICBM又はSLBMの1段目がその型のICBM又はSLBMとみなされる。

(d)各発射キャニスターは、その中にICBM又はSLBMが取り付けられた施設から初めて出た時から、ICBM若しくはSLBMがそこから発射されるまで、又は、ICBM若しくはSLBMが廃棄のためそこから辞去されるまでのあいだ、1基のICBM又はSLBMを含むものとみなされる。発射キャニスターは、訓練モデルのミサイルを含んでいるか、静止展示されている場合には、ICBM又はSLBMを含むものとはみなされない。特定の型のICBM又はSLBMのための発射キャニスターは、他の型のICBM又はSLBMのための発射キャニスターと区別することができなければならない。

 5. 新たに建造された戦略攻撃兵器については、次のようにこの条約の適用が開始される。

(a)ICBMは、それが初めて生産施設を出るとき。

(b)ICBMの移動式発射基は、それが初めて生産施設を出るとき。

(c)ICBMのサイロ発射基は、サイロのドアが初めて取り付けられて閉じられるとき。

(d)SLBMは、それが初めて生産施設を出るとき。

(e)SLBM発射基は、当該発射基が取り付けられた潜水艦が初めて進水するとき。

(f)核軍備用の重爆撃機は、完全な機体にすべく当該重爆撃機の部品が組み立てられた作業場、工場若しくは建物からその機体が初めて運び出されるとき、又は、既存の爆撃機の機体が核軍備用の重爆撃機の機体に転換された作業場、工場若しくは建物からその機体が初めて運び出されるとき。

 6. ICBM、SLBM、ICBM発射基、SLBM発射基及び重爆撃機は、この条約の議定書の第3部及び第4部に従ってこの条約の適用を終了する。現行型のICBM又はSLBMは、それらのICBM用又はSLBM用のすべてのICBM発射基又はSLBM発射基が、この条約の議定書の第3部に従って廃棄され又は転換された場合には、この条約の適用を終了する。

 7. この条約の適用上、

(a)地上に置かれていない物体を要撃し及び迎撃するためにのみ開発されかつ実験された型のミサイルは、この条約の規定が適用される弾道ミサイルとはみなされない。

(b)同一の型の重爆撃機においては、核軍備用の重爆撃機は非核軍備用の重爆撃機と区別することができなければならない。

(c)同一の型の重爆撃機は、その型の最後の核軍備用の重爆撃機が、この条約の議定書の第3部に従って、適宜、廃棄されるか又は非核軍備用の重爆撃機に転換される場合には、この条約又はその制限の適用を終了する。

 8. この条約の署名の日において、

(a)現行型のICBMは、

 (i)アメリカ合衆国に関しては、ミニットマンⅡ、ミニットマンⅢ及びピースキーパー

 (ii)ロシア連邦に関しては、RS-12M、RS-12M2、RS-18、RS-20及びRS-24

(b)現行型のSLBMは、

 (i)ロシア連邦に関しては、RSM-50、RSM-52、RSM-54及びRSM-56

 (ii)アメリカ合衆国に関しては、トライデントⅡ

(c)現行型の重爆撃機は、

 (i)アメリカ合衆国に関しては、B-52G、B-52H、B-1B及びB-2A

 (ii)ロシア連邦に関しては、Tu-95MS及びTu-160

(d)現行型のICBM発射基及びSLBM発射基は、

 (i)ロシア連邦に関しては、ICBM発射基は、RS-12M、RS-12M2、RS-18、RS-20及びRS-24、SLBM発射基は、RSM-50、RSM-52、RSM-54及びRSM-56

 (ii)アメリカ合衆国に関しては、ICBM発射基は、ミニットマンⅡ、ミニットマンⅢ及びピースキーパー、SLBM発射基は、トライデントⅡ

第4条(略)

第5条〔近代化及び更新〕 1. この条約の規定に従うことを条件として、戦略攻撃兵器の近代化及び更新を実施することができる。

 2. 新たな種類の戦略攻撃兵器が出現しつつあると信じる締約国は、そのような戦略攻撃兵器の問題を二国間協議委員会において審議のために提起する権利を有する。

 3. 各締約国は、ICBM発射基及びSLBM発射基をミサイル防衛の要撃弾の配置用に転換し又はそのために使用しない。各締約国は、また、ミサイル防衛の要撃弾の発射基をICBM及びSLBMの配置用に転換し又はそのために使用しない。この規定は、この条約の署名前に、ミサイル防衛の要撃弾の配置用に転換されたICBM発射基には適用しない。

第6条~第8条(略)

