データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ソビエト社会主義共和国連邦憲法(1924年ソ連憲法)

[場所] 
[年月日] 1924年1月31日
[出典] 現代国際関係の基本文書(上),一般財団法人鹿島平和研究所編,日本評論社,764-769頁
[備考] 採択:1924年1月31日
[全文] 

 第1編 ソビエト社会主義共和国連邦建設に関する宣言

 ソビエト諸共和国建設以来全世界の国家は資本主義及社会主義の二個の集団に分たれたり−資本主義的集団に於ては民族的敵意及不平等植民地的奴隷制度及盲目的愛国主義、民族的抑圧及虐殺、帝国主義的残忍及闘争存在するに反し社会主義的集団に於ては平和及相互的信頼、民族的自由及平等、人民の平和的共同生活及親睦なる共働関係存在す

 資本主義の世界か一方に於て人民の自由なる発達を齎{もたらしとルビ}むると共に他方人を以て人を虐使するの制度を採り以て民族問題を解決せむとしたる数十年間の企図は無益に終わりたるのみならす民族間の反目は益々其の紛糾を加へ終に資本主義自体を威脅するに至り有産階級は人民の共働関係を組成するの力無きこと明なるに至れり

 而て唯ソビエトの集団即人口の大多数を団結する無産階級の独裁政治の下に於てのみ民族的圧迫を其の根底より打破し人民の相互信頼的状態を樹立し且其の親睦なる共働関係の基礎を確立するの可能なること了解せられたり

 唯斯の如き状態の存在せるによりてのみソビエト諸共和国は全世界の帝国主義を内外に亙り撲滅するを得たるのみならす能く国内の争乱を清算し自国の存在を確保し且平和的経済復興に着手するを得たり

 然れとも数歳に亙れる戦争は其の結果を齎{もたらとルビ}さるを得たりき戦争の結果遺されたる荒廃せる田園、休止せる工場、破壊せられたる生産力及涸渇せる経済資源は復興に対する各共和国個々独立の努力を不十分且不適当ならしめ斯の如き各共和国分立の状態に於ては経済復興は到底不可能なる思はしむるに至れり

 一方に於て国際政局の不安定並新なる攻撃の危険は各ソビエト共和国をして資本主義の包囲に対し合同戦線を確立するの已むを得さるに至らしめ更に地方に於てソビエト支配の組織は其の階級的性質上国際的なるを以て其の経済自体亦ソビエト諸共和国労働民衆を一の社会主義的集団に結合するの気運に向はしむるに至れり

 以上の諸理由はソビエト諸共和国か一の国家に合同せしむることを厳然要求するものなり蓋し之れ諸共和国か其の人民に対し他国の侵略に対する安全国内に於ける経済的繁栄及民族的発達の自由を確保するを得へき唯一の方法なれはなり

 ソビエト諸共和国人民は最近其のソビエト大会に参集し満場一致を以てソビエト社会主義共和国連邦の確立を決定せり而てソビエト諸共和国人民の意思は的確に本連邦か平等なる人民の一致せる自発的行為なること各共和国は自由に連邦より脱退するの権利を保有すること既に存在し又は将来建設せらるへき一切のソビエト共和国は自由に本連邦に加入することを得へきこと新連邦国は1917年10月既に其の基礎を置きたる平和的共同生活並親密なる共働関係を完成するものなること本国家は世界資本主義に対抗する為倚頼すへき城壁たるへきこと並総ての国の労働者を団結して世界社会主義ソビエト共和国を建設すへき新なる且決定的手段なることを立証するものなり


 第2編 条約

 露西亜社会主義連邦ソビエト共和国、ウクライナ社会主義ソビエト共和国、白露社会主義連邦ソビエト共和国並トランス高架斯社会主義連邦ソビエト共和国(即アゼルバイジャン社会主義ソビエト共和国、ジョルジア社会主義ソビエト共和国及アルメニア社会主義ソビエト共和国)はソビエト社会主義共和国連邦なる一連邦国家を組織す


第1章 ソビエト社会主義共和国連邦最高機関の権限に属する諸事項

第1条 ソビエト社会主義共和国連邦最高機関の権限に属する事項左の如し

(イ) 国際関係に於て連邦を代表し一切の外交関係を処理し他の国家と政治的並其他の条約を締結すること

(ロ) 連邦自体の国境の変更並連邦諸共和国間に於ける国境変更問題の監督

(ハ) 新共和国の連邦加入承認に関する条約の締結

(ニ) 宣戦並講和

(ホ) 連邦の対外及対内借款条約の締結並連邦各共和国に対する対外及対内借款の許可

(へ) 国際条約の批准

(ト) 外国貿易の指揮内国商業制度の設定

(チ) 連邦国民経済の基礎及一般的計画の確立、全国家的意義を有する各種工業並各国の工業的企業の決定、連邦又は連邦各共和国の名を以てする利権契約の締結

(リ) 交通、郵便並電信業務の指揮

(ヌ) 連邦軍隊の編成並指揮

(ル) 連邦各共和国予算を包含する連邦合同予算の確認、連邦一般税収及収入の確立、連邦各共和国予算の為にする租税及収入の控除若は追加並連邦各共和国予算編成の為にする附加的課税及徴収の許可

(ヲ) 単一貨幣並信用制度の制定

(ワ) 連邦全領域に於ける土地の開発及其の利用並鉱産、森林及水域の利用に関する一般的基礎の確立

(カ) 各共和国相互間の殖民に関する共通的立法並植民地資金の設定

(ヨ) 連邦裁判所及裁判手続に関する組織の基礎並民事及刑事に関する立法の基礎を確立すること

(タ) 労働に関する根本法の制定

(レ) 教育に関する一般方針の樹立

(ソ) 人民の健康を保持する為一般的衛生施設を確立すること

(ツ) 度量衡制度の確立

(ネ) 連邦統計の組織

(ナ) 連邦公民権に関する基本的立法中外国人の権利に関する事項

(ラ) 連邦全領域に於ける大赦の権利

(ム) 本憲法に違背する連邦各共和国「ソビエト」大会及中央執行委員会決議の取消

(ウ) 連邦各共和国間に於ける争議の解決

第2条 本憲法に於ける基本的原則の確認及変更は専らソビエト社会主義共和国連邦ソビエト大会之を行ふ


第2章 連邦各共和国主権及連邦公民権

第3条 連邦各共和国主権は本憲法に掲くる連邦自体の権限に属する諸問題に関してのみ制限せられ其の権限を除く外連邦各共和国は単独に権限を行使し連邦は連邦各共和国の主権を擁護尊重す

第4条 連邦各共和国は自由に連邦を脱退する権利を留保す

第5条 連邦各共和国は本憲法に適応する為自国憲法の変更を行ふ

第6条〜第7条 (略)

第3章〜第11章 (略)