データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ドイツ、イギリス、フランス及びイタリア間の協定(ミュンヘン協定,ミュンヘン会談)

[場所] ミュンヘン
[年月日] 1938年9月29日
[出典] 現代国際関係の基本文書(上),一般財団法人鹿島平和研究所編,日本評論社,410-412頁
[備考] 
[全文] 

 ドイツ、イギリス、フランス、及イタリアは、ズデーテン・ドイツ人地域をドイツに割譲するに付、︎旣に原則上到達せる合意を考慮し、此割譲を規制する以下の條件並にそれに伴ふ處置に同意し、併せて四國は各々本協定に依り、其實施を確實ならしむるに必要なる處置の責任を負ふものなり。

一、撤退は十月一日より開始すべし。

二、撤退は現存設備に何等の破壞を加へずして、十月十日迄に完了せらるべきこと、及チェッコ政府は同設備に損害を輿へずして撤退を實行するの責任を有すべきことに、四國は同意す。

三、撤退を規定する條件の細目は、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、及チェッコスロヴァキア五國の代表者より成る國際委員會之を定むべし。

四、ドイツ人が優勢を占むる地域のドイツ軍に依る段階的占領は、十月一日より開始せらるべし。附屬地圖に示されたる地域は、以下の順序にてドイツ軍之を占領すべし。

 第一號地域は十月一日及二日に、第二號地域は十月二日及三日に、第三號地域は十月三日四日及五日に、第四號地域は十月六日及七日に。

 優勢的にドイツ的性質を有する殘餘の地域は、直ちに上記國際委員會に於て之を確め、十月十日迄にドイツ軍之を占領すべし。

五、第三項の國際委員會は人民投票に附すべき地域を決定すべし。此等の地域は人民投票終了迄國際團體に依つて占領せらるべし。同委員會はザール人民投票の規定を基礎として、右人民投票の規定を定むべし。又同委員會は十一月末日迄の範圍にて人民投票の期日を定むべし。

六、最後の境界決定は國際委員會に依つて行はるべし。又此委員會は人民投票を用ひず移讓せらるべき地帶の嚴密に人種關係上の決定に付、或例外的の場合に、些少の修正を獨英佛伊の四國に勸告するを得べし。

七、移讓地域に留まると否とを選擇するの權利は認めらるべし。此選擇權は本協定の日附より六箇月内に行使さるべし。ドイツ及チェッコ兩國代表より成る委員會は、此選擇の細目を決定し、人口の移轉を容易ならしむる方法を考究し、且此移轉より生ずる原則上の問題を決定すべし。

八、チェッコスロヴァキア政府は、本協定の日附より四週間内に、其軍隊及警察隊より解除希望のズデーテン・ドイツ人を解除すべし。又同時期内にチェッコスロヴァキア政府は、政治犯のために入牢中のズデーテン・ドイツ人を釋放すべし。

一九三八年九月二十九日 ミュンヘンにて

 アドルフ・ヒットラー

 ネヴィル・チェムバレン

 エドゥワール・ダラヂエ

 ベニトー・ムッソリーニ