データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] モンロー大統領の議会における第7回年次教書(モンロー・ドクトリン)

[場所] 
[年月日] 1823年12月2日
[出典] 現代国際関係の基本文書(上),一般財団法人鹿島平和研究所編,日本評論社,463-467頁
[備考] 
[全文] 

   (前略)

 当地駐在公使を通じてのロシア帝国政府の提案に対し、本アメリカ大陸の北西海岸における両国の相互の権利と利益とを友好的交渉に依って協定すべき十分なる権限と訓令とが、セント・ピータースブルグ駐在合衆国公使に伝達せられた。同様の提案が大英帝国に対してなされ、これも同じく同意された。

 合衆国政府は、この友好的処置によって、ロシア国王との友誼を何時も変りなく尊重していること、又その政府との最も良き了解を求めんと切望していることに大きな価値を見出してきた旨を明示せんことを望んでいる。

 この関心からなされる討議において、又その討議により締結せられるべき協定において、この際、合衆国の権利と利益を包含する主義として、従来とり来り又現在も維持している自由且つ独立の状態に鑑み、アメリカ大陸は今後欧州諸国によって将来の植民の対象と考えられるべきでないと主張するのが、今や適当と判断せられるに至った。

 (中略)

 前議会会期当初に当って、当時スペイン及びポルトガルにおいて、国民の状態を改善すべく多大の努力がなされ、而もそれは非常に温和な手段で行われたかの如くであるということが述べられた、それらの改革の結果がその際に予想されたものとは甚だしく異ったものとなったことは、茲に述べる要もあるまい。我々が頻繁に通交し、又我々の発祥の由来でもある欧州の出来事を、我々は常に憂慮と関心をもって注視し来ったのである。合衆国国民は、大西洋の彼岸における同志の自由と幸福の為に、最も友情溢れた気持を抱き来った。欧州強国間の諸戦争には、それが欧州自身に関する事柄ならば、我々は決して介入しなかったし、又介入することは我々の政策とも一致しない。我々が害悪に憤激し、我々自身の防衛に備えるのは、我々の権益が侵害されるか、もしくは甚だしく脅かされる時のみである。然し本半球における動きについては、我々は必然的により直接に結びつけられているのであって、その理由はすべての良識あり公平なる観察者にとっては明白であろう。同盟諸帝国の政治組織はかかる観点からは本質的にアメリカのそれと異っている。この差異はそれらの国々の各々の政府の中に存在している相違から発する。我々の政治組織は、多くの血と財貨との犠牲によって成就せられ、最も知見に富む市民の叡智によって成熟し、又我々はその下にあって、類いない幸福を享受しているのであって、その防衛には全国民があげてこれに当るのである。この故に、我々は率直に、そして合衆国とこれら諸国との間に存する友好関係に信頼して、彼等の政治組織を本半球の如何なる部分にも拡張せんとする企図は、我々の平和と安全にとって危険なものと思惟すべき旨宣言する。現存する欧州諸国の植民地乃至属領に関しては、我々は従来干渉しなかったし、又将来も干渉しないであろう。然し既に独立を宣言し、それを維持し、又我々がその独立について塾考し公正なる基準に基いて承認した政府に関しては、欧州諸国によって該独立政府を圧迫する目的で、もしくは他の方法によりその運命を左右せんとする目的をもってする如何なる干渉も、合衆国に対する非友好的意向の表明としか見ることは出来ない。これら諸新政府とスペインとの戦争において、我々は該新政府承認の際に中立を宣言した。この中立を我々は固守して来たし、又固守し続けるであろう。そして本政府の所管官庁の判断により、これら新政府の安全に欠くべからざるものとして我が國の側からの適宜の変更が行われる場合を除いては、この方針には如何なる変更も行われぬであろう。

 スペイン及びポルトガルにおける最近の事態は、欧州が未だ不安定であることを示している。この重大なる事実についての最も強力な証拠は、同盟諸国が満足するような如何なる主義に基くにはせよ、武力によってスペインの国内事項に干渉することを正当であると考えていることであろう。同主義に基いて、如何なる程度までこのような干渉がなされるかは、その政府が同盟諸国の政体と異なっているすべての独立国家−−−−中でもその差異は合衆国が最も大きいのであるが−−−−にとって関心ある問題である。欧州に対する我が政策は、欧州を長い間撹乱し続けた戦争の初期において採用され、依然維持されている。その政策とは、如何なる国の国内事項にも干渉せず、事実上の政府を我々にとっての合法的政府とみなし、それと友好関係を求め、率直・強固・高潔な政策によってそれとの関係を維持し、あらゆる場合に各国の正当なる要請には応ずると共に、何ものからの不法行為にも屈服しなかったのである。

 然しわが大陸に関しては、事情は明白に異る。

 (中略)

 同盟諸国の政治組織をアメリカ大陸の如何なる部分に拡張せんとすることも、我々の平和と幸福とを危殆ならしめずには不可能である。又わが中南米の友邦が、もし自由に放任されるならば、神聖同盟国の政治組織を国家間に採用するに至るということを何人も信じない。その故に、如何なる形にもせよ、このような干渉を無関心で我々が見守ることも同様に不可能である。もし我々がスペインとこれら新しき諸国との力と資源とを比較するとき、又これらの国々の相互の距離を考えるならば、スペインが決して新政府を屈服せしめ得ぬことは明白である。従って新政府をして自由にその進路をとらしめることは、合衆国の真の政策であり、他国も亦我が国と同一の途を辿ることを望むものである。

 (後略)