データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] サイクス・ピコ協定

[場所] 
[年月日] 1916年5月16日
[出典] 現代国際関係の基本文書(上),一般財団法人鹿島平和研究所編,日本評論社,817-820頁.
[備考] 署名:1916年5月16日
[全文] 

(前略)

 よってフランス政府と英国政府は以下のとおり了解する。

 1. フランスと英国は、附属の地図に示されているAおよびBの地域において、一人のアラブ人首長のもとに置かれるアラブ国家もしくはアラブ国家連邦を承認し、保護する用意があること。

 A地域においてはフランスが、B地域においては英国が、それぞれ事業および地域的借款について優先権を有すること。A地域においてはフランスが、B地域においては英国が、アラブ国家またはアラブ国家連邦の要請による顧問または外国人官公使を排他的に派遣すること。

 2. 青地域においてはフランスが、赤地域においては英国が、必要に応じ、アラブ国家もしくはアラブ国家連邦と取り決めることが望ましい、もしくは適当と思われる直接的ないし間接的な行政または管理を樹立することが許容されること。

 3. 茶地域においては、ロシアとの協議ののち、他の連合国およびメッカの守護者との協議によって様式が決定される国際的行政が布かれること。

 4. 英国は、(1)ハイファとアクレの港を与えられ、また、(2)B地域のためにA地域におけるティグリス・ユーフラテス川からの給水の保障を与えられること。他方、英国政府は将来にわたって、フランス政府の事前の同意なくキプロスを第三国に譲渡する交渉は行わないことを約束する。

 5. アレクサンドレッタは、英国の貿易に関して自由港となること。

(中略)

ハイファは、フランスとその領地および保護領の貿易に関して自由港となること。

(中略)

 6. バクダット鉄道は、ユーフラテス渓谷を経由しアレッポとバグダットを結ぶ鉄道が完成しない限り、かつ、両国政府の合意がない限り、A地域においてモスルを超えて南方へ、またB地域においてサマラを越えて北方へ延長されないこと。

 7. 英国は、ハイファとB地域をつなぐ鉄道を建設し、管理し、唯一の所有者となる権利を有すること。また、英国はいつでもこの鉄道によって部隊を輸送する永久的権利を有すること。

(中略)

 8. 20年間にわたり、トルコの現行関税率はA、B両地域のみならず青赤両地域の全域にわたって変わらないこと。また、関税率のいかなる引き上げも従価税から特別税への変更も、両国の合意なくして行われないこと。

(中略)

 9. フランス政府は、英国政府の事前の合意を得ることなく、青地域におけるいかなる権利も、アラブ国家ないしアラブ国家連邦を除く第三国に譲渡する交渉を行わないこと。また、英国政府は赤地域に関し、同様の約束をフランス政府に行うこと。

 10. 英国およびフランス両政府は、アラブ国家の保護者として、アラビア半島における両国自身もしくは第三国による領土の獲得に同意せず、また、紅海の東岸または紅海にある島嶼における第三国による海軍基地の建設にも同意しないこと。もっとも、最近のトルコによる侵略の結果必要となるアデン国境の調整は妨げないこと。

 11. アラブ諸国家の国境に関するアラブ人との交渉は、両国のためにこれまで通り同じチャネルで続けられること。

 12. アラブ領への武器輸入に関する管理措置は、両国により検討されること。

 本官はさらに、英国政府は本協定を完全なものにすべく、去る4月26日にフランス政府がロシア政府と交換したものと同じ内容の覚書を交換することをロシア政府に提案している旨報告する光栄を有する。同交換公文の写しは交換後速やかに貴官に通報されよう。

 本官はまた、本協定の締結に伴い、イタリアと連合国との間の1915年4月26日の協定第9条の規定にある通り、トルコのアジア部分の分割ないし調整への関与を求めるイタリアの主張の問題が惹起されることに対し、実際的な配慮から貴官の注意を喚起したい。

 英国政府はさらに、今回締結された取り決めについて日本政府に通報すべきものと思料する。