データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 獨逸國、白耳義國、佛蘭西國、グレート、ブリテン國及伊太利國間ノ條約(ドイツ国、ベルギー国、フランス国、グレートブリテン国及びイタリア国間の条約,ロカルノ条約)

[場所] 
[年月日] 1925年10月16日
[出典] 現代国際政治の基本文書,一般財団法人鹿島平和研究所編,原書房,405-410頁
[備考] 署名:1925年10月16日
[全文] 

 獨逸國大統領、白耳義國皇帝陛下、佛蘭西共和國大統領、「グレート、ブリテン」「アイルランド」聯合王國及「グレート、ブリテン」海外領土皇帝印度皇帝陛下竝伊太利國皇帝陛下ハ

 千九百十四年ヨリ千九百十八年ニ至ル戰爭ノ災禍ヲ被リタル國民ノ抱懐スル安全及防衛ノ希望ヲ滿足セシメムコトヲ欲シ

 白耳義國の中立ニ關スル條約ノ廢棄ヲ確認シ且屢歐洲ノ紛爭ノ中心タリシ地帶ニ於ケル平和ヲ確保スルノ必要ヲ認メ

 又一切ノ關係署名國ニ對シ國際連盟規約及右國間ノ現行條約ノ範圍內ニ於ケル補充的保障ヲ輿ヘムトスル誠實ナル希望ニ促サレ

 之カ爲條約ヲ締結スルニ決シ左ノ如ク其ノ全權委員ヲ任命セリ

  〔全権代表名略〕

 右各員ハ互ニ其ノ全權委任狀ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ條ヲ協定セリ

第一條 締約國ハ千九百十九年六月二十八日「ヴェルサイユ」ニ於テ署名セラレタル平和條約ニ依リ又ハ同條約ノ實施ニ依リテ定メラレタル獨逸國白耳義國間及獨逸國佛蘭西國間ノ國境ヲ基礎トスル領土上ノ現狀維持及該國境ノ不可侵竝武装解除地帶ニ關スル右條約第四十二條及第四十三條ノ規定ノ遵守ヲ左ノ諸條ニ規定スル所ニ從ヒ各別ニ及共同ニ保障スヘシ

第二條 獨逸國及白耳義國竝獨逸國及佛蘭西國ハ何レノ一方ヨリモ攻撃又ハ侵入ヲ爲サス且如何ナル場合ニ於テモ戰爭ニ訴へサルコトヲ互ニ約ス  尤モ右規定ハ左ノ場合ニ之ヲ適用セス

一、正當防衞ノ權利ヲ行使スル場合卽チ前項ノ約定ノ違反又ハ前記「ヴェルサイユ」條約第四十二條若ハ第四十三條ノ明白ナル違反カ挑發セラレサル侵略行爲タリ且武裝解除地帶ニ於ケル兵力ノ集合ニ因リ卽時ノ行動ヲ必要トスルトキ右違反ニ對抗スル場合

二、國際聯盟規約第十六條ノ適用ニ依リ行動スル場合

三、國際聯盟ノ總會若ハ理事會ノ決議ニ依リ又ハ國際聯盟規約第十五條第七項ノ適用ニ依リ行動スル場合但シ後ノ場合ハ右行動カ最初ニ攻撃ヲ開始シタル國ニ對シテ行ハルルトキニ限ル

第三條 獨逸國及白耳義國竝獨逸國及佛蘭西國ハ本條約第二條ニ於テ其ノ相互ニ爲シタル約定ニ鑑ミ右諸國間ノ意見一致セサルヘキ一切ノ問題ニシテ通常ノ外交手段ニ依リ解決スルコト能ハサルモノハ其ノ性質ノ如何ヲ問ハス平和的方法ニ依リ且左ノ如ク之ヲ處理スヘキコトヲ約ス

 當事國カ互ニ權利ヲ爭フ一切ノ問題ハ裁判官ニ付託セラルヘク當事國ハ其ノ判決ニ服スルコトヲ約ス

 其ノ他ノ一切ノ問題ハ調停委員會ニ付託セラルヘク且兩當事國カ右委員會ノ提議スル調停ニ同意セサルトキハ該問題ハ國際聯盟理事會ニ付託セラルへシ聯盟理事會ハ國際聯盟規約第十五條ニ從ヒ處理スヘシ