第9条〔遠隔測定情報〕両締約国相互間の合意により、ICBM及びSLBMの発射に関する遠隔測定情報を対等に交換する。両締約国は、そのような遠隔測定情報の交換量について合意する。

第10条〔検証技術手段〕1. この条約の規定の遵守の検証を確保するため、各締約国は次のことを約束する。

(a)一般的に認められた国際法の諸原則に合致する方法で、利用可能な自国の検証技術手段を使用する。

(b)この条約に従って運用される他方の締約国の検証技術手段を妨害しない。

(c)国の検証技術手段によって行われるこの条約の規定の遵守についての検証を妨害する秘匿手段を用いない。

 2. 秘匿手段を用いない義務には、実験中のICBM、SLBM、ICBM発射基、又は、ICBM若しくはSLBMとその発射基との関係の秘匿につながる手段を含め、それらの手段を実験用区域で使用しない義務が含まれる。秘匿手段を用いない義務は、ICBM基地における遮断及び秘匿の慣行、並びに戦略攻撃兵器用の環境シェルターの使用には適用しない。

第11条〔査察〕1. 各締約国は、この条約が適用される戦略攻撃兵器に関する申告データの正確さを確認するため、及び、この条約の規定の遵守の検証を確保するため、この条約及びこの条約の議定書の第Ⅴ部に従い査察活動を実施する権利を有する。

 2. 各締約国は、ICBM基地、潜水艦基地及び空軍基地において査察を実施する権利を有する。これらの査察の目的は、この条約が適用される配備された戦略攻撃兵器及び配備されていない戦略攻撃兵器の数と型、配備されたICBM及び配備されたSLBMに設置された弾頭の数、並びに、配備された重爆撃機に設置された核軍備の数に関する申告データの正確さを確認することにある。以下、これらの査察をタイプ1の査察という。

 3. 各締約国は、この条約の議定書の第5部第7節に掲げる施設において査察を実施する権利を有する。これらの査察の目的は、この条約が適用される配備されていない戦略攻撃兵器の数、型及び技術的特徴に関する申告データの正確さを確認すること、並びに、戦略攻撃兵器が転換され又は廃棄されたことを確認することにある。各締約国は、また、以前に申告された施設(この条約の議定書の第2部に定められる)において、それらの施設がこの条約と矛盾する目的のために使用されていないことを確認するため査察を実施する権利を有する。以下、この項に定める査察をタイプ2の査察という。

 4. 各締約国は展示を行うものとし、また、他方の締約国の行う展示に参加する権利を有する。このような展示の目的は、新型の顕著な特徴を示し及びその技術的特徴を確認し、並びに、この条約が適用される戦略攻撃兵器の各型の最初の転換の結果を示すことにある。

第12条〔二国間協議委員会〕 両締約国は、この条約の目的を促進し、その既定の実施を促進するため、ここに二国間協議委員会を設置する。同委員会の権限及びその運用手続は、この条約の議定書の第Ⅵ部に定める。

第13条〔第三国との関係〕 各締約国は、この条約の実行可能性及び実効性を確保するため、その義務と抵触する国際義務又は国際約束を引き受けてはならない。締約国は、この条約が適用される戦略攻撃兵器を第三国に移転してはならない。締約国は、この点に関して生ずる不明確さを解決するため、二国間協議委員会の枠内で協議を行う。この規定は、この条約の署名の時に一方締約国と第三国との間に存在する戦略攻撃兵器の分野におけるいかなる形の協力(義務を含む)にも適用しない。

第14条〔効力発生・有効期間・脱退〕

 1. (略)

 2. この条約は、戦略攻撃兵器の削減及び制限に関する後の協定によってより早い時期に取って代わられない限り、10年間効力を有する。いずれかの締約国がこの条約の延長の問題を提起する場合には、両締約国は共同してこの問題を審議しなければならない。両締約国がこの条約の延長を決定する場合には、戦略攻撃兵器の削減及び制限に関する後の協定によってより早い時期に取って代わられない限り、この条約は5年を超えない期間延長される。

 3. 各締約国は、この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。当該締約国は、他方の締約国に対してその決定を通知する。その通知には、通知を行う締約国が自国の至高の利益を危うくしていると認める異常な事態についても記載しなければならない。この条約は、当該通知がより遅い時期を指定しない限り、通知が他方の締約国によって受領された日から3箇月で終了する。

 4. この条約は、その効力発生の日をもって、2002年5月24日の戦略攻撃能力の削減に関するアメリカ合衆国とロシア連邦との間の条約に取って代わり、後者の条約は同日をもって終了する。

第15条~第16条 (略)

 議定書 (略)