 右平和的處理方法ノ態樣ハ本日署名セラルル特別條約ヲ以テ之ヲ定ム

第四條 一、締約國ノ一カ本條約第二條ノ違反又ハ「ヴェルサイユ」條約第四十二條若ハ第四十三條ノ違反ノ行ハレタルコト又ハ行ハルルコトヲ認ムルトキハ該締約國ハ右問題ヲ直ニ國際聯盟理事會ニ付託スヘシ

二、國際聯盟理事會カ右違反ノ行ハレタルコトヲ認定シタルトキハ同理事會ハ其ノ旨ヲ遲滯ナク本條約ノ署名國ニ通告スヘク右署名國ノ各ハ其ノ場合ニ於テ違反行爲ノ向ケラレタル國ニ對シ直ニ援助ヲ輿フヘキコトヲ約ス

三、締約國ノ一カ本條約第二條ノ明白ナル違反又ハ「ヴェルサイユ」條約第四十二條若ハ第四十三條ノ明白ナル違反ヲ行ヒタル場合ニ於テハ他ノ締約國ノ各ハ右違反カ挑發セラレサル侵略行爲ナルコト且國境ノ侵破、敵對行爲ノ開始又ハ武裝解除地帶ニ於ケル兵力ノ集合因リ卽時ノ行動ヲ必要トスルコトヲ認メ得タルトキハ右違反ノ向ケラレタル國ニ對シ直ニ援助ヲ輿フヘキコトヲ茲ニ約ス但シ右問題カ本條第一項ニ從ヒ國際聯盟理事會ニ付託セラレタル場合ニ於テハ同理事會ハ其ノ認定ノ結果ヲ通知スヘシ締約國ハ右ノ場合ニ於テハ敵對行爲ヲ爲シタル當事國ノ代表者ヲ除ク全會一致ノ表決ニ依ル聯盟理事會ノ勸告ニ從ヒ行動スルコトヲ約ス

第五條 本條約第三條ノ規定ハ左ニ揭クル所ニ從ヒ締約國ノ保障ノ下ニ置カルヘシ

 第三條ニ揭クル國ノ一カ平和的處理ニ從フコト又ハ仲裁判決若ハ司法判決ヲ履行スルコトヲ拒ミ且本條約第二條ノ違反又ハ「ヴェルサイユ」條約第四二條若ハ第四三條ノ違反ヲ行フキハ本條約四條ノ規定ヲ適用スヘシ

 第三條ニ掲クル國ノ一カ本條約第二條ノ違反又ハ「ヴェルサイユ」條約第四十二條若ハ第四十三條ノ違反ヲ行フコトナクシテ平和的處理方法ニ從フコト又ハ仲裁判決若ハ司法判決ヲ履行スルコトヲ拒ム場合ニ於テハ他方當事國ハ之ヲ國際聯盟理事會ニ付託スヘク同理事會ハ執ルヘキ措置ヲ提議スヘシ締約國ハ右提議ニ從フヘシ

第六條 本條約ノ規定ハ「ヴェルサイユ」條約及其ノ補充協定(千九百二十四年八月三十日倫敦於テ署名セラレタル協定ヲ含ム)ニ基ク締約國ノ權利及義務ニ影響ヲ及ホササルモノトス

第七條 平和維持ノ確保ヲ目的トシv國際聯盟規約ニ合致スル本條約ハ世界ノ平和ヲ有效ニ保全スル爲適當ナル措置ヲ執ルノ國際聯盟ノ任務ヲ制限スルモノト解釋セラルルコトヲ得ス

第八條 本條約ハ國際聯盟規約ニ從ヒ國際聯盟ニ登錄セラルヘシ本條約ハ何レカノ締約國カ他ノ署名國ニ對シ三月前ニ通告シタル請求ニ基キ國際聯盟理事會ニ於テ國際聯盟カ締約國ニ對シ充分ナル保障ヲ確保スルコトヲ三分ノ二ノ多數ヲ以テ確認スル迄其ノ效力ヲ存續スヘク本條約ハ其ノ後一年ノ期間滿了後其ノ效力ヲ失フヘシ

第九條 本條約ハ「グレート、ブリテン」國ノ何レカノ自治領又ハ印度ニ對シ何等ノ義務ヲ課セサルへシ但シ右自治領ハ印度ノ政府カ右義務ヲ受諾スル旨通告シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス

第十條 本條約ハ批准セラルヘク批准書ハ成ルヘク速ニ「ジュネーヴ」ニ於テ國際聯盟ノ記錄ニ寄託セラルヘシ

 本條約ハ一切ノ批准書カ寄託セラレ且獨逸國カ國際聯盟ノ聯盟國ト爲リタル時ヨリ實施セラルヘシ